バングラデシュ:遠い国の難民に心を寄せて。現地で活動した日本人看護師の思い

2017年10月30日掲載

診療所の外来で患者さんと(筆者左) 診療所の外来で患者さんと(筆者左)

故郷を離れ、国境を越えてバングラデシュへ避難するロヒンギャ難民の数は、2017年10月も増え続けている。国境なき医師団(MSF)の看護師、倉之段千恵は、南東部コックスバザールで約1ヵ月間、援助活動に参加した。難民キャンプで暮らすロヒンギャの人びとの暮らしは「想像を絶するものだった」と語る。

援助からこぼれ落ちてしまう人も

竹とビニールシートで作られたシェルター 竹とビニールシートで作られたシェルター

マイナーゴナとブルマパナいう2ヵ所の難民キャンプは、それぞれ11万人と8万人が生活していて、今もその数は増えています。入院施設が足りず、外来にもまともなベッドがありません。この規模のキャンプで援助をいきわたらせるのは簡単ではありません。

竹で骨組みを作ってビニールシートをかぶせただけのシェルターは雨風をしのぐ程度で、雨が降ると外は泥だらけになります。井戸もありますが、掘りが浅いので水はきれいでなく、トイレの近くにあったりして、衛生面も心配です。援助が行き届かず、シェルターさえない人もいました。食べ物も十分にないので栄養状態も悪く、本当にみんな疲れきって弱っています。

こうした環境で心配されているのが、はしかや下痢症などの感染症です。流行を防ぐには予防接種を行き届かせることが重要です。バングラデシュ政府がすべての難民キャンプで予防接種をすることになり、MSFのチームは、接種率を上げるためにこの2つのキャンプで広報活動を支援しました。現地で採用したスタッフをトレーニングし、広大なキャンプの隅々まで出かけていって、予防接種会場に来るよう呼びかけました。

困難にあっても助け合う心

倉之段千恵 看護師 倉之段千恵 看護師

診療所にやってくる子どもたちは具合が悪い子ばかりなのですが、外では、泥の中を駆けずり回って遊んでいる子たちもいます。自分たちが置かれた状況を知ってか知らずか……彼らにとってここは、友達がいて遊べる場所なのかもしれません。ミャンマーでどんな経験をしてきたか、個別に詳しく聞いてはいませんが、みんな大変な思いで避難しています。ここでさえ、もと居た場所よりは幸せなのかな、と思うと、複雑な気持ちです。

たまたま隣り合わせた男性から生後4ヵ月の赤ちゃんを預かった家族がいました。赤ちゃんは高熱が出ていましたが、母親は出産後に亡くなっており、男性の行方はわからないままです。「置き去りにされた子」として、どこかに引き取ってもらうこともできたはず。でもこの家族は「誰かが面倒をみなくてはならないのなら、自分たちが面倒をみても同じ」と言って世話をしていました。

ロヒンギャの人びとの慣習なのでしょうか、ほかにも同じような話をたくさん聞いています。自分たちの生活もままならないなか、他人のことも自分のこととして考えているようでした。こんな風に考えられるロヒンギャの人びとの、心の持ち方が印象的でした。

見てきた自分が伝えなければ

これからMSFは、外来専用の診療所を3つ、入院と外来を併せた診療所1つを建設していきます。現地スタッフもみんなモチベーションが高いので、引き続きがんばってくれると思います。

私は日本に戻ってまだ数日ですが、現地との状況があまりに違いすぎて、実はギャップに戸惑っています。自分が実際にそこにいたはずなのに、すでにロヒンギャの人びとの生活が「遠いもの」に感じるというか……。

日本人が、「バングラデシュ」という外国で避難生活を送る「ロヒンギャ」という人びとのことを想像し、自分のことのように考えるのは難しいかもしれません。だからこそ、実際に見てきた自分が伝えなきゃ、と思っています。こういう生活をしている人がいることをもっと知ってもらえたらと思っています。

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