アフガニスタン:「一刻も早くブースト病院に戻りたい」――MSF日本から派遣の看護師

2017年01月04日掲載

松田美穂看護と同僚の外国人派遣スタッフ
(退避前のブースト病院にて、写真以下同)

アフガニスタン・ヘルマンド州ラシュカルガには、国境なき医師団(MSF)が保健省と共同で運営する地域唯一の2次病院(300床)であるブースト病院がある。松田美穂看護師は、MSF日本から派遣され、2016年8月中旬までブースと病院で活動していた。

しかし、紛争の影響で治安が悪化したために退避し、現在はカンダハルで活動している。ブースト病院に戻れる日を待つ松田看護師が、退避前の様子と現在の心境を語る。

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救急患者が1日平均250人以上の理由

肝臓病でブースト病院に救急搬送されてきた男性 肝臓病でブースト病院に救急搬送されてきた男性

ブースト病院には6月下旬に、救急・集中治療室・外来病棟の看護師スーパーバイザーとして着任しました。主な業務は、現地スタッフにトリアージ(※1)のトレーニングをすること、マス・カジュアリティー(※2)計画の改善することのほか、急性下痢症の増加に伴う経口補水液コーナーの開設や、国内で発生が確認されているクリミア・コンゴ出血熱の感染管理なども行いました。

地域には診療所が64ヵ所ありますが、無償で医療の質も保証されたブースト病院には、救急・重症以外の患者さんも来院し、大変な混雑となっています。救急は日に平均250人、多い日には500人を超えます。

トリアージにも大変な時間がかかり、"トリアージ前のトリアージ"が必要です。コントローラーと呼ばれる担当者がまず患者と接し、トリアージ看護師につないでいきます。トリアージの際には、5歳未満の子どもの栄養状態の確認も併せて行います。

  • 重症度や緊急度などにより治療の優先順位を決めること
  • 紛争や災害などで一度に大勢が負傷者する事態

8月の戦闘激化でやむなく退避

新生児用集中治療室でケアを受ける赤ちゃん 新生児用集中治療室でケアを受ける赤ちゃん

病院の各部署では、外国人派遣スタッフと現地スタッフの各看護師スーパーバイザーがペアを組んでいます。また疾病ごとに外国人派遣スタッフの医師と現地スタッフの看護師がチームを組んでいます。外国人派遣スタッフ26人、現地スタッフ総勢800人(うち、看護師は約60人)という大所帯ですが、よく連携できていると思います。

しかしながら、8月上旬の政府軍と反政府軍の激しい戦闘で情勢が一気に不安定になりました。ラシュカルガが反政府勢力のターゲットになったのは今回が初めてで、今後の行方も不透明です。当然ながら患者さんや現地スタッフもその影響を受けました。

自宅と病院の間を3日間も行きつ戻りつしている間に手遅れになってしまった患者さんや、武力衝突で家族や親せきを失ったスタッフもいます。戦闘自体が止んでも、道に地雷が埋められていることもあり、すぐに平静に戻るわけではありません。通院も通勤も命がけなのです。唯一の2次病院で医療を受けられないという事態は、地域の人びとの命をさらに危険にさらしています。

別の地域で活動を続けつつも……

救急搬送されてきた高齢男性を診察する現地スタッフ 救急搬送されてきた高齢男性を診察する現地スタッフ

このような情勢悪化の中、外国人派遣スタッフの数も、10人程度までに縮小することになりました。現在は、プロジェクト・コーディネーター、ロジスティック・チームリーダー、ロジスティシャン、人事・財務担当、医療チームリーダー、看護チームリーダー、外科医、救急医、病院コーディネーターが残り、現地スタッフ800人と共に活動を続けています。

私は退避組としてほかの十数名とともに指示を受け、現在はカンダハルで看護師のトレーニングなどを行っています。ブースト病院の看護師長に引き継ぎはしてきましたが、スタッフや機材のことで手一杯で、なかなか治療・看護に時間が割けないとの情報も入ってきます。

現地の医療ニーズと病院の状況がわかっているだけに心苦しく、一刻も早く病院に戻り、患者さんの診療と現地スタッフのトレーニングに復帰したいと思います。MSFだからこそできる中立な役割も再び果たしたいと心から願っています。

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