ウクライナ:「世界の人に知ってほしい」――紛争が続く東部で

2017年01月18日掲載

MSFスタッフに心境を語るヴィクトロヴナさん MSFスタッフに心境を語るヴィクトロヴナさん

教員のヴァレンティナ・ヴィクトロヴナさん(52歳)は、ウクライナ東部で続く紛争に生活を壊滅させられた。夫と暮らすパヴロピリ村のわずか数kmが最前線だ。紛争で職を失った上、砲撃で自宅もたびたび損壊した。現在は生活再建に努め、ボランティア活動にも参加しながら、暴力に終わりがくる日を願っている。

また、彼女は夫とともに、国境なき医師団(MSF)の診療を受けている。心理ケアのカウンセリングもその一環だ。ストレスに満ちたこの2年半と折り合おうとしている。ヴィクトロヴナさんが心境を語った。

記事を全文読む

思い出のあふれる村で

移動診療の準備を進めるMSFスタッフ 移動診療の準備を進めるMSFスタッフ

村には思い出があふれています。私はここで暮らしを営み、夫と一緒に2人の息子を育ててきました。以前はとても素敵な場所で、川辺で夏を過ごすために訪れる人もいて、観光客向けのリゾート施設を建てる計画もありました。

そこに紛争がぼっ発したのです。

私は村の小学校の教師でした。大好きな仕事で、生徒の描いた絵は全て保存していました。ですが、学校の閉鎖が決まり、退職するしかありませんでした。学校の近くでも砲撃があり、あまりにも危険だったのです。52歳にして早くも引退となってしまいましたが、幸い、夫は工場勤めを続けられています。

ゲームやパズルを始めたわけ

振動で天井にひびがはいった自宅 振動で天井にひびがはいった自宅

退職後のゆっくりとした生活リズムは落ち着きません。無理やり停止させられてしまった新幹線、というところでしょうか。そこで、あちこちでボランティア活動に参加し、私にできることを探しています。この新しい生活に意義を見出しているのです。

自宅の近くでも激しい砲撃があり、大きな被害を受けています。損壊した建物がいずれ私たちの自宅の上に倒れてきそうです。最初の爆撃は今も忘れません。轟音(ごうおん)で身の回りのあらゆるものが震えました。

全壊した自宅から家族とともに飛び出す光景を思い浮かべながらおびえていたことも思い出されます。自宅が倒壊を免れているだけでもありがたいことです。ただ、修理費を用意できないため、修復には時間がかかるでしょう。

砲撃があると窓から離れ、夫と一緒に居間で待機しました。真っ暗闇の中、照明が頭上で揺れていました。気を紛らわせれば恐怖心も和らぐだろうと始めたゲームやパズルは、今では"日課"になっています。

「世界中の人びとにここで起きていることを伝えてください」

家族も引き裂かれました。大勢が村を離れ、ウクライナを出た人も……長男もその1人です。情勢が落ち着いてきたとはいえ沈静化には至らず、住民たちはお互いの家を行き来することにも不安を抱えています。私はなかなか会えない2人の息子や孫たちが身近に感じられるように、壁に写真や絵を貼っています。あの子たちに会えなくてとてもさびしいです。

私たちには何も残されていません。ただ幸い、複数の団体から援助を受けています。

この暴力が間もなく終わりを向かえ、本来の暮らしに戻れるよう願っています。世界中の人びとにここで起きていることを伝えてください。紛争終結の助けになるかもしれませんから……。

MSFは2017年1月までに、ウクライナのドネツク州マリウポリとクラホヴェの周辺で診療3万6800件以上と、個別および集団での心理ケア相談5980件以上を提供した。

また、移動診療の一環で催された、精神保健に関する周知拡大のための説明会には約1万7200人の患者が出席している。心理ケアを受ける人びとの間では、不安に起因する障害が主な問題で、抑うつ症がこれに続く。

一般診療の対象者の中心的な健康問題として報告されているのは、心血管疾患と糖尿病だ。患者の大半は持病のある高齢者で、適切な治療と比較的長期の経過観察を行う専門プログラムの対象となっている。

関連情報