キルギス:「怖くて医療施設に来られない人が多くいます」

2010年08月05日掲載

キルギス南部で6月中旬に発生した、キルギス系とウズベク系の住民間の衝突によって、死者は数百人、負傷者は数千人にのぼり、また、依然として緊迫した状態が続いている。国境なき医師団(MSF)は、現地で被害者住民に向けた医療と心理ケアに従事している。

キルギス南部のオシ市でMSFのプログラム責任者を務めるアニャ・ウォルツに話を聞いた。


現在オシ市は、どのような状況ですか?

オシ市のプログラム責任者アニャ・ウォルツ。 オシ市のプログラム責任者アニャ・ウォルツ。

非常に緊張した状態が続いていますが、町を一回りしただけではあまりわからないかもしれません。しかし、主にウズベク系住民の居住区で数百軒の家が焼け残っている様子や、多くの商店が閉鎖されたままなのを見れば、町が深い傷を負っていることを感じられるでしょう。家を焼かれた人びとは、廃墟の中でテントを張って暮らしているか、近所の人や友人の家に身を寄せています。しかし最大の問題は、特にウズベク系の住民が抱いている恐怖です。それらは目には見えませんが、消えることはありません。彼らはしばしば治安部隊の強制捜査を受け、逮捕され、拘置所でひどい虐待を受けています。このような恐怖心に加えて、一部の医療施設の周辺にはいまも武装兵が残っているため、医療を受けに行くことは彼らにとって非常に困難なのです。

MSFは、住民のためにどのような支援をしているのでしょう?

MSFの方針としては、まず住民が必要としている緊急の医療に対応することです。私たちは、恐怖から居住区の外に出られない人びとがいる場所で移動診療を運営しています。また、拘置所から釈放された際、殴打による負傷者がいれば救急医療で対応しています。これに関しては、毎日平均2人の患者がこのような虐待を報告しており、中には、拷問を受けたと報告する患者もいるのです。

またMSFは、医薬品、医療機器、清潔な水を必要としている医療施設に提供しています。さらにMSFの心理療法士は、6月の衝突で家族を失った人、残虐行為を目撃した人、辛うじて生き延びた人など、辛い体験をした多くの人びとに心理ケアを行っています。さらに、より多くの人びとに手を差し伸べるため、現在20人のカウンセラーを対象に研修を行っており、近いうちに被害者の居住区で活動を始められる予定です。最後に私たちは、医療機器や医薬品を、緊急医療を考慮した上で重要な場所に事前に配置し、新たに大規模な暴動が起きた場合にでも迅速に対応できるようにしました。

今後数ヵ月間で、事態はどのように進展すると思いますか?

住民間の緊張は薄らいでいないようなので、まだ全く予測できません。私たちが最も恐れているのは、何千人ものウズベク系住民が、医療従事者や教師などの教養のある人びとも含めて亡命してしまうことです。最も貧しく弱い立場にある人びとだけが取り残されると、医療不足はより深刻になるかもしれません。

この地域では、10月には早くも冬が訪れます。そうなると、壊れた家にやむをえず住んでいる人びとが、いっそう弱い立場に追い込まれるのは間違いありません。そのため、私たちは少なくとも年内いっぱいはここに留まって、住民に援助を行うことを計画しています。

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