フランス:滞在者はどうなる?――撤去が進む難民キャンプ「ジャングル」

2016年10月28日掲載

「ジャングル」から上がる炎と黒煙 警察による強制退去への抗議とみられている 「ジャングル」から上がる炎と黒煙
警察による強制退去への抗議とみられている

フランス北西部のカレー市で「ジャングル」の撤去が進み、そこに滞在していた人びとが先行きを見通せずにいる。彼らは中東やアフリカの出身で、紛争や迫害、極度の貧困などから逃れてきた。

その中で英国行きを目指す人びとがこの一帯にたどり着き、難民生活を送っている。この場所はいつしか「ジャングル」と呼ばれるようになった。

国境なき医師団(MSF)は現地で、医療援助のほか、旅を再開せざるを得ない未成年者に必要な物品を配る活動も行っている。「ジャングル」の滞在者に話を聞いた。

記事を全文読む

「来週はどこで寝泊まりすることになるのか……」

撤去が進む「ジャングル」の仮設住居 撤去が進む「ジャングル」の仮設住居

「ジャングル」の入り口から見える一角はまるで廃虚だ。露店、アフガン料理店、理髪店などが並んでいたあたりも今は無人の掘っ立て小屋で、店先はビニールシートで覆われている。

数軒はどうにか営業を続けているが、窓が割れてしまっている。寒さをしのぐためにも窓は欠かせないが、木材調達のために取り外されてしまったのだ 。店の戸には「違法営業店舗72軒の即時退去」命令が張られている。

細々と営業を続けている売店と飲食店が、チーズナンや鶏肉や木箱に詰めたトマトを、今も「ジャングル」に滞在している6000人に提供している。男性たちはせわしなく動き回り、タバコを吸い、疑いやいら立ちやあきらめを交えながら撤去について情報交換をしている。

「来週はどこで寝泊まりすることになるのか。ナントか、マルセイユか、それともリヨンか……」。白髪交じりのひげを蓄えた50歳のアフガニスタン人男性が問いかける。彼はフランス語も英語も話せない。ここにたどり着いたのは数ヵ月前。英国の親類のもとに身を寄せるためだ。撤去の通知に、不安を隠しきれないでいる。

彼の背後から、水たまりをよけながら近づいてきたスーダン人男性たちは衣類でいっぱいになったごみ袋を携えている。テントや仮設住居が並ぶこの区画で、退去の準備が進んでいる。

旅の再開を迫られて

身の回りの物をまとめて旅を再開する人びと
「ジャングル」を出ても行くあてはない
身の回りの物をまとめて旅を再開する人びと
「ジャングル」を出ても行くあてはない

滞在者の中には、保護者がいない未成年者も含まれている。こうした境遇の12~18歳の子どもたちを援助する地元団体「Refugee Youth Service プロジェクト」と国境なき医師団(MSF)が運営する歓迎センターでは、子どもたちに必要な物品を詰めたリュックサックを配っている。

中には、フランスの地図、ポンチョ、無料電話の手引き、診療予約・法律相談の方法、宿泊場所の探し方を多言語で記した小さなプラスチック製のカードが入っている。ささやかな旅支度だが、とても役に立つことがあるかもしれない。

2016年10月24日時点の情報では、「ジャングル」滞在者の多くがフランス各地の歓迎・オリエンテーションセンターにバスで移送される見込みだ。その後、取り壊しが始まる。

一方、少数派だが退去を待っていた人もいるようだ。何週間も前から、フランスでの将来を見据え、温かい居場所や保護申請を求めて……。

スーダン人男性の一団がお茶を飲みながら暖をとっている。「ジャングル生活はもう終わりだ!」。新たに覚えたフランス語での宣言に、うれしさがにじみ出る。人びとは旅を再開し、フランス北部をさまよいながら渡英を目指すだろう。英国で家族や友人が到着を待っているはずだから。

未成年者たちの行く末

一方、未成年者は数日、「ジャングル」内に仮設された歓迎センターに身を寄せることになる。その間、全ての家族呼び寄せ申請を英国当局が審査する。作業は既に始まっており、ただでさえ心細い子どもたちを一喜一憂させている。直近の数日で200人近くが英国の親類のもとへ向かった。

子どもたちはコンテナ製の事務所の前に集合し、英国での滞在許可を申請する。望みの回答を受け取った本人は喜びを爆発させ、それを友人たちが祝福し、歓声を上げる。「イングランド!イングランド!」。苦闘の月日に終止符が打たれる。

もっとも、誰もがこうした好機に恵まれるわけではない。多くは未成年者の保護施設「歓迎・オリエンテーションセンター」に送られるだろう。

アリ君がつらそうに打ち明ける。「英国のおじさんのところに行きたいんです。何度も海を渡ろうとしたけれど、うまくいきませんでした。僕も申請するつもりですが、望みは薄いです。申請が通らなかったら?このままフランスに滞在しようと思います。来週の宿泊場所もまだ決まっていませんが……」

関連情報