ボリビア:顧みられない"シャーガス病"を食い止めるには?

2015年01月30日掲載

MSFスタッフからシャーガス病の説明を聞く住民(2012年8月) MSFスタッフからシャーガス病の説明を聞く住民
(2012年8月)

中南米を中心に流行しているシャーガス病。ボリビアでは、国土の6割が感染地域だ。シャーガス病の原因は「クルーズ・トリパノソーマ」という寄生虫。住宅に生息するサシガメの一種にかまれることで感染する。

この種のサシガメは貧困地域で多く確認されている。チュキサカ県モンテアグドは、ボリビアでも感染率が特に高い町の1つだ。国境なき医師団(MSF)はこの町で、対シャーガス病の新規プログラムの準備を進めている。2014年度の取り組みについて、MSF活動責任者のアンドレア・マルチオルに聞いた。

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シャーガス病対策プログラムに関するMSFの援助計画をお聞かせください。

MSFの簡易検査で「陰性」と診断され喜ぶ人びと MSFの簡易検査で「陰性」と診断され喜ぶ人びと

ボリビア政府は、公的保健医療システムにシャーガス病の診療を含めることを計画しています。MSFは、計画されている各プログラムの技術面の支援にあたります。基礎医療からやや高度な医療までを含めた包括的ケア・モデルの確立も支援します。

ボリビアの保健担当局の運営能力が強化され、各プログラムが維持・継続されることで、シャーガス病の診療の機会が確保されることが最終目標です。MSFは、現行の保健医療体制の枠内で、シャーガス病の診療を受ける機会を作ることを目指しています。

また、シャーガス病診療の簡便化も目指します。患者の居住地への移動診療や検査の簡素化を通じて、対策の拡大を図ります。

「包括的なケアを簡便化する」とは、具体的に何を行うのでしょうか。

MSFの医師(右)から治療の説明を受ける患者 MSFの医師(右)から治療の説明を受ける患者

診療手順を簡単で便利にすることです。診療の質を確保するための研修は必要ですが、今と同じ人材・物資でより多くの患者を治療できるでしょう。

診断の簡便化については、「簡易診断検査」で確定診断もできるかどうかを検証する必要があります。簡易検査は現在、活動地でのスクリーニング(治療の必要な患者の選定・選別)にのみ用いられています。現状では、シャーガス病の確定診断は、現行では検査施設に検体を送らなければなりません。この手順が治療の開始を遅らせる原因となっています。

また、治療は何ヵ月も続くため、患者は何度も医療施設に足を運ばなければなりません。この経過観察を適切に行えるように、看護スタッフを研修する必要もあります。さらに、シャーガス病は心疾患・消化器疾患を引き起こすことがありますが、これをシャーガス病の専門医ではなく、一般の医師が診療できる環境も欠かせません。

治療を受けている人はどれぐらいいるのですか。

現行の治療モデルでは、公的保健医療を受診できる人が限られているため、治療を受けている人はわずか4%未満です。

ただ、シャーガス病は長期にわたって症状が表れないことがあり、患者自身が気づいていなかったり、治療を受けようとしなかったりします。そのため、流行地域の政府はシャーガス病を優先課題として取り上げようとしないのです。

MSFは合併症の治療も提供しているのでしょうか。

合併症には主に心疾患と消化器疾患があり、その治療はこれまで見落とされてきた重要な要素です。MSFは2011年に合併症の治療を再開しました。ボリビアは慢性的な心疾患の患者が推定29万人にも達していたのです。合併症の治療も公的医療の優先課題に含めるべきですが、今のところは実現されていません。

このほかに必要な対策はありますか。

MSFはロビー活動や地域・活動地レベルでの提言活動を検討しています。治療を拡大するためには、治療薬「ベンズニダゾール」の入手環境の改善と、流通を阻んでいる"壁"の解消が求められます。

ベンズニダゾールは、高蔓延(まんえん)国で第1選択治療として使われているにもかかわらず、製造している製薬会社が1社のみで、安定した流通が危ぶまれています。新たな製造者が参入し、継続的で確実な生産や価格の適正化を行うための政策決定が求められます。

シャーガス病は全身性・慢性の寄生虫感染症。感染経路は、サシガメの一種にかまれる、輸血(血漿製剤含む)、母子感染、汚染された食物を食べることなど。感染した人の30~40%が5~20年の間に慢性期に移行。その後、心血管や消化器を引き起こすこともある。 中南米21ヵ国で風土病になっており、推計6000万人が感染リスクにさらされている。ボリビアの感染者は推計62万~100万人。慢性期の人はそのうち29万人に及ぶ。

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