南アフリカ共和国:祖母の愛と結核新薬デラマニドに救われた命――シネゼンバ・クセさん

2016年10月28日掲載

今でも毎日薬を飲んでいるシネゼンバさん 今でも毎日薬を飲んでいるシネゼンバさん

シネゼンバ・クセさん(16歳)は、祖母のブイシワ・マドゥベラさんと他の4人の家族と一緒に、西ケープ州カエリチャのC29地区に暮らしている。彼女は今年、祖母の決心と愛情、大塚製薬が製造する薬剤耐性結核(DR-TB)新薬の試験的服用によって命を救われた。シネゼンバさんが回復に至るまでの日々をブイシワさんが語ってくれた。

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3年ぶりにあった孫がやせ細り衰弱……

シネゼンバは生後半年で母親を亡くし、私の上の娘、つまりあの子にとっては伯母に育てられました。ただ、その伯母も昨年12月に亡くなりました。

シネゼンバたちは当時東ケープ州ポート・エリザベス地区に住んでいて、私が葬儀に訪れた時彼女はひどい病状でした。やせ細り、衰弱し、震え、青ざめ、寝込み、大変な高熱だったのです。とてもおとなしい子で、しばらく会っておらず、約3年ぶりの再会でした。

葬儀の日、地域の看護主任から連絡を受けました。「この子をご自宅に引き取れませんか?病気なので……」

悲しいことに、私は子どもを3人失っていますが、あの子も亡くしてしまうと思いました。私はよく口にしていたものです。「子どもを1人亡くしたら、私も死ぬ」

そしてこう考えていました。「あの子の母親が亡くなった上に、あの子自身も死んでしまう」

多剤耐性結核(MDR-TB)に感染

あの子を引き取った最初の1ヵ月は、ひどい状態でした。食欲がなく、私たちもただ見守るほかなかったのです。みんなが悲しい思いをしていました。泣きたい時は、家の外に出ました。

2015年12月12日、X線写真を撮影し、喀痰を採取した結果、私は緊急に呼び出されました。シネゼンバは多剤耐性結核(MDR-TB)に感染しており、ブルックリン胸部病院に入院することになりました。

その日は絶望的でした。あの子が亡くなってしまうと思ったのです。ポート・エリザベスに残していたら、死んでいたでしょう。

2015年12月末までには、MDR-TB治療のカナマイシン注射とその他の薬の投与を開始しました。注射薬の副作用で聴力を失うかもしれないと言われていました。また、平日は毎日、診療所に通わなければなりませんでした。

注射は痛く、診療所に行きたがらない日もありました。2016年2月、喀痰検査でカナマイシンへの耐性が見つかり、治療法の変更のため、新薬の使用を申請することになったのです。

その時国境なき医師団(MSF)がやって来て、私が臨床試験への参加を許可すれば、日本の大塚製薬が製造するデラマニドという新薬の処方をシネゼンバのために申し込めると説明されました。通常、南アフリカの結核患者には適用されない薬です。私たちはカウンセラーと相談し、いろいろな情報を収集しました。

デラマニドの服用後、見る見るうちに回復

自宅の外で元気にポーズを取るシネゼンバさん 自宅の外で元気にポーズを取るシネゼンバさん

服用開始直後の数日は、悪心と嘔吐感が続きました。私はあの子を座らせて「我慢しなくちゃね。薬に語りかけて、こう命令するのよ。『言うことを聞きなさい』って」

それから1ヵ月もしないうちに、シネゼンバは話せるどころか、踊れるようにまでなりました。教会に行き、聖歌隊でも歌い。誰の目にも回復は明らかで、皆、何が起きているのか興味津々でした。今では毎月ECG教会に通うのも普通のことになっています。

昨年は私たち一家にとってとてもつらい年でしたが、今年2月からデラマニドの服用を始めてからは、そう時間はかからず回復に向かいました。

唯一の問題は、あの子が何でも食べられるようになったことです。2食分の大盛りにしなければなりません!体重も増えてきました。

もっと多くの人にこの薬を

最後にX線撮影をした際、もう結核の兆候は見られないと言われました。この薬は半年服用するとのことでしたが、さらに半年の延長を申請し、認められました。

シネゼンバは、今年は学校に行っていません。治療による睡魔や眠気で出席は無理だろうといわれたのです。でも来年は通学できるそうです。

デラマニドの製造者に向けてメッセージですか?

デラマニドの製造者には、今は限定的となっている服用期間の延長と対象となる患者の拡大をお願いしたいと思います。この薬を本当に必要としている全ての患者に提供していただきたいのです。診療所には、大勢の結核患者がいました。あの人たちがデラマニドを手に入れられれば、DR-TBも克服できるでしょう。結核は大変な脅威ですが、致命的ではありません。治療は可能なのです。

MSFはデラマニドを製造する大塚製薬に対し、南アフリカを初めとした薬剤耐性結核(DR-TB)高まん延国での薬事登録を急ぐよう要請している。プレスリリース「結核:国境なき医師団(MSF)が日本の大手製薬企業に結核治療薬の提供拡大を要請」

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