フランス:「座る場所も、寝場所もない。テントも布団もない。故郷に残れば死ぬしかない」。行き場を失うパリの移民

2017年11月28日掲載

氷点下のパリで身を寄せ合う移民(2017年1月撮影) 氷点下のパリで身を寄せ合う移民(2017年1月撮影)

紛争や人権侵害が続くアフリカや中東を離れ、欧州を目指す人びとは後を絶たない。しかし、危険な旅路を経てやっとの思いで欧州にたどり着いた移民・難民は難民キャンプからも退去を迫られ、路上生活を余儀なくされている。

2017年7月27日、フランスのマクロン大統領は難民認定を求める移民に住居を提供することを公約として掲げた。年末までには路上で過ごす移民・難民がいなくなるようにしたいと述べていた。

MSFは昨年12月からラ・シャペル地区で移動診療をしている MSFは昨年12月からラ・シャペル地区で移動診療をしている

しかし、国境なき医師団(MSF)と世界の医療団(MDM)は11月16日、気温が下がり、冬も近づく中、約1000人の移民・難民が今なおパリの路上で風雨をしのぐものもなく寝起きしていることを確認した。移民・難民は市北東部とパリ郊外のセーヌ=サン=ドニ県に散らばる。

昨年11月、フランス当局はパリ北東部のポルト・ド・ラ・シャペル駅近くに、難民申請の手続きができる移民受入センターを設置した。支援団体もこの周辺で活動している。移民・難民は、センターの近く、かつ、当局の目につかない場所に身を寄せている。

今年8月18日、この駅付近のキャンプは軒並み解体された。これを境に、移民・難民を取り巻く状況は格段に悪化した。キャンプにいた2700人以上が路頭に迷い、住む場所を転々と変え、夜も当局の影におびえている。寝るときは身を隠さなければならず、羽毛布団どころか、体に掛けるものもテントも一切ないことが多い。

追い払われ、行くあてもなく…/イブラヒムさん(仮名、スーダン出身)

雨が降れば橋の下で身を縮め、テントを建てれば警察に追い払われる。耐えられません。スーダンから移動するときも、たびたび警察に追われましたが、フランスでも同じ目に遭うとは思いませんでした。眠る場所もない。どこかに腰を下ろすと、すぐに警察が来て移動するように言われます。真夜中でも起こされて、立ち退きを迫られるんです。『移れって、どこへ?どこにいけばいいんですか?』と私たちが聞くと、警官は決まって『分からないが、とにかく行け』と答えます。スーダンにいれば死ぬしかない。ここで難民申請をすることが唯一残された道なんです。

週3回、平均60件を診療。気管や皮膚の疾患、旅の途上で負った外傷が多く見られる 週3回、平均60件を診療。気管や皮膚の疾患、
旅の途上で負った外傷が多く見られる

移民・難民は市民の目に触れず、路上で孤立し、基礎医療や公共サービスもますます受けにくくなっている。クリニックでの診療や街頭での実態調査を通して、MSF・MDM両団体の医療チームは移民・難民の健康状態が日に日に悪化するのを見てきた。冬が近づき、適切なシェルターや最低限の公共サービスを受ける機会もない今、問題は深刻さを増している。

体が洗えず、感染症が広がる恐れ/コリーヌ・トレ(フランスのMSF活動責任者)

気温が低下する中、移民・難民は今も住環境が整わず路上で生活しています。屋外で身体を洗うことさえできません。公共の入浴施設を利用するしかないのですが、たいてい有料であるうえ、入場を断られることもあります。このようにひどい生活環境に置かれ、疥癬(かいせん)などの皮膚感染症が懸念されます。

MSFは診療や薬を無償で提供 MSFは診療や薬を無償で提供

絶えず移動を強いる政策や圧倒的な情報不足のせいで、移民たちは難民申請をしにくくなっている。これにより、ただでさえ非常に立場が弱く、パリに着くまでにもつらい思いをしてきた人びとが一層追い詰められてしまう。フランスは移民・難民を人として尊重し、敬意をもって迎えるどころか、最低限の環境さえ整えようとしていない。

アフリカの難民キャンプよりひどい/ジェマルさん(エチオピア出身)

移動診療所のテントで順番を待つ患者たち 移動診療所のテントで順番を待つ患者たち

私はアフリカの難民キャンプも知っていますが、今の状況は不条理です。アフリカでは国連のキャンプでも雑然としていたり不安定だったりしますが、少なくともテントや食べ物はあり、情報も入ってきますし、安全です。ここでは、うわさレベルの情報しか耳に入らず、警察からは犯罪者のように迫害されています。

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