モザンビーク:日常生活に数滴の"理解"を――コレラ対策で水事情を改善

2015年03月30日掲載

コレラに感染してMSFの治療を受ける住民 コレラに感染してMSFの治療を受ける住民

アフリカ東部のモザンビークコレラが流行している。公式発表では、46人が亡くなり、5000人以上が感染している。コレラは水を媒介として感染拡大するため、給排水・衛生環境の向上が欠かせない。

国境なき医師団(MSF)は現地で、コレラの治療に加えて環境改善のサポートも行っている。しかし、技術的な対応を素早く行うだけでは、対策としては不十分だ。では、ほかには何が必要なのだろうか?

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コレラが流行するということは?

MSFの健康教育担当者からコレラの予防法を聞く住民たち MSFの健康教育担当者からコレラの予防法を聞く住民たち

「目的はどっち?水処理装置の設置?それともみんながそれを利用すること?」。MSFの健康教育を担当しているエヴリーヌ・クレイネンが尋ねる。

武骨なゴム長靴、ほこりにまみれたMSFベスト、そして大きな声。「外交使節団」なんてお世辞にも言えない風貌だけれど、少なくともその日の朝は、それぐらい張り切っていた。説明して、話し合って、理解してもらう。地元の指導者たちにコレラのやっつけ方を知ってもらわねば!

テテ市のコレラ治療センター(CTC)には患者が次々に押し寄せている。彼らはシマジ地区の住民たち。都市のスラムが巨大化し、村ほどの大きさになった街区(バイロ)についた地名がシマジだ。

コレラが流行するということは、その地域の飲料水や生活用水が安全ではないこと、衛生設備が不足していること、衛生環境がとても悪いことを意味している。そこで、水・衛生管理専門家(water and sanitation=WATSAN)の出番。略語から、通称ワトサンと呼ばれている。MSFのミハイル・パパゲオルギウもその1人だ。

WATSANと健康教育担当の役割分担

パパゲオルギウは、コレラが流行しているこの地域に何が必要か、もちろん把握している。近くの河川から汲み上げた水を浄化し、3000世帯に無償で給水するための水処理装置だ。

この集約型水処理システムは緊急対応用に設計されている。パパゲオルギウは「作業員が20人ほどいれば3時間以内に設置できます。技術的なことは、実は手早く済ませられるんですよ」と話す。

では、何が課題となるのだろうか?パパゲオルギウは続ける「真の課題は住民の理解度です。水処理装置の正しい利用法、つまりソフト面の確立に時間がかかるのです」

たとえ"世界一"清潔な水を生み出せる装置を設置したとしても、住民の信頼を得られなかったり、誤った使い方をされたりすれば、保健効果は薄まってしまう。そこで、クレイネンたちの健康教育チームの役割が鍵となる。

言うは易く……の現実

パパゲオルギウと、同じくロジスティックを担当しているイアイン・ウォーターマイアーが、地域の汲み上げポンプを点検する。水源を汚している原因かもしれないからだ。一方、健康教育担当のクレイネンは、地元の指導者と交渉中。近所のよちよち歩きの子どもが彼女の足にしがみついてくる。

地域のリーダーはマヌエル・ファクロ。MSFと住民が徹底的に話し合う場を設けることに賛同している。ファクロは「わかりました。みんなを説得してみます」と答えたあと、「ただ、習慣を変えさせるのは大変ですよ」と付け加えた。

コレラは水が媒介する病気なので、簡単な衛生対策をするだけでも感染を抑えられる。汚れた水は飲まない。必ず手を洗う。基本的なことだが、ここでは、言うは易く……なのだ。

公衆衛生をじゃまするもの

基本的な公衆衛生の行く手をさまざまな要因がじゃましている。長年の習慣。対策の現実味。情報の不足。政府職員やNGOスタッフに向けられる不信感。手順を言葉で伝えるだけか、住民の立場を理解しようする意志を示すかという点でも、大きな違いが生じる。

例えば、集約型水処理システムで処理した水を"毒見"してみせなくてはならない。水に加える塩素系消毒剤で病気になったり、その薬剤からコレラがうつったりしないことをはっきり示すためだ。実際に、そういう疑いさえかけられることもあるのだ。

誰だって"水そのもの"が好き

組み合上げポンプが設置されている場所の10m先にはシマジ川が流れている。川幅が数百メートルにも及ぶ大きな川だが水深は浅い。水深がくるぶしほどもない砂州に沿って歩いていく。女性たちが洗濯をしている。素っ裸の子どもたちが川に飛び込んでいる。ロバの荷車が通り過ぎていく。

川床に穴を開け、水を吸い出す。砂が天然のろ過装置になって、地下水はそのものは無色透明だ。しかし、川には地下水のほかにも、外部から流れ込んでくるろ過されていない水やゴミなどなどさまざまなものが混入している。パパゲオルギウが水のサンプルの採取を終え、住民に水の好みについて尋ねる。住民の理解が少しずつ進む。汲み上げポンプの水はわずかに塩味。パパゲオルギウが採取した水は……水そのもの。誰だって"水そのもの"が好きなのだ。

消毒した水が装置から出始めると、ここからは健康教育チームと地域の指導者たちへとバトンがわたる。住民たちの間で話し合いが順調にいけば、習慣や行動に変化が見られるようになるだろう。少なくとも、コレラ流行の危険性を実感している間は。

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