カンボジア:結核の治療援助、元受刑者の釈放後も継続を

2012年04月11日掲載

国境なき医師団(MSF)は、カンボジアのプノンペン市内の3ヵ所の刑務所で、受刑者の結核検診・治療などの医療援助を行っている。感染した受刑者は隔離施設へ移し、他の刑務所への移送後や釈放後も治療を続けるようにサポートしている。

MSFは、結核、HIV、もしくはその二重感染の受刑者の診療に取り組んでいる。また、性感染症、皮膚病、デング熱対策、衛生条件の改善など深刻な健康上の問題の改善も援助している。移動診療チームも週1回のペースで巡回し、月平均で約100人を診療している。

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釈放直前に感染、MSF施設でサポート

プノンペン市内の刑務所でMSFの診療を受ける受刑者 プノンペン市内の刑務所でMSFの診療を受ける受刑者

スレイ(仮名、29歳女性)は2010年3月に収監された。MSFのスクリーニング検査を受けたのは1年後の2011年3月。検査結果は、HIV陽性、結核は陰性だった。

MSFのHIV治療を受けていた2011年6月、結核の症状が出始めた。再びスクリーニング検査を受けたところ、結核も陽性との結果が出た。刑務所内で感染したと考えられる。スレイはMSFの結核治療プログラムの対象者となり、釈放される2011年10月まで4カ月間、治療を続けた。

スレイは「結核への感染がわかったときも、刑務所の女性医療スタッフが看護や治療の説明をしてくれたので不安はありませんでした。よく効く薬をもらい、結核菌が身体からいなくなるまで服用を続けなければいけないと言われました」と話す。

治療を始めたころは気分がすぐれず、身体がだるい日が続いた。咳がやまず、発熱や悪寒もたびたびあったという。スレイは「最悪の気分でしたが、治療がどんなにつらくても中断してはいけないと言われました」と振り返る。

MSFはスレイの釈放前に、チャムルカルドンにある自宅近くの診療所を紹介した。この診療所では、MSFがスタッフ研修の援助を行っている。

スレイは「完治するまで治療はやめません。子どももいますし、妹とも一緒に暮らしています。家族を危険にさらしたくないのです。他の患者ができることなら、私もできるはずです」と決意している。

刑務所での医療援助が公衆衛生に直結

刑務所内での診断、説明、治療というプロセスがなければ、スレイは結核に感染したまま地元に帰っていた可能性がある。また、刑務所内で治療を始めていても、釈放後も続ける体制がなければ、薬剤耐性結核に移行していたかもしれない。

刑務所を対象とした医療援助プログラムのコーディネーター、クリスティン・ワガリは「スレイのケースから、受刑者の診療が本人だけでなく公衆衛生の観点からも大変重要であることがわかります」と話す。

MSFは、刑務所や地域の医療従事者を研修し、刑務所内の診療施設の対応能力を強化している。また、受刑者も公的医療システムの対象となるように政府に働きかけている。

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