ナイジェリア:政府軍とボコ・ハラムの紛争、住民たちへの影響は?

2017年02月24日掲載

ジャン・フランソワ・サン=ソヴール(MSFスペイン医療ディレクター) ジャン・フランソワ・サン=ソヴール
(MSFスペイン医療ディレクター)

ナイジェリア北東部のボルノ州は、過激派勢力「ボコ・ハラム」と政府軍との紛争の中心的な舞台となっている。特にチャド湖周辺では戦闘が繰り返されている。チャド湖は、ナイジェリア、ニジェールカメルーンおよびチャドにまたがっており、この4ヵ国で260万人以上が避難している。ナイジェリア国内だけでもすでに180万人が住まいを追われ、その半数がボルノ州の州都、マイドゥグリに身を寄せている。

国境なき医師団(MSF)は2016年6月からマイドゥグリ郊外で緊急援助を続けている。援助活動が行える地域では、援助の拡充、マラリア患者の減少、一部の農地の使用再開により、事態が好転している。

しかし、長期にわたって最低限の援助も受けられない状態が続いていた住民たちは、今なお深刻な状況にある。医療・人道援助ニーズが満たされていない地域も多く、安全面の理由から立ち入ることができない地域もある。ボルノ州の活動を視察したMSFスペイン医療ディレクター、ジャン・フランソワ・サン=ソヴールに、現地の状況とMSFの取り組みについて聞いた。

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ボルノ州の状況はいかがでしょうか。

ナイジェリア・ボルノ州の空撮 ナイジェリア・ボルノ州の空撮

視察したのは3件のプロジェクトです。1件目は、マイドゥグリとヨベ州の州都ダマトゥルを結ぶ道沿いの町、ベニシェイクです。基本的に立ち入りに支障のない場所で、移動も可能です。ただ、ここには公共の交通手段がなく、人びとがその他の方法をとろうとしても交通費を捻出できません。町は政府軍によって管理されていますが、MSFの他に規模の大きい人道援助団体はいません。

次に、グウォザとプルカという2つの町を視察しました。カメルーンとの国境地帯で、2つの町の距離も離れていません。ここは政府軍とボコ・ハラムと政府軍との戦闘が頻繁に起きているところです。どちらの町も政府軍の管理下にあります。ただ、住民は例外的な状況を除き域外に出ることができません。常駐の人道援助団体はMSFしかおらず、スタッフの移動手段はヘリコプターに限られています。

人びとはどのように暮らしているのでしょうか。

ボルノ州は激戦地の1つとなっている ボルノ州は激戦地の1つとなっている

非常に困窮しており、援助に頼るところが大きくなっています。家、農地、家畜など何もかも後に残し避難を余儀なくされています。ベニシェイク、グウォザ、プルカでは農作業が事実上できなくなっています。調理用の燃料や商品となる薪を拾うために町を離れることさえ危険です。

ここ何ヵ月かで食糧配給は拡充されましたが、水、衛生設備、保健医療などのニーズは依然として満たされていません。

3つの町は現在も新規避難者を受け入れているものの、援助が不足しています。例えばプルカでは、多くの避難者に対し、援助を提供しているのはMSFだけです。視察中に、プルカに避難してきた500人が一斉に到着した日がありました。中心は高齢者、女性、子どもでした。

若干数のテントでキャンプが開設されたものの、トイレも給水所もないため、利用されていません。何週間か前から、数百人がMSF診療所の周りで過ごしています。救援物資を配布しましたが、依然として深刻な生活環境です。

主にどのような医療ニーズがありますか。

重度の栄養失調でMSFの治療を受ける子ども 重度の栄養失調でMSFの治療を受ける子ども

ボルノ州の保健医療システムは紛争のせいで著しく弱体化しています。プライマリ・ヘルスケアが機能不全に陥り、医療施設への患者紹介もできず、病院も手が回りません。地域の人びとが非常に限られた範囲でしか医療を受けられなくなっています。

これに対応している組織は少なく、特に救急、外科、輸血、心理ケア、予防医学といった医療が大幅に不足しています。地域で唯一の医療提供者がMSF、という場所さえあります。

MSFが診療している主な病気は、栄養失調、マラリア、呼吸器感染症などで、いずれも劣悪な生活環境と密接なつながりのある病気です。着の身着のままで逃げてきているため、援助もごくわずかしか受けていません。これはMSFが目撃している範囲であり、安全上の理由で立ち入れない地域がどうなっているのかはわからないのです。

心理ケアの相談件数がとても多いことも特徴です。患者はひどい暴力を経験してMSFのもとへやってきており、現在の生活を援助に頼っています。身体だけでなく精神的にも傷ついており、心理ケアと心理・社会面の支援も重要でしょう。

MSFは現地でどのような活動を行っていますか。

MSFは3つの町で栄養プロジェクトも展開しています。マラリアの季節が終わり、食糧の配給もあって栄養状態は上向いているものの、懸念は大きいままです。

ベニシェイクでは診療所を運営しています。そこには子どもの入院治療用の病床も備えています。町で営業している医療施設は他にありません。グウォザでは診療所と病院の2ヵ所で活動し、入院、産科、救急の3分野を担当しています。また、プルカの診療所でも産科ケアを提供中です。

はしかの集団予防接種も行いました。もともと接種率が低く、感染例が複数確認されたためです。その他の病気についても、乳幼児の定期集団接種を推進する準備をしています。

対応能力の拡充も視野にいれています。医療施設への患者紹介は手順が複雑で危険も伴うため、MSFのもとに運ばれてくる重症者を、MSFが治療できる体制を整えたいと思っています。

MSFは現在ボルノ州内の6つの町(マイドゥグリ、モングノ、ダンボア、グウォザ、プルカ、ベニシェイク)の合計10ヵ所で医療施設を運営している。さらに6つの町を定期的に訪問している。

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