地中海:冷たい海。命を懸け渡る人びと。安全に移り住めるように・・・

2017年11月21日掲載

救助活動を行うアクエリアス号 救助活動を行うアクエリアス号

11月1日、地中海で国境なき医師団(MSF)と市民団体「SOSメディテラネ」が共同運航している捜索・救助船「アクエリアス」号は、588人を救助した。彼らは母国の紛争や暴力、貧困から逃れるため、中東やアフリカから海を渡って欧州を目指す移民・難民だ。行方不明者もおり、水死したとみられている。

壊れたゴムボートから人びとが……

満員のボートには女性や子どもの姿も 満員のボートには女性や子どもの姿も

「3隻のゴムボートは、大人の男性、女性、幼い子どもでいっぱいでした。そのうち1隻が壊れ、何十人も海に落ちたのです。そこからが悪夢でした」

アクエリアス号に乗船していたMSFのセイフ・キルファン医師は語る。

「スタッフはあるだけの浮き具を投げ込み、救命胴衣を渡し、人びとを海から引っ張り上げました。心停止の男性1人は、蘇生してヘリコプターでイタリアへ医療搬送できました。でも、海に沈んでいく人も見たのです。遺体は上がっていません……」

海を渡る前に受けた傷も

地中海は、冬の寒さが厳しさを増している。冷たい海に落ちたことで、軽度から中程度の低体温症になっている人も多くいた。海を渡る前、リビアで負った傷も治療した。地中海でMSFが救助する人は、ほとんどがリビアを経由している。リビアで、移民や難民はひどい暴力と恐喝を受けている。

キルファン医師は「左足首が開放骨折し、脱臼もしていた男性は、けがをして1ヵ月が過ぎていました。リビアで発砲され、逃げるときに負った傷だそうです。腕を骨折していた男性もいました。やはりリビアで拘束されていた1週間前の傷でした」と語っている。

人びとの口から語られるのは、密航あっせん業者、武装勢力や民兵から受けた虐待だ。暴力や性暴力、非人道的な環境で不当に拘束され、拷問を受けることもある。財産を脅し取られたり、強制労働をさせられたりする。

死と隣り合わせの道のり

救助され安堵の表情を浮かべる人びと 救助され安堵の表情を浮かべる人びと

母国を離れる理由は人それぞれ。だが、小さくてもろいゴムボートにぎゅうぎゅう詰めで乗りこみ、ひとたび海に出れば誰もが無力となる。救助と安全な場所を求めている。泳げない人も多く、ほとんどの人が救命胴衣も身に着けていない。いつ溺れるかもしれず、常に死と隣り合わせだ。

MSFチームの責任者ルカ・サレルノは訴える。「誰も、移住の道のりを軽々しく考えているわけではありません。もっと安全な方法があれば、自分の命も子どもたちの命も危険にさらしたりはしないでしょう。切羽詰まった人びとが地中海で命を懸けなくても済むように、EUと各加盟国はすぐに、彼らに安全な移住の方法を用意し、より広く合法的な入国制度を適用するべきです」

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