コンゴ民主共和国:13歳の少女は強姦され、HIVに感染した......――MSFができることは?

2017年11月14日掲載

MSFのクルス・ガルシア(医療チームリーダー) MSFのクルス・ガルシア
(医療チームリーダー)

コンゴ民主共和国のカサイ地方で住民が相次いで避難している。国内で繰り返されている紛争が、平穏だったこの地方にも及んだためだ。その規模は100万人以上ともみられる。

大規模な避難キャンプはなく、親類のもとや教会に身を寄せている人が多い。マラリアの流行地域となっている森に何ヵ月も隠れ住んでいる人もいる。

カサイで国境なき医師団(MSF)の医療チームリーダーを務めるクルス・ガルシアに、カサイの危機の現状と、住民の健康への影響について聞いた。

"普通"に見える街で

栄養失調の治療を受ける1歳5ヵ月の双子両親は殺され、子どもたちは森に5ヵ月避難していた 栄養失調の治療を受ける1歳5ヵ月の双子
両親は殺され、子どもたちは森に5ヵ月避難していた

カサイ州にツィカパという主要都市があります。その市街を歩いても、避難者が数万人もいるようには感じられないでしょう。大規模な避難キャンプがなく、親類のもとや教会、借家などに身を寄せているからです。見かけは"普通"ですが、実際は危機に直面しているのです。

紛争が繰り返されているコンゴの中で、カサイは比較的平穏でした。ところが2016年8月に民間人を巻き込んだ武力衝突が起き、状況が一変したのです。

子どもたちは栄養失調になり、一部の地域では重度急性栄養失調の割合が10%を超えました。女性への性暴力事件も報告されています。地域社会はばらばらになってしまいました。保健医療システムはかろうじて機能しているレベルです。

食べ物がない

MSFの栄養状態チェックを受ける子ども MSFの栄養状態チェックを受ける子ども

森に避難して何ヵ月も隠れ住んでいる一家もいます。食べ物はほとんどなく、マラリアに感染するリスクが高い地域です。

ツィカパは公共サービスの供給が需要に追いついていません。また、物価が急騰し、食べ物を買えない人びとが大勢います。MSFはツィカパとその郊外で、重度急性栄養失調の症状の1つの消耗症になっている子どもたちがたくさんいます。

MSFが支援している栄養治療センターには、避難生活を送っている子どもたちが連れられてきます。何日も何も食べておらず、食べ物を期待して来院するケースもあるようです。

栄養失調でお腹が膨らんだ子どもも

自宅を再建する男性紛争に巻き込まれてすべてを失った 自宅を再建する男性
紛争に巻き込まれてすべてを失った

カサイの情勢は落ち着いたように見えますが、生活の再建はあまり進んでいません。危機の影響は地域によってさまざまです。農業を含め生計を立てる手段がいくつかある場合、生活再建は比較的順調のようです。

一方、生計を鉱業に頼っていた地域では復旧が難しく、住民たちは食べ物の確保にも苦労しています。そうした場所で子どもの栄養失調が多くみられ、重度の症状であるクワシオルコルも報告されています。たんぱく質の極端な不足などが原因で、腹部が大きく膨らみ、手足や顔などがむくんでしまう症状です。

心のケアも

1年半もの間、森に隠れていた女性赤ちゃんを殺され、自身もナタで切りつけられて、恐怖から病院へ行くことができなかったという 1年半もの間、森に隠れていた女性
赤ちゃんを殺され、自身もナタで切りつけられて、
恐怖から病院へ行くことができなかったという

心の健康も大きな問題となっています。武力衝突に巻き込まれた体験や、その後も恐怖の中で避難生活を送っていることから、心を守る仕組みが壊れてしまっています。

最近、MSFはかなりの数の女性患者を受け入れました。性暴力の被害者です。事件から何ヵ月も経ち、妊娠したり性病になったりしていることがわかって、ようやく来院したのです。

性暴力に遭った場合は3日以内に治療を受けることが重要です。MSFはこの点を繰り返し強調しています。ただ、患者が治療を受けるだけで終わりではありません。偏見を恐れ、家族が被害を隠そうとする風潮があります。

つらい体験を抱える被害者が社会に拒否されるという"二重の被害"を起さないようにすることが重要です。

13歳は強姦され、HIVに感染した

13歳の少女が母親に付き添われて来院したことがありました。避難中に父親が民兵の5人組に捕まり、目の前で首を切られたそうです。少女は少なくとも3人に強姦され、死んだと思われて置き去りにされました。

彼女は一命を取り留め、母親と一緒にツィカパまで逃げてきました。妊娠の不安とトラウマを抱えていました。妊娠検査は陰性でしたが、HIV検査は陽性。治療を始めなければならないと伝えました。

「課題は山積み」

破壊された診療所の手術室 破壊された診療所の手術室

民間人を巻き込んだ武力衝突と暴力は、以前から低い水準だった保健医療システムをぼろぼろにしてしまいました。都市圏外でMSFが訪問した診療所の半数は、略奪、放火、破壊などの被害に遭い、機能していませんでした。

まだ使える施設には職員が戻ってきましたが、医薬品・医療物資がなく、熟練した職員も足りません。課題は山積みだと感じています。

MSFはカサイ州内の各地に移動診療チームを派遣し、栄養失調の治療や、地域の診療所に医薬品・医療物資を寄贈するなどの活動を続けている。ツィカパでは、病院1軒と診療所3軒を支援し、外来栄養治療センター10軒の設置にも協力している。

州内での援助実績(2017年6~9月)は、子どもの診療約5000件、重度急性栄養失調の治療約1000人、手術約200件、暴力によるけがの治療155人、性暴力被害のケア30人など。

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