チャド:はしかの予防接種、2週間で10万人に完了

2013年07月16日掲載

チャド東部ではしかの集団予防接種の活動を行っていた国境なき医師団(MSF)のフローラ・エスクル看護師がこのほど帰国した。エスクル看護師は今回が初めての参加。2週間で10万人の子どもに接種を完了した。

「とても充実した経験でした。このような大規模な活動を展開するMSFの実行力に感銘を受けました。わずか2週間で大勢の子どもたちに予防接種を行い、大きな達成感を得られました。次回の現地派遣が待ち遠しくなっています」と話すエスクル看護師に、取り組みの様子を聞いた。

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警戒水準に達していた"はしか"

私がチャドの首都ンジャメナに入ったのは2013年4月半ばでした。同僚4人とワダイ州アベシェへ向かいました。2日間かけて、チャドを西から東へと横断したのです。

アベシェでは、何ヵ月か前からはしかの症例が報告されており、4月には警戒水準にまで達していました。はしかは深刻な合併症を引き起こしかねません。十分な医療が受けられない環境下では、死亡率が20%に及ぶこともあります。

ただ、低価格で有効なワクチンがあり、予防は可能です。アベシェ地域では、2009年以降、集団予防接種が行われていませんでした。つまり、未接種の子どもが増え続けていたわけです。

現地の看護学生も活動に参加

MSFの現地スタッフとともに集団予防接種を行う
エスクル看護師(写真中央)

アベシェに着くと、準備は既にかなり進んでいました。MSFが何年も現地で活動しているからです。管轄局の許可も得ており、郡の診療所26ヵ所の予防接種参加が確定済み。2週間で約10万人の子どもに接種を行うことになっていました。

最初の仕事は、MSFに提出された何百枚もの履歴書に目を通すことでした。相当数の看護学生の受け入れを、彼らの所属する大学と取り決めていたのです。4月の終わりまでに、6人ずつ14チームに分け、研修を行い、地元の人びとへの対応をもって修了としました。修了課題は各チーム1日平均500人の子どもへのワクチン接種でした。

集団予防接種の開始は4月29日に予定されていました。毎朝、恒例の儀式のように5時に集合し、手順を最終決定すると、14人の指導担当者が到着。それから、ワクチンの入った保冷器その他の設備が漏れなくジープに積み込まれているかを点検し、ようやく各チームが出発するのは午前6時ごろでした。

最初の1週間、私の主な役割は予防接種の監督・指導でした。最も遠い接種会場には自動車で3時間かかることもありました。混雑を避けるため、時には村のまとめ役に警備係の増員を依頼するなど、改めて調整が必要でした。

ワクチン注射を受けるのは生後6ヵ月~5歳の子どもに限られていますが、必ずしも母親が子どもの正確な年齢を把握しているとは限りません。原則として、歯が生えるところまで発育していれば、接種対象となります。また、例外的に遊牧民の子どもたちは15歳まで対象としています。彼らは定期予防接種を逸してしまっていることが多いからです。

子どもの通院をためらう親、背景には経済的な事情

出発を待つ集団予防接種チーム

2週目は、はしか患者の治療に、私自身が携わる部分が多くなりました。母親たちが子どもを予防接種会場に必ず連れてくるとは限りません。感染を恐れるためです。

はしかウイルスに対する決まった治療法はなく、抗生物質、解熱薬のパラセタモール、眼軟膏を用いた対症療法を行います。はしかは栄養失調のリスク要因なので、多くの場合、栄養補助も必要です。これらすべての治療が接種会場で提供可能です。

ただ、合併症を起こしている子どもたちはアベシェの病院に搬送しました。同病院でもMSFが無償の医療を提供しています。最も動揺を誘う症状は呼吸困難とひきつけです。子どもにこれらの症状があると、病院に連れて行ったほうがいいと、親も納得しやすくなります。

私たちが援助対象としている人びとは、経済的な事情から、自宅を数日空けてアベシェの病院に行くこともためらうことがあります。そのため、MSFが救急搬送車で子どもの送迎をすることになっても、通院を納得していただくこと自体が1つの大きな成果でした。

アベシェでの集団予防接種を完了したMSFのチームは、引き続き、隣接するアブディ郡に移って小児予防接種を行った。それから6月末にかけて、集団予防接種はビルティンおよびワジ・フィラ両州にまで北上。アベシェのあるワダイ州を含む3州で合計25万7000人がはしかの予防接種を、約800人の小児患者が治療を受けた。

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