シリア: ラッカ解放、でも住民を苦しめる"究極の選択"

2017年12月21日掲載

廃虚となったラッカの市街地 廃虚となったラッカの市街地

過激派組織「イスラム国」と政府軍の攻防で荒れ果てたシリア・ラッカ市。戦闘は2017年10月に収まり、住民が戻り始めている。ただ、かつてのラッカの面影はない。住宅は廃虚となり、遺体が放置され、道路や畑のあちこちに地雷、トラップ爆弾、不発弾などが埋まっている。

ラッカの東部地区にある国境なき医師団(MSF)の診療所には、11月19~28日だけで49人が運ばれてきた。いずれも爆発に巻き込まれて負傷した患者だ。

MSFのラッカ緊急対応チームのリーダーを務めるクレイグ・ケンジーは「戻ってきた住民らは、建物に入ることを怖がり、何かを踏んでしまうことを恐れています。トラップ爆弾が仕掛けられていたり、踏んだものが爆発したりする恐れがあるからです」と指摘する。

自宅に戻るか、避難を続けるか

崩壊した自宅のがれきを片づける一家 崩壊した自宅のがれきを片づける一家

ラッカ東部地区に2日前に戻ってきたという女性(45歳)は、崩壊した自宅を目にし、「家族全員が戻ってくる前にせめてがれきだけでも……」と片づけ始めた。「壊れた自宅でもテントよりましです。テント内は気温が0度以下、しかも屋根がないのですから」

一方、別の女性(28歳)は「赤ちゃんがいるので、この環境では生活できません」と話す。彼女の自宅は2回の空爆で全壊した。

同じく空爆被害に遭った女性(33歳)は「自宅が直撃を受けたと聞いていましたが、全壊とは……。再建するだけのお金はありません。方法が見つかるまで、テント生活を続けます」と肩を落とした。

東部地区には戦闘の傷跡があちこちに残っている。弾痕、粉々に割れた窓、爆発でできた穴……。焼けた車が道をふさぎ、路上にはゴミや廃品が路上に散乱している。無人となった建物のほとんどが略奪に遭っている。

ケンジーは「住民は"究極の選択"を迫られています」と話す。これまで通り、避難場所の不衛生な環境で複数の家族との共同生活を続けるか、崩壊した自宅と地雷やトラップ爆弾だらけのラッカに戻るか。

「ラッカに戻る場合、爆発物に囲まれた生活になるリスクは避けられません。地雷の危険性を伝えることは、"究極の選択"をするための一助になるでしょう」

戦闘は終わったが……

自爆テロに使われた車 路上に放置されたままになっている 自爆テロに使われた車
路上に放置されたままになっている

爆発などで重傷を負った患者の救急搬送も難しい。道路が破壊されたり通行止めになったりしているため、この状況でも手術ができる病院にたどり着くまでに1~2時間もかかる。その結果、搬送中に亡くなるリスクが高まる。

手術ができる医療施設の中でラッカに最も近いタル・アブヤド病院は、こうした困難な状況でも、爆発で負傷した患者をこれまでに85人受け入れた。また、シリア北部のコバニ病院でも23人を受け入れている。いずれもMSFチームが活動している病院だ。

ラッカに戻ることを決めた住民は、助け合いながらがれきの片づけに取りかかっている。東部地区だけでなく、ラッカ県内全域で同じような光景が繰り広げられている。

ラッカの戦闘は終ったかもしれないが、影響は何年にもわたって続くだろう。

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