バングラデシュ:ロヒンギャ難民キャンプに隠れた性被害 日本人助産師が語る

2018年02月07日掲載

2017年8月25日にミャンマーで起きた軍と民兵によるロヒンギャ「掃討作戦」で、これまでに68万人を超えるロヒンギャ難民バングラデシュへ避難している。普通に暮らしていたロヒンギャの人びとは、殴られ、家族を殺され、家を焼かれ、そして女性はレイプされた。

事件当日から12月31日までに国境なき医師団(MSF)がバングラデシュの難民キャンプで治療した性暴力被害は120件に上る。3割が18歳未満で、10歳に満たない被害者もいた。クトゥパロン難民キャンプで、性暴力被害に遭ったロヒンギャの女性たちの援助にあたったMSF助産師、小島毬奈に話を聞いた。

被害に遭っても治療に来ない

小島毬奈助産師 小島毬奈助産師

MSFは8月25日以前から、クトゥパロンでロヒンギャ難民とバングラデシュの地域住民に医療を提供していました。26日以降、診療所で確認できたレイプの数が跳ね上がました。避難してくる人の数が増えるにつれ、被害率も高くなっていきました。

私は2017年11月に現地に着きました。ロヒンギャの人たちはキャンプに到着しても、まずは生活を何とかすることが精一杯で、レイプで妊娠していても診療所に来ないまま数ヵ月が経っていました。ロヒンギャ社会では結婚前の妊娠は恥とされていますし、どんな助けが得られるのかも知らないため、なかなか自分から治療を受けに来ません。ミャンマーでの暴力のほか、ストレスが溜まるキャンプ生活で家庭内暴力も増えていて、実際の被害者はもっと多いと思います。まずは、助けが必要な女性たちを探し出すことが重要でした。

戸別訪問で女性たちに直接呼びかけ

ロヒンギャの女性たちに性暴力について説明する ロヒンギャの女性たちに性暴力について説明する

そこでMSFは、現地のコミュニティー・ボランティアと一緒に難民キャンプの戸別訪問をしました。ロヒンギャの女性たちに、性暴力とはこういうもので、被害に遭ったらどうしたらいいか、MSFでは無償で治療ができることを伝えていきました。

難民キャンプは丘にあります。キャンプ内を移動するだけでも、登ったり下ったり、まるでトレッキング。朝から夕方まで、キャンプの中を歩いて戸別訪問するので、若いボランティアの女の子たちが頑張ってくれました。ロヒンギャの女性は字が読めない人も多いため、資料は絵を中心に、紙芝居やフリップで説明できるよう、1ヵ月くらいかけて準備しました。すぐに効果が出る活動ではないので、今もこの活動は続いています。

人力の緊急搬送で手遅れに

具合の悪い人を運ぶ「救急車」 具合の悪い人を運ぶ「救急車」

妊婦さんの死亡率も、とても高かったです。私が現地に2ヵ月半いる間に、6人の妊婦さんが亡くなりました。現地では、伝統的な産婆さんの力を借りて住居で出産する人がほとんどです。難産で緊急事態になっても、足場の悪いキャンプの中を診療所へやってくるまでに手遅れになってしまいます。また、望まない妊娠やその他の理由で、自分で中絶してしまう女性もいました。

現地で「救急車」と呼んでいたのは、長い棒に布やイスをくくりつけて2人がかりで担いで運ぶものでした。一番近い診療所へ来るにも、1時間近くかかります。手術が必要な場合はそこからさらに搬送しなければなりません。女性たちは「おなかの中で赤ちゃんが動いていれば大丈夫」と思っていて、健診も受けていません。産婆さんとも協力して、妊婦さんになるべく診療所へ来るよう呼びかけました。

故郷が安全になったら帰りたい

安全な故郷に帰る日は来るのか 安全な故郷に帰る日は来るのか

ロヒンギャの人たちは皆、信じられないような悲惨な体験をしています。弟を生きたまま火に入れられたとか、皆が見ている前でレイプされた、とか。それなのに、とても穏やかで優しいです。これだけ大変な思いをしていても、安全になったらミャンマーに帰りたい、と言っていました。前に活動したシリアでも同じでしたが、難民の人たちはやはり、どんなつらい経験をしても自分の故郷に帰りたいんです。

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