エボラ出血熱:ワクチン開発に進展、有効性示す――MSF治療センターで試験実施

2015年08月03日掲載

臨床試験に協力して接種を受ける保健医療従事者 臨床試験に協力して接種を受ける保健医療従事者

西アフリカで現在も流行が続いているエボラ出血熱について、医学誌『ランセット』は2015年7月31日付で、エボラワクチンの候補の1つが非常に有望な結果を示しているとの暫定分析を発表した。「rVSV-EBOV」と呼ばれるワクチンで、現段階では防御率100%を記録しているという。

このワクチンの臨床試験は、国境なき医師団(MSF)がギニアで運営しているエボラ治療センターを試験場とし、世界保健機関(WHO)、ノルウェー国立公衆衛生研究所、ギニア担当局が連携して2015年3月から行っている。主な被験者は、感染者にとって身近な人びとと、感染リスクが高い治療現場の保健医療従事者だ。

MSFも臨床試験に協力し、医師、看護師、救急救命士、検査施設スタッフ、清掃スタッフ、埋葬スタッフら1200人の保健医療従事者にワクチンを投与している。この現場を統括しているMSFの医療ディレクター、ベルトラン・ドラゲ医師に、エボラとの闘いにおける暫定分析結果の意味について聞いた。

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暫定分析の結果は何を示唆しているのですか。

MSFのベルトラン・ドラゲ医師 MSFのベルトラン・ドラゲ医師

「rVSV-EBOV」と呼ばれるワクチンが、エボラから人びとを守るのに役立つ可能性を示しています。サンプル数が少ないため研究と分析を続ける必要はあります。ただ、今回のエボラ流行の深刻さを考慮すれば、このワクチンをエボラへの接触が疑われる人のために使用していくべきでしょう。対象は感染者と接触した人と、治療の最前線にいる保健医療従事者です。

暫定分析の結果は喜んでよいものですか。

エボラとの闘いに役立つ可能性があるワクチンについて、初めて有効性の根拠を得られました。エボラは極めて致死率の高い病気で、すでにあまりにも多くの人が亡くなり、保健医療従事者は大変な焦燥感と無力感を味わっています。

新たな予防策を確立するためにはまだデータが不足していますが、今回の結果は大きな進展です。ただ、ワクチンを接種してから免疫が機能し始めるまでの時期や有効期間は未詳です。今後の研究と分析で見極める必要があります。

エボラとの闘いにおいてはどのような影響が考えられますか。

現在の流行は、比較的小さな感染鎖があちらこちらで散発するパターンになっています。そのため、感染制御にはエボラ対策のあらゆる要素が維持されなければなりません。エボラ症例の管理、隔離、流行地域へのアウトリーチ活動(※)、安全な埋葬の普及、健康教育、心理・社会面の支援、感染者と接触した人の追跡調査などがそれにあたります。

こうした複合的な対策に予防策を加え、感染者と接触した人や最前線の保健医療従事者を対象して普及させることができれば、感染鎖の打破は早まるでしょう。

  • ※ こちらから出向いて、援助を必要としている人びとを積極的に見つけ出し、サービスを提供すること。

このワクチンを最大限の活用するためにはどのような方法がありますか。

最も必要としている人びとのもとに届け、感染の連鎖を断ち切るために活用されるべきでしょう。感染リスクの特に高い人びとに的を絞った取り組みの拡大も急務です。流行地域の各政府には、可能な限り早くこのワクチンの使用を開始していただきたいと思います。

流行国で集団予防接種が行われる可能性はありますか。

エボラ流行は現在、症例が集中しているいくつかの地点に限定されています。この状況を考慮すれば、感染者にとって身近な人びとや治療現場の保健医療従事者にワクチン接種の労力と資源を集中させることが、不特定多数への集団予防接種を開始するよりも、現時点では意義が大きいと思われます。エボラの感染リスクが特に高い人びとに的を絞ることが急務でしょう。

MSFは臨床試験にどのようにかかわっているのですか。

MSFの臨床試験への参加は"まれ"なことです。今回は、エボラ危機の深刻さと、その闘いの最前線にいるという特殊な立場から、参加を決断しました。ギニアでは、第I相試験の段階で1200人の現場スタッフに接種しました。有効性の暫定結果が明らかになった今、MSFはシエラレオネやリベリアでも同様の臨床試験を後押しする計画です。

流行地域でのMSFのエボラ緊急対応にも影響がありますか。

今回のワクチンの暫定結果は有望で、できる限り早く感染リスクが高い集団への使用を実現させるべきです。一方、MSFが続けている追跡調査、健康教育、感染者の隔離といったエボラ対策を維持していくことも大変重要だと考えています。

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