中央アフリカ共和国:2万人の町がゴーストタウンに......援助活動にも危機が

2017年09月22日掲載

中央アフリカ共和国南西部のゼミオで、2017年7月~8月にかけて襲撃事件が相次ぎ、住民のほとんどが避難した。病院も閉鎖され、活動していた国境なき医師団(MSF)のスタッフも避難している。MSFの医療コーディネーターを務めるヴィル・ファン・ルコに、"ゴーストタウン"と化したゼミオの現状と活動継続の可能性について聞いた。

ゼミオの現状を教えてください。

襲撃されたゼミオ病院もほぼ無人となってしまった 襲撃されたゼミオ病院もほぼ無人となってしまった

ゴースト・タウンのようになっています。市街地が戦場となることを恐れ、住民のほとんどが避難しました。車で走ると焼け落ちた家や略奪にあった店舗が目に入ります。

ゼミオはこうした事態に慣れていません。住民は後先を考える余裕もないまま逃げるしかありませんでした。不意打ちだったのです。鍋はかまどの上に置かれたまま。衣服も散らかしたままになっています。家族と離ればなれになり、連絡がとれなくなってしまった人もいます。

路上では銃撃されるかもしれないからと木に登り、木から木へと移動しながら親類を探している人もいました。病院で活動していた現地スタッフの1人は、そこからわずか4km先のキャンプに避難している家族に会いに行ける状況になるまで、病院内で何日も待機しなければならなかったそうです。

MSFの活動はどのような影響を受けていますか。

襲撃が繰り返され、病院敷地内の仮設住居は廃虚となった 襲撃が繰り返され、病院敷地内の仮設住居は廃虚となった

ゼミオ病院内で7月11日、お母さんに抱っこされていた赤ちゃんが撃たれて死亡するという事件がありました。病院内で活動していたMSFチームの大半は避難せざるを得ませんでした。ただ、現地スタッフの多くは地元出身で、できる限りの活動を続けていました。

ところが、8月18日、武装兵が再び病院を襲ったのです。さらに避難していた7000人に銃弾を浴びせ、11人を殺害しました。ほぼすべての住民が避難したのはその事件のあとです。中にはMSFのスタッフとその家族も含まれています。

避難者のうち約1万人は郊外の低木地帯やその周辺にとどまっているとみられます。また、約9000人が国境を越えてコンゴ民主共和国へ逃れ、仮設の難民キャンプに滞在しているとの報告を受けています。

MSFスタッフから給水を受ける避難者たち MSFスタッフから給水を受ける避難者たち

コンゴの難民キャンプは、そこから最も近い村でも徒歩で2日かかるような地域にあります。妊婦は茂みの中で出産しています。最低限の仮設住居があるだけで、蚊帳はほぼ手に入らず、風土病であるマラリアに感染する危険性が高まっています。清潔な水も衛生設備もないため、下痢の症例が増えているとの報告も受けています。

先日、患者7人を飛行機で避難先へと運んだ際に、短時間ですがゼミオを訪問する機会がありました。運んだ患者のほとんどが銃撃を受けており、深刻なケースでした。MSFスタッフの息子も含まれていました。彼は首都バンギで手術を受け、現在は回復しています。

影響を最も強く受けたのはどういう人でしょうか。

女性と子どもです。ある少女(13歳)は胸を撃たれて運ばれてきました。病院とは反対の地域で、10日前に被害に遭ったそうです。母親は娘を連れ、市街地を避けて隣のコンゴ民主共和国に出国してから、中央アフリカに再入国したそうです。少女の容体がもったことに驚きました。

このケースでは治療が間に合いました。ただ、数千人が同じような状況にあるとみられています。彼らは完全に見捨てられ、基礎医療さえも受けられていません。

MSFのHIV治療を受けていた患者はどうなりましたか。

ゼミオのHIVプログラムでは、患者グループごとに当番を1人ずつ決め、その人がメンバー全員の3ヵ月分の治療薬(抗レトロウイルス薬)を受け取るという運用をしていました。ゼミオから250kmも離れた地域から参加していた人もいたほどで、約1600人をカバーしていました。

7月の襲撃後でも、現地スタッフはまだプログラムを続ける意思を持っていました。ただ、病院近辺に武装兵がとどまっていたため、薬を受け取りに来院するのは危険だと判断されました。

そのすぐあと、今度は貯蔵室が襲撃されました。そこには医薬品6ヵ月分が保管されていました。患者の一部は自宅に置いていた薬まで焼かれたそうです。8月の攻撃でほぼすべての住民が避難し、グループの参加者たちとも全く連絡がとれなくなったため、プログラムを中止せざるを得ませんでした。

HIVの患者にはどのような影響が出ると思われますか。

なるべく早く治療を再開する必要がありますが、この状況では非現実的です。避難した患者たちはおそらく最低限の食べ物でしのぐ日々でしょう。診療をうけるこができないため、健康状態は悪化していくものと思われます。

治療薬の服用をやめると、結核などHIVに関連した感染症になるリスクが高まります。これはとても危険です。MSFのプログラムが中断に追い込まれたことで、地域のHIV感染が増えることは間違いないでしょう。

活動を続けることは可能でしょうか。

見境のない攻撃で人道援助活動も危機にさらされている 見境のない攻撃で人道援助活動も危機にさらされている

MSFは紛争地や非常に困難な状況での活動に慣れていますが、現在のゼミオでは、活動を続けられる可能性はほぼゼロです。2万1000人いた人口は2000人未満にまで減りました。残っているのは避難できたなかった人だけです。高齢者、身障者、武装組織に包囲されてイスラム教徒居住区から出られない人びとなどです。

武装勢力は人道援助活動を尊重しなくなっています。MSFの独立・中立・公平の理念への配慮もありません。そのため、人びとが危機に直面しているにもかかわらず、MSFは援助の手を差し伸べられないでいます。

ゼミオ病院はがらんとしています。もはや安全な場所とはみなされていないからです。それでもMSFは、病院の外で活動を続けています。医薬品をリュックにつめてブッシュに分け入り、隠れている人びとを治療しています。隣のコンゴでも医療援助の新たな計画を進めています。人びとが見捨てられるようなことはあってはならないのです。

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