モーリタニア:マリ人難民の栄養失調率、緊急水準を上回る

2013年08月14日掲載

モーリタニアのムベラ難民キャンプで、国境なき医師団(MSF)は2012年2月から、マリ人難民7万5000人を対象に行ってきた医療・人道援助活動を拡大している。緊急対応の段階は脱しつつあるものの、依然としてさまざまなニーズが存在している。現地で活動するMSFのルイ・カクジ・ムトケ医師に現状を聞いた。

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最後に難民が一斉到着した2013年1月から、栄養状態は改善されているのでしょうか?

MSF医師の診察を受ける重度の
栄養失調の赤ちゃん(生後6ヵ月)とその母親

A. 2013年1月にマリで再燃した紛争を逃れ、新たな難民が一斉に到着しました。その結果、状況は急激に悪化しました。さまざまな組織がキャンプで力を尽くしていますが、依然として人びとの栄養状態はよくありません。栄養失調率は、緊急事態を示す水準を上回っています。

MSFの栄養治療・補給センターでは、月平均330人の重度栄養失調児を登録。1日平均12人の子どもが命の危機に瀕し、治療を受けている計算です。幸い、この子どもたちの85%が健康になって、MSFのプログラムから"卒業"しています。

そういった医療問題にMSFはどのような改善対策を?

A. 難民キャンプの拡張部分に3つめの医療施設を造りました。目的は、医療を患者に近付け、利用を広めることです。現在は、受け入れ患者数が週平均1800人以上となっています。治療の選択肢を増やすとともに、医療スタッフの受け入れ能力を強化しました。また、健康教育担当スタッフを拡充したことで、活動がより効果的になりました。子どもたちの病院への移動時間も短縮され、治療も継続しやすくなったのです。

MSFは保健医療施設で定期予防接種をサポートするチームも編成しました。モーリタニア保健省および国連児童基金(ユニセフ)と連携し、世界保健機関(WHO)の「予防接種拡大計画(EPI)」に基づいた活動です。

対象疾病はジフテリア、ポリオ、破傷風、はしか、百日咳です。いずれも予防は簡単な病気です。子どもの場合、最善の予防法は予防接種なのです。マラリア対策については、雨季の到来に伴う患者の増加を見込んでいます。殺虫剤を染み込ませた約4万5000張の蚊帳をキャンプで配布する予定です。その際に、5歳未満の子どもと妊婦を優先します。

事態は掌握されているといえるのでしょうか?

ムベラ難民キャンプで食糧の配給に並ぶ人びと

A. ここ何ヵ月かの間に、多大な努力が払われてきました。必要最低限の援助水準を維持するためには、いっそうの注力が求められます。気の抜けない状況が続くことは確かです。

当面、難民のマリ帰還は見通しが立っていません。帰って行った人びともわずかにいますが、マリ北部は依然として緊張状態にあり、難民の任意帰還を勧められるような条件が整っていいないのです。

数週間前にムベラ地域に到着したマリ人もおびえていました。彼らは難民キャンプへの移動を拒み、マリ国境沿いに位置するファサラに滞在することを選びました。同様に、2012年中にやって来た大勢の難民が報復を恐れ、今もマリ帰国を不安がっています。

キャンプの滞在環境も非常に不安定です。食糧配給は大幅に改善されているものの、今も安定はしていません。月1回、生後6ヵ月~2歳の子どもには、ミルク・オイル・砂糖で強化したトウモロコシと大豆の粉(CSB++)を含む食糧が配布されています。これは子どもの発育に不可欠で、栄養失調予防にもなります。

ただ、各世帯が窮状にあり、配布された食糧の一部が年長の子どもたちに渡ってしまうこともあるのです。そこで、MSFでは、栄養失調児のいる家庭に高栄養ビスケットを提供しています。栄養失調の構造的な原因が払しょくされていないため、楽観はできません。

現地ではその他に、どのような問題があるのでしょうか?

A. 雨季が来ると、道路がぬかるみ、ムベラ・キャンプにも行きにくくなることがあります。そこで、できる限りの事前策を講じています。具体的には、医療施設が水と砂嵐に耐えられるように補強しました。マラリアの流行ピークに備える一方、今も最大の死因である下痢と呼吸器感染症にも対応しています。また、給排水・衛生設備を拡充し、保健医療の早期利用を促すことにも力を入れています。

もう1つの問題が医療スタッフの人員不足です。このところMSFは、砂漠に囲まれたムベラ・キャンプで勤務できる、能力の確かな医療スタッフの募集に苦戦しています。人的資源はやはり、難民を取りまく医療環境・栄養状態改善の前提条件なのです。

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