パレスチナ: 看護師たちに研修を――"封鎖"が続くガザで

2015年09月01日掲載

現地の男性看護師2名に研修を行うロシェル・ドレーシー看護師 現地の男性看護師2名に研修を行う
ロシェル・ドレーシー看護師

パレスチナのガザ地区は、2007年からイスラエルによる"封鎖"が続いており、地区外との交流を断たれている。ガザの医療者たちも例外ではない。医療技術の進歩に遅れないように常に最新の知識を身につけ、専門技術の向上に努めることが求められるが、そのための研修を受けることもできない状況だ。

ニュージーランド・オークランド市出身のロシェル・ドレーシー看護師は、国境なき医師団(MSF)からガザに2回派遣され、現地の看護師に集中治療の研修を行っている。「看護師たちはとてもやる気に満ちています。この研修が開かれる以前は、グーグルで『集中治療』を検索するしかなかったのですから」

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紛争地だからこそ求められる集中治療

ガザ封鎖の渦中にある現地の看護師たちとってMSFの研修が貴重な機会となっている ガザ封鎖の渦中にある現地の看護師たちとって
MSFの研修が貴重な機会となっている

集中治療には高度な技能が求められる。紛争、事件、事故などでの負傷症例が多いガザでは、集中治療の技能は極めて重要だ。住民は爆撃と戦闘に加え、イスラエルによるガザ封鎖で、移動制限にも苦しめられている。医療者が研修を受けに地区外へ行くことも難しい。その結果、最新かつ最高の医療の提供が実現していない。こうした現状に対し、MSFは近年、ガザでさまざまな専門医療の研修を行ってきた。

ドレーシー看護師は、2013年にガザに6ヵ月赴任し、集中治療の臨床研修を行った。「当時、ガザの看護師は誰も集中治療の研修を受けたことがありませんでした。看護師はガザを出られず、講師はガザに入って来られないためです」。MSFはこの年、集中治療専門医を含めた医師チームも派遣。現地の医師にも集中治療の短期研修を行った。

ガザ行きの前にシンガポール?

この活動経験が下地となって、MSFは2015年、ドレーシー看護師に再度、ガザへの赴任を要請した。看護師を対象とした集中治療の短期研修を行うためだ。彼女は任務を引き受け、もう1人の看護師と一緒に最初にシンガポールへと旅立った。

シンガポール行きの目的は、ベーシック・コラボレーションと呼ばれる教授法を教わるためだ。これは香港中文大学が開発した手法で、高品質の教材を普及させることに主眼を置いている。ドレーシー看護師たちは研修内容をガザの状況にあわせて調整。ガザでは手に入らない機器が必要な部分を削るなどして教材を完成させた。

看護師の大半が受講、フォローアップが課題

そしてガザに赴任した2人は、5週間の滞在期間の中で、2日間コースの研修を9回行った。指導した看護師は計116人。ガザ地区内の看護師数の大半がこの研修を受けたことになる。

受講前と受講後の試験の比較で、受講した看護師の知識と技能が飛躍的に向上したことがわかった。また、認定試験に合格した看護師は90%に達した。

一方、最大の課題は、MSFの研修チームが現地を離れた後も、研修を受けた看護師が身につけた技能を正しく実践していけるように道筋をつけることだった。MSFに所属する現地の医師と看護師がフォローと追加研修を引き受けた。

研修を受ける機会の不足は、ガザの看護師が抱えているさまざまな困難の1つだ。ドレーシー看護師は「現地の看護師から、紛争で家族が負傷したり、自宅を失ったり、知人が亡くなったりした話をたくさん聞きました。でも、何度もそういった経験をくぐり抜けている彼らは、立ち直りもとても早いのです。このような経験が彼らの人生の一部になっているのは悲しいことですが……」と話す。研修の最終的な狙いは、ガザの人びとが必要な時に、高度集中治療を受けられることだ。

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