リビア: 渡欧の中継地点、その実態は?――難民問題

2017年06月29日掲載

収容センターに勾留されている人びと
衛生的に危険なほど過密な環境だ(2016年12月撮影)

リビアは現在、移民や亡命、難民登録を希望する人びとが欧州へ向かうための事実上の中継地点となっている。その多くは、略奪、犯罪組織による搾取、虐待、投獄、殴打、拷問、性暴力などに遭い、命を奪われるケースもあとを絶たない。

国境なき医師団(MSF)は医療・人道援助を提供する団体として、彼らのために何ができるだろうか?

2016年7月には、トリポリで勾留されている難民・移民への救命・基礎医療を始めた。2017年初頭にはミスラタ地域でも援助プロジェクトを立ち上げ、拡充を続けている。リビアでMSF活動責任者を務めるジャン=ギー・ヴァトーが現状と取り組みを報告する。

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ミスラタ地域での活動は進んでいますか。

2017年初頭からミスラタと周辺の3つの収容センターで活動しています。施設自体は不法移民対策局の所管です。

収容人数は週によってまちまちです。浜辺で沿岸警備隊に引き留められたり、街や検問所で逮捕されたりした人びとです。トリポリ市内の別の収容センターから移送されて来る人や、リビアで何年か働いていた人もいます。ある男性はC型肝炎の検査結果が陽性だったという理由だけで、男性とその家族全員が投獄されました。

MSFは収容センター内での診療から着手しました。症例の大半はかいせんなどの皮膚病、下痢、呼吸器感染症、筋肉痛、外傷です。また、心身障害など、勾留中の環境や避難中に受けた暴力と直接関係している症例も多くみられます。専門ケアを必要とする骨折などの患者は病院に紹介しています。一方、勾留施設では衛生・救援キットの配布も行っています。

勾留環境の物質的な改善は可能ですが、核心の問題を見失わないことが肝心です。彼らは基本的人権を認めない不透明な手続きで収監されたのです。また、理屈の上では“国外退去”を待つ身なのです。

国際移住機関(IOM)によると、公式の勾留施設27ヵ所に計7100人が収容されているそうです。人びとはどのような状況におかれているのですか?

IOMの統計では、リビア国内に滞在している移民・難民は38万人以上となっています。センターに収容された人数が全体に占める割合は比較的小さいことは確かです。

仕事を求めてリビアに来た人もいます。リビアはかつて、近隣諸国の人びとにとって経済的に豊かな黄金郷だったからでしょう。その他は、地中海を渡る費用を確保するために、時折勾留されながらも強制労働に等しい水準の条件で働いている人か、避難を始めたばかりの人びとです。

一方、非公式センターに滞在している人びとの実態は、依然として、私たちの目に触れることがなかなかありません。リビア砂漠を越えて港までたどり着き、犯罪組織が取り仕切っている“非公式センター”(そこは家屋と倉庫がつながった建物です)に収容され、そこでの生活を生きのびた人は「拷問のような体験だった」と語っています。ただ、その実態は依然として私たちの目には触れない部分です。

IOMは、地中海をわたろうとした移民・難民のうち2016年は約5000人、2017年は6月現在で2000人が亡くなったと推計しています。でも、海までたどり着く前に、あるいは出航する前に、どれだけの人が亡くなっているでしょう?隠れた犠牲者もいることは疑いありません。

そういった人びとに向けてMSFはどのような援助を行っているのですか。

MSFは6月、ミスラタ市内に外来診療所を開設しました。さまざまな条件で生活・労働している移民・難民に手を差し伸べ、困難への理解を深め、信頼できる医療を無償で提供するためです。C型肝炎のように病気が勾留や国外退去の理由になりかねないような環境では、医療者の守秘義務が鍵となります。収容センター内での活動も続けています。

避難中に最悪の状況に置かれている人びとにいかに寄り添うか?今のところ、その答えは出ていませんが、沿岸部への路上で接触する試みを続けています。どのような活動の余地があるのか、または不可能なのかを見極めるためです。

この試みは失敗する恐れもありますし、別案・別モデルもあるでしょう。定期訪問しているミスラタ南部では、“移民”と見なされた遺体が地元の安置所に集められます。報告では1週間で10体ほど。少なくともそうした名もなき人びとの尊厳を回復するためにできることがまだあるのではないか。それが私の見解です。

MSFはリビアでは2011年から活動している。内戦の再燃と経済の低迷で打撃を受けた保健医療システムを支援し、感染制御、救急処置などの分野の保健医療施設に寄付を行っている。また必要があれば紛争被害への対応にも携わっている。戦闘からの避難者への援助として、ベンガジでは小児・産婦人科ケアや、紛争被害に遭った子どもやその家族への心理ケアを提供している。

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