バルカン諸国:身分証に誤記、少年(16歳)の 欧州行きは?

2015年12月22日掲載

徒歩でセルビア・マケドニア国境を目指す人びと 徒歩でセルビア・マケドニア国境を目指す人びと

中東やアフリカから欧州を目指す移民・難民の多くが、ギリシア、マケドニア、セルビアの各国境で足止めされている。人びとの通過点となっているスロベニア、クロアチア、セルビア、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国の各国が新たな政策を打ち出し、特定の国籍(2015年12月時点ではシリア、アフガニスタン、イラク)の保有者にのみ入国を認めるとしたためだ。足止めされている人びとはわずかな情報しか得られず、人道援助も不足している状況で冬をむかえている。

国境なき医師団(MSF)は各国の政策に伴う医療・人道面の影響を懸念している。また、欧州の各国政府に対し、移民・難民を保護する義務を果たし、人道援助団体の適切な活動を認めるように呼びかけている。

サイードさん(仮名、16歳)はアフガニスタンのヘラート州出身。親類とともにイランを経由して欧州に入った。その旅は2015年11月19日、マケドニアとセルビアの国境で突然行き詰った。この日、バルカン諸国が特定の国籍者にのみ領土の通過を認めるとしたためだ。サイードさんに話を聞いた。

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国籍が間違っている!

国境が通過できず途方に暮れるサイードさん(仮名、2015年11月19日撮影) 国境が通過できず途方に暮れるサイードさん
(仮名、2015年11月19日撮影)

みんなと同じく僕たちも列車でマケドニアに入り、歩いてセルビア国境までたどり着きました。国境に着いたのは夜で、警察官がいました。身分証を求められ、出身を聞かれました。僕たちより先に国境に着いていた親類は問題なく通過できたと聞いていました。

僕の番が回ってきて、マケドニアで発行された証明書を取り出すと、誤ってイラン国籍と書かれていました。母と一緒にアフガニスタンを脱出したあと、イランに住んでいたのが原因だと思います。一緒に旅をしてきたおばが警官に僕も家族だと掛け合ってくれたのですが、耳を貸してもらえず、セルビアへの入国を認められませんでした。

アフガニスタンを離れた理由

イランには母と一緒に3~4年住んでいました。出身地はアフガニスタンのヘラート州の州都に近い村ですが、そこにはもう戻れません。おじが武装勢力に徴兵されそうになり、従兄弟が1人殺されました。村を離れてイランに逃れたのですが、そこで父が行方不明になりました。めいは自宅でお祈りをささげている時に銃で撃ち殺されました。働き口もなく生活に困っていたイランでそのような目に遭い、欧州に向かう決断をしたのです。それからもう13日目になります 。

国境通過を認められず、その日は引き下がるしかありませんでした。辺りは真っ暗で、その場にとどまるしかありませんでした。誰かが「朝になったら国境が開くかもしれない」と言っていたので、その日は畑で寝ました。すごく寒かったです。目が覚めても国境は閉鎖されたままでした。マケドニア領内の一時滞在キャンプに引き返すと、そこでは「しばらくは、国境は開かないだろう」とうわさされていました。

命がけの決意、しかし……

プレセボの登録所前で行列をなす人びと プレセボの登録所前で行列をなす人びと

そこで、待つことはやめ、国境を突破することに決めました。警察の隙をついて線路わきの畑を走り抜けるつもりでした。命がけだということはわかっていました。だけど、ほかにどうしようもなく、決心したんです。セルビアに進むか、死ぬかだと。

幸運なことに、国境突破は成功し、セルビアに入れました。ほかの人たちと一緒に、バスの出る村まで行けたのです。バスで国境から10kmほど行ったプレセボの町に着き、登録所に着くと不安で気分が悪くなりました。入り口の警官に身分証を見せないようにしていたのですが、結局、見せるしかありません。すると、「君はイラン人じゃないか」と言われ、追い出されてしまったんです。

登録所の外で待つしかありません。親類は登録所の中で足止めされています。身分証の国籍を訂正してもらって旅を続けたいのですが……。目的地は決まっていません。友人のいるドイツ辺りになると思います。個人的にはどこでもいいのですが、とにかく安全なところがいいです。将来は医者になりたい。でも、まずこの状況を乗り越えなければ……。

移民・難民に安全かつ合法な移動経路を

数日後、サイードさんの身分証は訂正された。セルビアではアフガニスタン国籍者として登録され、親類と合流することができた。マケドニアから、命がけで"不法出国"したからこその結果だった。

移民・難民を対象としたMSFの活動の責任者であるステファノ・アルジェンチアノは「MSFは何ヵ月も前から、必要な人に安全かつ合法な移動経路を保障する具体的な手立てを行政当局に求めています。しかし、対応は不足しています。援助者・団体が滞在施設を用意したり、援助を提供したりする能力も、各国・地域の当局が入国制限を課していることにより、弱められています」と指摘する。

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