ウガンダ:エボラを克服することは可能?――MSF疫学者に聞く

2012年08月10日掲載

MSFの疫学者であるポール・ロディ MSFの疫学者であるポール・ロディ

国境なき医師団(MSF)の疫学者であるポール・ロディは、ウガンダ西部でエボラ出血熱が発生した知らせを受け、いち早く緊急対応チームへの参加に手を挙げた。ロディはこれまでにもMSFのエボラ対策活動にかかわっており、エボラを含む"フィロウイルス"の感染制御と治療に関する博士号を持っている。現地の病院や感染者からあらゆる情報を収集しているが、現時点ではデータからは一貫した傾向が見えてこないという。エボラ出血熱を克服することはできるのか。ロディに見解を聞いた。

流行地域のカガディで活動するMSFの緊急対応チームによると、感染拡大を阻止する取り組みを続けており、入院患者数は減少しつつある。感染または感染の疑いがあるケースは計60件。そのうち17人が亡くなった。MSFの治療センターには8人が入院中で、そのうち2人はエボラ出血熱との診断が確定している。(2012年8月8日現在)

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エボラはどこからやってきたのでしょう?

エボラはフィロウイルス科に属し、自然の感染サイクルが明らかになっていません。近年の研究では、オオコウモリが自然宿主である可能性が示唆されています。人間以外の霊長類が感染し、その肉が食用として流通してウイルスが拡散したとも言われています。

確認されているウイルスは5種類です。スーダン株、ザイール株(いずれも1976年に発見)、レストン株(1989年)、コートジボワール株(1994年)、2007年のブンディブギョ株です。ザイール型は病原性が最も高く、致死率は80~90%にも達します。スーダン株の致死率は40~65%、ブンディブギョ株は25%です。

人間への感染が初めて確認された年が1976年で、ザイール(現・コンゴ民主共和国)とスーダンでした。ザイールの最初の流行地域の川の名前から、エボラと名付けられました。

現在、キバレで流行しているのスーダン株です。
今回の流行による致死率はいまのところ30%で、スーダン株としては低い数値です。ただ、解釈には注意が必要です。感染経路、感染量、遺伝の影響、合併症などさまざまな要素に左右されるためです。

どのように感染するのですか?

カガディの治療センターで診療の準備をするMSFスタッフ カガディの治療センターで診療の準備をするMSFスタッフ

急性期の症状が出ている人や亡くなった人の血液や体液に触れることで感染します。ただ、どの程度の時間、どのような接触をすれば感染するのか、正確にはわかっていません。軽い接触ではめったに感染しないだろうと推測している研究者もいます。

医療従事者が患者の体液に長時間触れることは、感染が成立する典型的な条件となります。サハラ以南のアフリカは、保健医療体制が時代遅れだったり、武力紛争が起きていたりします。財政的な援助も乏しく、そうした地域で保健医療に従事する人びとはハイリスクです。

また、亡くなった人からの感染リスクは高く、葬儀前に拭き清める行為が深刻な感染原因になっています。今回の流行では、生後3ヵ月の赤ちゃんの葬儀を手伝った人びとの多くが感染しました。性別による社会的・文化的な役割も関係します。サハラ以南のアフリカでは、亡くなった人の身を清めるのは伝統的に女性の役目です。そのため、女性の感染が目立ちます。

エボラ感染の経路や条件についてわかっていることは限られています。現時点では、流行時には用心しすぎるぐらいのほうがよいと言えるでしょう。

ワクチンや治療法は?

現時点では存在しません。ただ、成果は上がっています。人間以外の霊長類に致死量のザイール型を感染させ、その30分後に治療薬を投与したところ、100%の生存率が得られました。複数の研究で同様の結果が出ています。

この研究は、ウイルスに感染したタイミングがわかっている状況で行われました。そのため、研究室の検査技師や医療従事者が感染した場合であれば有効と言えるかもしれません。

しかし、感染地域の人びとは感染したタイミングを把握していません。病状が進行してから治療を求める人が多いことも事実です。そうしたケースにも対応するため、ウイルスに感染してから一定の時間を経た場合でも治療効果を出せることを目指して研究が進められています。

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