マリ: 北部に膨大な医療ニーズ、医薬品・スタッフが不足

2013年08月12日掲載

マリでは2013年初頭に紛争が激化し、医療施設が壊滅状態になるなど大きな被害が出た。特に、紛争地となった国内北部の状況は深刻だ。国境なき医師団(MSF)の活動責任者を務め、先ごろ帰還したジョアンヌ・セケネスに、同国の人道を巡る現状を聞いた。

記事を全文読む

マリの現状は?

危機的状況が続いていると考えています。医療の利用は今も国内全域にわたる深刻な問題です。MSFは、南部のシカソ州クティアラで小児医療プログラムを展開しています。北部の危機もクティアラには及んでおらず、平常通りの生活が続いています。保健医療スタッフもおり、複数の医療援助団体が運営する活動も順調です。ただ、MSF以外の治療は有償なので、医療の普及が著しく妨げられています。

北部は状況が異なります。医療ニーズは依然として膨大です。アラブ人とトゥアレグ人は、不安感から、都市部に戻って治療を受けようとしません。虐待や報復を恐れているのです。彼らは2013年1月に開始された軍事作戦の際に北部地域を離れ、周辺国に向かっています。

トンブクトゥ州でも、MSFの複数のチームが病院や診療所を活動拠点にしています。ただ、医療スタッフや住民にとって、医療施設との行き来は困難です。犯罪組織が待ち伏せている一部の道路の通行は特にやっかいです。

マリ北部の人道ニーズは?

MSFのジョアンヌ・セケネス活動責任者(右)

北部で医療の利用が限られている理由は複数あります。まず、医療スタッフが避難してしまったこと。最近になってようやく復帰しつつありますが。

もう1つの大きな問題は、医療の質に関わるものです。保健医療施設で活動する団体があまりに少なく、薬も医療人材も慢性的に不足し、ごく低い水準にとどまっています。北部の医療は、法令上は"無償"です。しかし、各施設には職員の給与や管理運営費をまかなう財源がありません。

また別の側面として、保健医療施設から離れた場所に住んでいるため、病院までの移動が困難で、孤立状態に置かれている人びとがいます。例えば、出産間近の妊婦が合併症を起こし、来院が間に合わずに亡くなるのです。一方、医療施設側も、輸血や帝王切開といった適切な処置を提供でき場合があります。

ただ、この2ヵ月で、政府職員とNGOスタッフが北部に戻ってきているため、医療の質は改善傾向にあります。一方、地域の医療施設の多くが、まだまだ業務を再開できていません。各方面からたくさんの資金が寄せられているので、成果につながるといいのですが。

今後、数ヵ月の優先事項は?

MSFの現在の基本的な優先事項は、医療をなかなか受けられない郊外の住民に、医療を届けることです。北部でも南部と同様、マラリア治療や妊婦ケアを行いつつ、活動の焦点を小児医療に置いていきたいと考えています。確実にニーズが存在することから、MSFがマリでの医療援助活動を縮小する予定はありません。

今年もマラリア流行の季節に入っています。この季節は、農作物の端境期(ハンガーギャップ)とも重なり、前回収穫した食糧が徐々に底を尽いていきます。それが、農作物供給の大幅な減少と物価の急騰につながることもあります。人びとには、幼い子どもを栄養失調から守るために食糧を購入したり、診察費を支払ったりするだけの経済的余裕がないと思われます。

医療スタッフの復帰も進んでいますし、北部でも医療の利用拡大と質の向上を実現できると期待しています。やるべきことはたくさんあります。

国連マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMA)設立に対するMSFの見解は?

MINUSMAの任務には、特に北部の状況安定化と、人道援助活動の後押しが含まれています。援助を実践可能にし、国内避難民や難民の帰還を実現することが目的です。

軍隊による人道的支援は混乱を招くこともあります。MINUSMAの活動とMSFの活動が混同されないようによくよく留意しなければなりません。

MSFはこれまでの常にならい、独立の立場から確実に援助活動を行えるよう、マリの各利害関係者と対話を続けていく予定です。紛争当事者たちもきっと、MINUSMAとの違いを認識してくれるでしょう。

MSFの人道援助活動が中立・不偏だと認められるよう願っていますし、また現実にもそうあるように活動を継続していきます。

関連情報