コンゴ民主共和国: 放置された遺体、そばで遊ぶ子ども――「それが日常です」

2017年11月15日掲載

焼け落ちた村、無数の墓地、置き去りにされた女性用のスーツケース――コンゴ民主共和国のカサイ州では、多くの住民が避難したままだ。「人道援助が足りない」。国境なき医師団(MSF)の緊急対応コーディネーター、ジャン=ピエール・アミーゴが見た実態とは。

地面の血痕が残る村も

MSFが支援する病院で治療を受けている男性 MSFが支援する病院で治療を受けている男性

カサイ地方での武力衝突は予期されていなかったものでした。実際に襲撃された人もいれば、近くの村が襲われたと聞いて着の身着のままで逃げてきた人もいます。一方、武装した男たちが村に来て、武力を使わずに住民を活動に加わるよう勧誘してまわっていた地域もあったそうです。

いずれにしても、人びとは極めてひどい暴力を受けています。地面の血痕がいまだに消えていない村もありました。別の村では、武力衝突が収まってから数ヵ月経った今でも遺体が放置され、そのそばで子どもが遊んでいます。それが日常風景の一部になっているのです。

ある町では食料が底をついた

MSFの移動診療の開催場所に向かう母子 MSFの移動診療の開催場所に向かう母子

カサイ州内のツィカパなどの比較的大きな町や、隣国のアンゴラに避難した人もいます。また、森に隠れ、わずかな食べ物しかない過酷な環境で何ヵ月も過ごした人もいます。

農村の住民たちはわずかな食べ物でしのいでいました。土地勘があり、果物がなっている場所も知っていました。一方、そうした対処ができない町の住民は大変でした。

ダイヤモンドの産出地だったカビレングという町がその一例です。周辺地域から避難者が押し寄せて人口が急増し、食料が底をつきました。しかし、ダイヤモンド以外に資源がありません。その結果、栄養失調が深刻となっています。

滞在場所にかかわらず多くの人がマラリアにも感染しています。蚊はどこにでもいるからです。

村へ戻り始めたが……

各地で無数の家屋や施設が破壊された 各地で無数の家屋や施設が破壊された

武力衝突が収まり、大半の地域に立ち入れるようになって、住民が戻り始めています。略奪や焼打ちに遭うなど被害の最も大きかった村も例外ではありません。首長が様子を見に村へ戻り、何が必要かを判断することが多いのですが、そのニーズは膨大です。

村に戻ると、まず自宅の再建をしなければなりません。道具もなしに、です。レンガ造りが一般的ですが、今は焼け残った鉄板を何枚か手に入れるのが精一杯。屋根の材料は木の枝しかありません。通常は乾燥した草で屋根をふきますが、それが手に入る季節ではないからです。雨期のため、屋根のない場所にはいられません。

農工具のナタとクワは武器と見なされ、武装勢力に取り上げられています。農作物の種もないので、農業の再開はとても大変です。家畜もほとんど奪われ、多くがその場で食べられてしまいました。

社会の傷が癒えるには

青葉を持って来院したら性暴力被害の治療が必要なサイン MSFでは診療手続きを省略し、個別に対応している 青葉を持って来院したら性暴力被害の治療が必要なサイン
MSFでは診療手続きを省略し、個別に対応している

カマコなど一部地域では、風景の中に暴力の痕跡が刻まれています。あたりに散乱している残骸、集団墓地、その向こうに何か小さなものが――道端に放置されている女性用のスーツケース、こぼれ落ちたCD……。持ち主の女性はどうしたのか? なぜ開いているのか? 女性は無事に逃げられたのか?

引き裂かれた社会の傷が癒えるには時間がかかるでしょう。地元には当分戻りたがらない人もいます。とにかくあまりにも多くのことが起こったのです。

MSFはこの地域で活動を続け、都市圏外での活動を拡充し、保健医療システムの復旧を後押ししています。その流れの中で私は、これほどの規模の危機なのに人道的対応が圧倒的に足りていないという思いを強くしています。

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