エボラ対策:「感染制御にさらなる尽力を」――MSF看護師が会見

2014年08月05日掲載

MSFの吉田照美看護師(左) MSFの吉田照美看護師(左)

西アフリカでエボラ出血熱の流行が続いている問題で、国境なき医師団(MSF)のエボラ緊急対応チームの一員としてシエラレオネで活動した吉田照美看護師(写真)が、8月5日に記者会見を開き、「MSFは患者の治療を中心に、限界まで対応しています。一方、現地では、接触者の追跡や感染予防の啓発活動などの取り組みが不足しており、(国際社会が協力して)大幅に活動を拡大する必要があります」と報告した。

吉田看護師はシエラレオネのMSFエボラ専門治療施設で活動した。看護業務に加え、看護師約30人の指導・管理や薬局の管理を担当。業務時間は毎日12時間ほどに及び、1日に3回程度、施設内で患者が隔離されている高リスク区域での業務を行った。

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徹底した安全基準のもとで活動

2人1組で高リスク区域に入る準備をする※写真は吉田看護師ではありません。 2人1組で高リスク区域に入る準備をする
※写真は吉田看護師ではありません。

看護業務には、入院患者の飲食・着替え・服薬の介助、清拭、採血など患者の血液・体液に触れるリスクがある業務も含まれる。そのため、MSFの徹底した安全管理基準に従い、全身を完全に覆う防護服・マスク・手袋・ゴーグルを身に着け、施設の入退場の際には念入りに消毒を行った。

また、治療施設内での医療行為中は必ず2人1組で行動することが義務づけられていた。お互いの装備がMSFの安全基準を満たしているかどうかをチェックするとともに、万が一、事故が起きた際にも早急に対処し、感染リスクを最小限で食い止めるためだ。

人びとの恐怖心がMSFに……

なんとか栄養を取ってもらうおうと患者の食事を介助する※写真は吉田看護師ではありません。 なんとか栄養を取ってもらうおうと患者の食事を介助する
※写真は吉田看護師ではありません。

さらに、過労を防ぐ目的もあり、医療行為は1時間以内に限定されていた。吉田看護師は「患者さんが呼んでいる声が聞こえても、1時間経つと外に出なければなりません。もっと人がいればすぐに対応できるのに……と感じたこともありました」と振り返った。

エボラの流行は、シエラレオネで初めてのこと。未知の病気への恐怖からか、「MSFがエボラを注射している」「患者の臓器を摘出して売り飛ばしている」といったデマが飛び交い、MSFのロゴを付けた車両に投石されたこともあった。

一方、「路上でおう吐して苦しんでいる人がいる」との通報がMSFに入り、駆けつけて収容したところ、エボラに感染していることがわかったケースもあった。吉田看護師は「エボラが疑われる場合はMSFに連絡するという意識も根づいている」と感じたという。

「治ります」とは言えない、それでも……

エボラは致死率が25%程度から最高90%程度に達する。しかし、特効薬や予防ワクチンは開発されていない。吉田看護師は「根治治療の方法がないため、『治りますよ』と言えないつらさを感じていました」と話す。

しかし、活動を続ける中で、「『なんとか、がんばってみましょう』『生き残りましょう』と励ましていこう」と心境が変化した。「家族で1人だけ感染した父親には『家族のためにがんばって!』と勇気づけ、親が感染した子どもたちには『私たちがついているから、まず、しっかりとご飯を食べて!』と声をかけていました」

こうした活動体験を踏まえ、吉田看護師は「国際社会のさらなる支援が急務だと感じています」と話す。「エボラの感染リスクは、基本的な公衆衛生活動で大きく下がります。こまめな手洗い、消毒、患者や感染が疑われる人の早期隔離、亡くなった方には手を触れない。そして、少しでも様子がおかしいと思ったら、すぐに医療機関で診察を受ける――日本など先進国では"当たり前"となっていることが、現地では根づいておらず、感染制御を難しくしています」と報告した。

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