欧州を目指す人びとの滞在キャンプで―MSF日本人コーディネーターの報告

2015年12月22日掲載

紛争が長期化して政情が悪化する中東とアフガニスタンやアフリカから欧州を目指す人びとが後を絶たないなか、国境なき医師団(MSF)のチームは難民・移民と、難民申請希望者を対象に医療人道援助を提供している。2015年9月から11月にかけ、クロアチア国境に近い一時滞在キャンプで活動したプロジェクト・コーディネーター、井田覚が、現地の様子を語った。

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一時滞在キャンプで援助を提供

セルビアとクロアチアの国境で医療援助を提供 セルビアとクロアチアの国境で医療援助を提供

欧州を目指していた難民・移民は、当初、セルビアからハンガリーへ入っていましたが、9月にハンガリー国境が封鎖されると、そのルートをクロアチアへと移しました。クロアチア国境沿いでは、登録を待つ大勢の人びとや、政府の対応の遅れから先に進めず立ち往生する人びとが多く取り残されていました。夜になれば気温が下がり、すでに寒さも厳しくなっていた時期でしたが、人びとは、雨風をしのぐシェルターもないまま雨と寒さにさらされながら野外で数日過ごさなければならない状態にありました。

MSFは、国境沿いに取り残された人びとやキャンプ内で、24時間体制で医療と心理ケアを提供するほか、物資と水の配布も行いました。キャンプには毎日5000人から8000人もの人びとが到着していましたが、彼らはここで数時間を過ごして、再び次の目的地へと出発していきました。

リスクを負っても欧州へ

国境の駅で列車を待つ人びと 国境の駅で列車を待つ人びと

MSFの診療を受けた患者の7割は若い男性でしたが、乳幼児や小さな子ども、妊婦、高齢者などもいました。長く過酷な移動の間に、食事も十分にとれないまま不衛生な環境にさらされたことで、かぜや関節痛、腹痛などを訴える人が多くいました。地元の病院へ緊急搬送しなければならないケースもありました。また、睡眠不足、難民・移民に対する差別や将来への不安などによるストレスを訴える患者もいます。自国で、家や家族を失うような悲惨な経験をしたり、危険な船旅で恐怖心を覚えた人もいました。MSFは心理ケアも提供していましたが、多くの患者は、一刻も早く目的地へ出発したいという思いから長くキャンプにとどまらず、きちんとしたケアが提供できない難しさもありました。

危険な船旅をして、リスクを負っても欧州を目指そうという人びとの意志の固さは、想像を超えるものがあります。ある難民の女性は、自分の国を出発する50日前に出産を終えたばかりで、その後、出血が止まらない状況だったのにもかかわらず、子どもを連れて海を渡りました。クロアチアの難民キャンプに着くころには、緊急に輸血が必要な状況でした。ここまでの道中に何度も助けを求める機会はあったはずなのに、「どうしても、早くドイツへ到着したい」という思いが彼女を前へ進めていたようです。それは、紛争が絶えない母国の状況がいかに悲惨で、追いつめられていたかの裏返しと感じました。

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