中央アフリカ共和国:政変後の"新たな危機"とは?

2013年05月28日掲載

MSFスペインの
ホセ・アントニオ・バストス会長

国境なき医師団(MSF)スペインのホセ・アントニオ・バストス会長は、中央アフリカ共和国を訪問し、セレカ新政権との面会や、他の人道援助団体との意見交換を行った。同国では2013年3月にクーデターが勃発し、反政府勢力セレカがフランソワ・ボジゼから実権を奪取した。

しかし、政変に伴う強盗・略奪が横行し、暴行事件なども発生して、同国の危機的状況をさらに悪化させている。一方、政変後わずか2ヵ月で、同国の状況はメディアからも国際社会からも忘れ去られたかのようだ。MSFは、国連機関や国際NGOに積極的関与と緊急ニーズへの対応を呼びかけ、公約した援助を継続・実行するよう促している。バストス会長に話を聞いた。

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数年前の訪問時と比べ、今回はどのような印象を受けましたか?

前回は2011年でした。当時、首都バンギは貧しくて活気がなく、眠ったような街に見えました。現在は、脅えて恐怖にとらわれた街という印象です。重装備の若者がトラックに乗って通りを巡回し、街全体に不安感が覆っていました。一触即発の状態で、今後何が起こるのか誰にも予想できません。

今回の訪問の目的は?

セレカ新政権に面会することや、バンギを含む国内各地に駐在する他の人道援助関係者と意見交換をすることなどが目的でした。

新政権の保健大臣、内務大臣、ミシェル・ジョトディア暫定大統領など、多くの人に会う機会に恵まれました。略奪の横行に対する懸念を表明し、MSFを始めとする全ての人道援助団体やNGOが影響を受けていることを伝えました。また、治安悪化の結果、一部のMSFチームが一時撤退を余儀なくされたことや、医療施設が攻撃の標的になっていることについても伝えました。

しかし、私たちの最大の懸念は、以前から弱い立場に置かれていた人びとが、今回のクーデターでさらに窮地に追い込まれていることです。

新政権はどのような反応を示しましたか?

概して非常に協力的で、MSFの関与に感謝していました。"危機"が国民に与える影響についてはMSFと懸念を共有し、例えばマラリア対策で連携するなどの方法で、保健医療制度の改善に取り組む意思があるとのことでした。

また、私たちが活動を継続・拡充できるよう、医療施設への略奪行為や攻撃を阻止する意思も示しました。

MSFが懸念しているのはどのようなことですか?

住居を追われてブッシュへと逃げ込んだ人びとは、蚊に刺され、マラリアに感染するリスクが高くなります。雨季に入れば感染者数は急増するでしょう。さらに、HIV/エイズや結核の治療中断を余儀なくされた患者も多く、非常に危険な状況です。中央アフリカ共和国のように予防接種率が極めて低い国では、はしかを始めとする予防可能な病気もまた、懸念材料です。

また、人びとは襲撃を恐れて畑へ出ず、農作業が出来ません。農作物の種や食糧も略奪され、食糧不足や栄養失調率の増加も懸念されます。これまでの危機に重ねて、新たな危機が降りかかっているということです。

「新たな危機」とは?

同国は以前から、緊急事態にありました。平均寿命は48歳という短さです。膨大な数のマラリア患者を抱え、死亡率は緊急事態の水準を上回っていますが、医療制度は脆弱です。今回の政変で事態はさらに悪化しました。さまざまな深刻な問題(栄養失調の増加、マラリア患者の増加、診療所や病院への破壊・略奪など)に直面しているのです。

MSFはどのように対処していますか?

MSFの手術を受ける患者(首都バンギ)

現場のチームには非常に感心しました。北部のカボとバタンガフォの治安が悪化し、バンギに避難してきているMSFスタッフが何人かいました。皆、ショックを受けていたものの、現地に戻ることしか頭にないようでした。この2ヵ所の活動地には、専門医療を受ける機会を奪われた住民が合計13万人余りもいるためです。彼らは現在、活動地に戻っています。

2013年初頭の政変に伴い、MSFは活動を強化し、戦線に近いダマラとシブート、バンギの北に位置するボサンゴアの各地で、緊急対応プログラムを開始しました。地元の病院には、HIV/エイズ治療のための抗レトロウイルス薬(ARV)を新たに提供しました。治療中断を余儀なくされたHIV陽性患者が何千人もいるためです。

バンギ地域病院が手術患者の増加に対応しきれなくなっていたため、既存の手術室を補強する目的で、MSFも独立した手術室を設置しました。

一方、MSFの車両が盗難にあい、倉庫やオフィスが略奪されたことは大きな損失です。新政権に、損害の責任を負うように求めています。

MSFは、これまでの活動を継続し、緊急対応を拡充していく決意です。

国連機関や他の人道援助団体の対応は?

いくつかの例外を除いて、他の機関の対応には落胆しています。略奪行為や治安悪化を理由に活動規模を縮小させた国連機関やNGOもあります。このような時期にこそ彼らが最も必要とされるのですが、すぐには以前の規模に戻りそうもありません。

MSFは、マラリア、HIV/エイズ、結核の治療薬の提供を公約していた機関に対して活動再開を求めています。また、同国に駐在するNGOや国連機関にも活動強化を要請し、危機的状況と住民の深刻なニーズへの迅速な対応を求めています。また、資金拠出者や国際社会は、公約した援助を実施する義務があると考えています。

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