「ロヒンギャ危機」から半年。雨期を前に迫りくる新たな脅威

2018年02月23日掲載

緊急対応コーディネーターのケイト・ノーラン 緊急対応コーディネーターのケイト・ノーラン

ミャンマー・ラカイン州で少数民族ロヒンギャへの暴力行為が発生した2017年8月25日を境に、バングラデシュは深刻な難民危機を迎えた。以前から数万人のロヒンギャ難民が暮らしていたところへ、新たに逃れてきた70万人弱が仮設キャンプに身を寄せている。あれから半年が過ぎたいまなお、国境を越えて避難してくる人が後を絶たない。バングラデシュの国境なき医師団(MSF)緊急対応コーディネーターを務めるケイト・ノーランは「状況は一触即発」と今後の課題を語る。

社会から無視され続けてきた人びと

斜面にへばりつくように小屋がひしめく 斜面にへばりつくように小屋がひしめく

当初のように膨大な数の難民が到着しているわけではありませんが、現在も数百人が毎週ナフ川を越えてバングラデシュにたどり着いています。新たに来た難民は「故郷では脅迫され、嫌がらせを受けていて危険だ。村はゴーストタウンと化している」と話しています。彼らは家財を売って資金を工面し、ボートに乗って国境を越えています。目的地は、南部コックスバザール県にある仮設キャンプです。ビニールシートと竹で建てた簡素な小屋が密集し、十分な水・衛生環境も整っていません。

診療を通して分かるのは、ロヒンギャはかなり前からミャンマー社会から無視され、排除されていたということです。もともと医療に接する機会は皆無か、あってもごく限定的で、感染症の定期予防接種も受けていません。そのため、ロヒンギャの免疫力はかなり低いのです。

「大惨事」が起こりかねない

仮設住宅を建てるための竹材を運ぶ少年 仮設住宅を建てるための竹材を運ぶ少年

患者の多くが、劣悪な衛生環境で下痢や呼吸器感染症を発症しています。適切な処置を受けられずに傷が重症化した例や、慢性疾患があるにも関わらず一度も治療されていなかったケースもありました。一家がバラバラになり、子どもや障害者が大家族の面倒をみて、物資を調達したり仮設テントを建てたりしています。

人口の多さ、過密な環境、簡素な住まい、免疫力の低さ……これらの条件が揃えば、公衆衛生上の「大惨事」を生み出しかねません。現在、キャンプではジフテリアやはしかが流行しています。まもなく雨期に入りモンスーンや熱帯低気圧を伴うサイクロンが訪れると、水様性下痢など水を媒介する病気がまん延する恐れがあります。一触即発の状況で、引き続き注視が必要です。

キャンプ内はほとんど車が通れず、いまだに徒歩で移動しなければなりません。人びとが暮らす小屋の強度が心配です。豪雨で地すべりが起きる可能性もありますし、ぬかるんだ地面で転倒して負傷者が出ることも懸念しています。MSFチームは医療施設に被害が及んだ場合でも直ちに活動を再開できるよう、緊急対応の準備を進めています。

緊急援助は続く

ミャンマーとバングラデシュを隔てるナフ川 ミャンマーとバングラデシュを隔てるナフ川

当初は水・衛生環境の改善や基礎医療が最優先でしたが、現在は他団体にこれらの活動を引き継ぎ、MSFは医療活動の強化や2次診療に優先的に取り組んでいます。また、昨年12月に発表したロヒンギャの死亡率調査で分かったように、ロヒンギャ難民はミャンマーで極めて残忍な暴力行為を経験しており、引き続き心のケアが重要です。

ここコックスバザール県では、人口が急激に増えたことで近隣住民の経済や生活環境が圧迫されています。MSFは当局と連携しながら緊急援助を続ける一方で、活動の必要性について地元へ理解を促し、受け入れてもらうための努力も大切だと考えています。解決には程遠い難民危機のなかで、バングラデシュは国境を開き続けてくれているのです。

2017年8月25日以降、MSFは大幅に活動を拡充。現在は診療所15ヵ所、1次医療施設3ヵ所、入院施設5ヵ所を運営している。MSFの診療所で多くみられる症例は呼吸器感染と下痢を伴う病気で、キャンプ内の劣悪な住環境や給排水・衛生環境によって引き起こされている。これまでに20万人余りがMSFの外来診療を受けたほか、入院施設では8月末~12月末の4ヵ月間に患者4938人を治療した。

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