南アフリカ:虐げられた過去。いま、胸を張って声を上げる女性がここに。「事実を隠すと心が死んでしまうから...」

2017年12月28日掲載

実名で体験を語ってくれたポピーさん 実名で体験を語ってくれたポピーさん

「女性たちは声を上げなきゃ」。こう話すのはポピー・マクゴバトルさん(29歳)。女性らのためのシェルターに暮らす。夫から暴力を振るわれ、家を追い出され、追い詰められていたところを国境なき医師団(MSF)のカウンセラーに助けられた。いま、こころを回復し、独り立ちしようとしている。ポピーさんは現実を変えたいと、体験を赤裸々に語ってくれた。

「肩の骨を折られたことも…」

南アフリカ共和国に暮らすポピーさん。夫から精神的・肉体的な虐待を受けてきた。それでも別れなかった理由をこう説明する。「私たちの文化には両親の意向を尊重する習慣があります。母は『離婚は恥だ』と感じていました」

2014年に姉が他界し、その数ヵ月後に母親も病気にかかった。ポピーさんの人生は暗転していった。夫は家財を次々にどこかへ持ち去るようになった。

「あの人は家に帰ってきたりこなかったり。たまに家にいるときはけんかになりました。肩の骨を折られたことも……。お医者さんに診せると、まだ骨が折れたままだと言われました」

2015年には兄も亡くなった。危篤状態の兄の面倒を看る中、夫はポピーさんに心ない言葉を投げつけた。

「暴力以外で一番辛かったのは、あの土曜日、兄を病院に連れて行ったときのことです。夫はどこにも見当たりませんでした。月曜日に帰ってきましたが、結婚指輪をよこせと言いにきただけでした。どこにあるか分からないと答えたら、『帰って来たら殺す』と捨てぜりふを吐いて出て行きました。その日の午後、兄が亡くなりました」

「ID不要、プライバシーは守られます」と書かれた、支援センターのチラシ 「ID不要、プライバシーは守られます」と書かれた、支援センターのチラシ

路頭に迷い、たどり着いた先は

兄の葬儀後、ポピーさんは姉の娘2人としばらく同居していたため、自宅の様子を見ることができずにいた。ある日、ポピーさんの元に裁判所から協議離婚の召喚状が届き、夫が別の女性と一緒に住んでいることを知った。

ポピーさんは離婚の判決を受けた。同じ日に、姪たちから家を追い出された。

その数日前、ボイテコンの路上でMSFのスタッフに会い、支援センターについて聞いていたポピーさん。ほかに頼るあてもなく、20ランド(約166円)を借りてセンターまでタクシーで行き、そこでカウンセリングを受けた。さらに、シェルターを紹介された。支援が必要な女性と子どもを対象とした居場所だ。

心のケアに絵画療法を取り入れることも 心のケアに絵画療法を取り入れることも

「MSFのカウンセラーが私を見捨てないでくれて感謝しています。今でも近くに来るとシェルターの家様子を見に来てくれます。私はもう元気になり、このシェルターから出る準備もできています。無一文ですが、多くのお金はいりません。小さなブリキ小屋で、1人暮らしをしてみたい。お皿1枚とコップ1つだけあれば充分です」とポピーさんは話す。

プライバシーを守るため本名を伏せたいか尋ねられると、力強い声で「いいえ!」と答えた。

「虐待されている女性に知ってほしい。私も自分の苦しみを隠していたことがあったけれど、そのことで自分の心が死んでいきました。女性たちは声を上げなきゃ」

南アフリカ共和国の鉱山地帯、通称「プラチナ・ベルト」。採掘の仕事を求めて国内各地やアフリカ諸国からやってきた移住者が多く住む。だが、公共サービスを受けることもままならず、劣悪な環境での暮らしに、怒りや挫折感を抱えている。

特に女性は就職が難しく、生活のため男性に依存せざるを得ない。その結果、社会的に弱い立場に置かれ、さまざまなハラスメントを受けている。

MSFはボイテコンに専門の支援センターを置き、医療や心理・社会面で性暴力被害者を支援している。受診の大切さを呼びかけるキャンペーンも展開し、患者数は増加傾向にある。2015年からは州の保健局と協力して、複数の指定施設でこうしたサービスを提供できるよう整備している。

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