チャド:ティシ地域の難民・帰還者の人道危機は依然深刻

2013年07月08日掲載

チャドの隣国スーダンのダルフール地方で2013年1月上旬に起きた激しい抗争で、チャドでは、移民していた人びとの帰還や住まいを離れて難民となった人びとの到着が相次ぎ、清潔な水、適切な滞在施設、医療の不足が今なお続いている。国境なき医師団(MSF)は4月上旬にシラ州ティシに入り、複数の診療所を運営して医療・人道援助を続けている。

MSFが現地入りする以前は、ティシで機能している病院がなかった。MSFは現在、ティシで診療所1ヵ所、ガダルとアブ・ガダムで移動診療を運営するほか、ウム・ドクゥンでも小規模な医療施設1ヵ所を運営している。6月24日までに、難民、スーダンからの帰還者、地元住民など計4700人の患者を診療。また、栄養失調児200人以上を外来・入院栄養治療センターで治療している。来院理由の24%が暴力に関わるものだった。

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サダムさんの証言(仮名、33歳)/牧畜業・スーダン人難民

MSFの移動診療チームの診察を受ける難民・帰還者たち

住まいのアブガラディルの街中にいたところ、複数の車が来るのが見えました。気がかりなのは仕事のことで、抗争に加わるつもりなどありませんでした。しかし、流れ弾で右腕を負傷したのです。

大勢の住民が殺されました。兄弟が私を荷車に押し込み、1時間半かけて国境を越え、ティシの病院まで運んでくれました。チャド入国には何の問題もありませんでした。ティシに逃れたのは、安全なことと言葉が通じるからです。

妻と幼い息子がいますが、今はティシ郊外でほかの難民と一緒に過ごしています。避難の際は衣類しか背負っていませんでしたが、妻は毎日食べ物を持ってきてくれます。とても助かります。

襲撃で負傷した人はほかにもたくさんいます。MSFは重傷患者を手術するため、飛行機でアベシェの病院に送っています。MSF以外にこうした活動をする人びとはいないでしょう。とてもありがたく思っています。

給水量、最低水準のわずか半分

MSFは、チャド国内の暴力を避けてスーダンのダルフール地方に逃れていた約22万人の状況悪化についても懸念している。彼らは限られた援助しか受けられていないためだ。一方、今回の抗争によるチャドへの帰還者・難民の大半は女性を中心とした世帯で、特にリスクの高い若年者や5歳未満の子どもが多い。

MSFでは救援物資の配給を拡大。複数の場所で合計2500組の救援キットを帰還者に提供した。また、トイレ200基の設置や給水活動を通じて、アブ・ガダム難民キャンプの難民を直接援助している。同キャンプの状況は依然深刻で、給水量は1人あたり1日わずか10リットル。これは、一般に最低限の必要を満たすとされている量の半分に過ぎない。

ハサンさんの証言(仮名、40歳)/牧畜業・スーダン人難民

救援物資として届いた貯水容器の配給準備を進めるMSFスタッフ

アブガラディルの町を重装兵が車で走り抜けるのを見ました。車は25台ほど連なり、人びとを撃ち始めたのです。私も鉈(なた)で争いに応じました。家族を守りたかったのです。

右の太ももに銃撃を受けた私を、町の人が荷車でティシの病院に運んでくれました。ここには毎週、市場の立つ日に訪れていたため、なじみがあります。妻と8人の子どもたちも着の身着のままで逃げて来ました。現在は、数個の貯水容器を手に入れ、木陰で過ごしています。

妻が毎日、食べ物を持って来てくれますし、ともに難民となった人びとの中にも食べ物を提供してくれる人がいます。MSFのおかげでけがもよくなっています。とても感謝しています。

栄養失調が深刻化、コレラ流行の懸念も

MSFのチャドでの活動責任者であるジェイソン・ミルズは「雨季に入るため、清潔な水や衛生設備、トイレの不足が、コレラのような病気の流行につながることを案じています。栄養失調も深刻化しており、帰還者への食糧援助不足で事態が悪化することが懸念されます」と話す。

MSFのチャドでのオペレーション・マネジャーであるトム・ロスも「チャド国内の避難キャンプにたどり着けず、今も続く暴力にさらされたり、人道援助を受けられずにいたりする人びとの安否が依然気がかりです」と話す。

ティシから30km離れたアブ・ガダムへの難民の移転を受け、MSFはチームを分割。移動先のキャンプでも差し迫ったニーズに対応するとともに、雨季の終わる11月まで現地にとどまり、緊急援助を続ける予定だ。

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