カメルーン: 栄養失調治療と心理ケア、コラボで効果アップ

2014年12月10日掲載

栄養失調の孫娘を連れてMSFのもとへ来院した女性自分の夫や孫娘の父親は消息がわからない 栄養失調の孫娘を連れてMSFのもとへ来院した女性
自分の夫や孫娘の父親は消息がわからない

カメルーンの東部で、国境なき医師団(MSF)は2014年初から、中央アフリカ共和国からの難民を対象とした緊急援助を続けている。心の傷に苦しむ人も多く、難民は依然として弱い立場に置かれている。

MSFの活動地は東部州のバトゥリとガルア=ブライの2ヵ所。子どもの栄養失調の標準的な治療に、心理面の支援を組み合わせて提供している。また、家族のための心理ケアも行い、子どもたちの回復を促している。MSFの心理ケア・コーディネーターを務めるミラ・デマッキエ心理療法士に取り組みについて聞いた。

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栄養失調の治療と心理ケアを組み合わせた理由をお聞かせください。

栄養治療施設の周辺に住みつく難民も多い
難民キャンプよりも枯葉や枯草が集まりやすいためだ

栄養失調の子どもの健康回復を促すには、食糧の提供だけでなく、さらに多くのことが求められます。心の健康が栄養失調の経過に影響するからです。子どもの正常な発育には心身の刺激が欠かせません。栄養失調になると、無感情になったり運動機能が衰えたりします。子どもが衰弱して刺激に反応しなくなれば、母親があまり関心を向けなくなってしまう恐れもあります。私たちは保護者と病気の子どもの絆を強め、回復を後押しようと努めています。

本来、心理ケアはどのような状況でも必要とされますが、現時点では、MSFの心理ケアは、カメルーンやケニアのダダーブ難民キャンプのように紛争地域や避難場所で実施されています。カメルーン・東部州の活動地域で、MSFの栄養治療施設が受け入れている患者の大部分が、中央アフリカ共和国内の紛争から逃れて来た難民です。中には家族や友人が殺害されたり、拷問を受けたりする姿を目の当たりにした人もいます。

そんな悲惨な体験が心理的な反応の引き金となり、健康状態の回復が阻まれる恐れもあります。私たちも十分注意しなければなりません。そこで、心理面の支援が助けとなりそうな患者やその家族が同意すれば、個別の心理ケア相談を提供しているのです。

具体的にはどのような活動を行っているのですか。

患者・家族・スタッフが協力して作った赤ちゃんのおもちゃ 患者・家族・スタッフが協力して作った
赤ちゃんのおもちゃ

個別相談のほか、親子参加のグループ・セッションで栄養について説明しています。保護者の大切な役割を伝え、自信を持ってもらうためです。親や保護者は、子どもの成長と周囲の世界への反応を促していく立場にあるからです。

グループ・セッションでは、子どもへの"感情刺激"、つまり、見つめ合いや触れ合いの重要性を伝えています。健康教育チームと連携し、ロールプレイの場を設けて、親子での踊りやお絵かきを推奨しています。

実は、ここに至るまでに難しさがありました。母親や保護者が子どもと一緒に遊ぶ伝統がないのですねありません。愛情の示し方は文化ごとに異なります。子守唄や、授乳、おんぶをして軽く揺することなどがそれにあたります。

体調が安定している子どもには、母親がマッサージをすることも勧めています。とてもいい物理刺激になるからです。言葉を発しない子どもでも、笑顔などの別のやり方で反応できることを伝えています。

心理療法士の行うグループ・セッションは非常に効果的です。母親たちの支え合いから、この活動への参加を望む人の数も増え続けています。

栄養失調の子どもへの効果は出ていますか。

子どもは保護者から刺激を受けることに対しても、受けないことに対しても、非常に敏感です。関心を注がれない子どもには、生きる意志が育ちません。

世界保健機関(WHO)によると、栄養失調の治療中の親子の絆の強化と心理・社会面の支援は、栄養状態の改善にもよい影響を及ぼすと指摘しています。加えて、母親が安心を得られれば、子どもにもいっそう注意を払うようになるでしょう。そして、子どもの健康回復がさらに早まるのです。

治療中の子どもの健康状態が回復するまでに、わずか数回の相談で済むこともあります。親の気持ちも上向き、子どもの感情的欲求に適切に応じ、そのことに喜びを感じるようになります。

その半面、子どもと保護者への心理ケアを伴わない医療活動地では、子どもの栄養治療の完了を待たずに保護者が施設を離れてしまうなど回復が阻まれるリスクが高くなります。

心理ケアと治療を組み合わせ、さらに健康教育を行えば、栄養失調の治療全体を向上できます。この活動には連携が欠かせません。複数のMSFチーム間の素晴らしい一体感を示す事例であり、心理ケア活動の効果と必要性がうかがえます。

公式統計では、2014年1月以降、中央アフリカ共和国からカメルーンには約13万人が避難した。MSFはカメルーン保健省を支援し、2月から、難民の大部分が到着した同国東部で活動している。主な取り組みは、診療、中程度および重度栄養失調の治療、重症患者の各中核病院への紹介、ガルア=ブライ、グビティ、バトゥリの3ヵ所での心理面の支援、給排水・衛生関連など。