マリ: 「かつてないほど人道援助が必要」――北部の現状とMSFの取り組み

2015年03月09日掲載

MSFのセイディナ・ウセイニ MSFのセイディナ・ウセイニ

政情不安が続くアフリカ西部のマリでは、首都バマコでの銃乱射事件や国連基地への砲撃が相次ぎ、緊張の度合いを増している。国境なき医師団(MSF)は、特に医療が不足しているマリ北部を中心に医療・人道援助活動を続けている。

現地で1年にわたってMSFプログラム責任者を務めたセイディナ・ウセイニに、取り組みと困難について聞いた。

MSFのアンソンゴでの活動背景

マリはアフリカのサハラ砂漠南縁(サヘル地帯)に位置する。国土の3分の2が砂漠で、4~6月の季節は日陰でも最高気温45℃。7~10月は雨期だが、北部は降水量が少ない。主な宗教はイスラム教。

アンソンゴはこの北部のガオ州下4圏の1つで、19の保健区域を擁する。「アザワド解放民族運動(MNLA)」が領有を主張し、2013年に一方的に独立を宣言したアザワド地域の中央部でもある。

住民は、主に農業と牧畜を生業とするソンガイ人とフラニ人が多数派。そのほかトゥアレグ人、アラブ人など。トゥアレグ人は、アンソンゴから50km以内の各保健区域内で移動生活を送っている。

MSFは2012年11月からガオ州で活動を続け、武力紛争の被害者に医療を提供してきた。2014年にその活動を集約したアンソンゴの中央診療所は、域内16万2000人に対応する保健医療施設となっている。

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MSFはいつからマリ北部で活動しているのですか。

MSFが拠点としているアンソンゴの中央診療所 MSFが拠点としているアンソンゴの中央診療所

2012年9月からです。複数の武装勢力が北部を制圧し、さまざまな緊急事態が発生したためです。当初の支援先は4つの地域診療所と、ガオ州アンソンゴ圏の中心地の中央診療所でした。2014年1月以降は中央診療所のみです。

MSFは現地で、住民に無償で良質な医療援助を提供している唯一の医療団体です。マリ政府は人的資源と資金の不足で、北部への行政支援が行き届いていません。

現地での活動の難しさとは。

主因は政治危機です。武装勢力の活動が続き、治安が乱れています。マリ北部の人びとの大半が、ごく限られた機会にしか医療を受けられません。かつてないほど人道援助が必要とされている状況です。

例えば、2014年5月には、キダル州の州都キダルとガオ州メナカが反政府勢力「アザワド解放民族運動(MNLA)」を支持する武装集団に制圧され、住民がパニック状態に陥りました。公務員や一部の入院患者も含め、多くの人がガオ州の州都ガオに避難したのです。

北部の人びとは何を必要としていますか。

アンソンゴの街並み(2013年6月撮影) アンソンゴの街並み(2013年6月撮影)

保健医療、教育、清潔な水の確保などさまざまニーズがあります。地域の診療所は人手と基礎薬品が大幅に不足しています。十分な機能や設備もありません。学校も、生徒や教員を受け入れるインフラが整っていません。整備不良による井戸の劣化で飲用水の調達も安定せず、人びとは不衛生な条件下で水を使っています。

MSFが2014年に現地で行った活動についてご説明ください。

アンソンゴの中央診療所で、マリ保健省職員と連携して活動しています。活動の重点は外来診療、産科、小児科、入院診療、検査室、薬局、ガオ地域病院への重症者の紹介などです。2014年に行った診療は4万7000件以上で、その25%が5歳未満の子どもでした。入院診療の対象は約1600人、分娩介助は約800件、帝王切開は約100件に上ります。

また、マラリアの化学的予防活動や、他団体との協力で子どもの栄養失調への対応も行いました。マラリア対策では、3~5歳の子ども約4万人に、罹患率がピークに達する7~10月の4ヵ月間を乗り切れるようにと、予防目的で抗マラリア薬を配布しています。

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