カメルーン:ブルーリ潰瘍治療から"慢性創傷ケア"へ発展

2014年07月22日掲載

ブルーリ潰瘍の症状の見分け方を伝える活動 ブルーリ潰瘍の症状の見分け方を伝える活動

カメルーンの中央州アコノリンガ保健区域で、国境なき医師団(MSF)は、12年にわたり展開してきたブルーリ潰瘍(※)の治療プログラムの一部を、保健省に引き継いだ。このプログラムは協力機関・団体の間でも関心が高い。特に、ジュネーブ大学病院は、慢性創傷やブルーリ潰瘍による傷の治療について、医療・介護スタッフの研修を続けていく予定だ。

「私たちは医学史の新たな1ページをつづる過渡期にあるのだと思います」と語るジュネーブ大学医療リハビリテーション科のユベール・ビュアニャ医長と、MSFスイスのエリック・コント元医療ディレクターに同プログラムの展望を聞いた。

  • ブルーリ潰瘍=細菌性の感染症で皮膚がただれる症状が特徴的。国立感染研究所のホームページによると、日本でも1980年に初めて確認され、2013年末までに47人の感染が報告されているという。

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ブルーリ潰瘍治療プログラムは今後、どのように展開されますか。

ブルーリ潰瘍になった腕に包帯を巻いてもらう少年 ブルーリ潰瘍になった腕に包帯を巻いてもらう少年

コント:私がMSFに初参加した2005年当時は、MSFはブルーリ潰瘍のことを認識していませんでした。そこから活動を発展させてきたのです。現地チームの頑張りと、ジュネーブ大学病院チームのご協力のおかげで、非常に質の高い活動になっています。

プログラムの対象を慢性創傷にまで拡大したことで、はるかに多くの人を治療できるようになりました。しかし、真の財産は創傷治療の訓練を受けた士気の高い現地チームです。このチームが強固な関係を築いた首都ヤウンデの複数の大学も、創傷管理に精力的に取り組んでいます。

ビュアニャ:ブルーリ潰瘍と慢性創傷に関する研修コースを初めて行ったのは、2008年のジュネーブ保健高等専門学校でのことです。その後、ヤウンデ大学の主導で、カメルーン人を中心とした講師陣による2回の研修コースが開きました。

今後も2014年内に1回、2015年中に2回と、合計3回の研修コースを計画しています。これからは慢性創傷を優先し、その次にブルーリ潰瘍を扱っていくつもりです。ブルーリ潰瘍はアコノリンガをはじめとする流行地域では問題ですが、カメルーン全域、そして世界的に見ても、慢性創傷ほど症例数が多くないからです。

ヤウンデ大学とジュネーブ大学病院の提携、欧州創傷管理学会(EWMA)、スイス創傷ケア協会を通じて、カメルーンや周辺地域の保健医療従事者に大学修了資格を付与する計画にも期待を寄せています。保健医療スタッフは誰でも慢性創傷を目にするでしょうが、必ずしも自信を持って処置しているわけではないようです。

ヤウンデ大学で既に行われている研修との違いはありますか。

ビュアニャ:現在、カメルーン国内では創傷ケアが教えられていません。私の知る限り、周辺地域で創傷ケア・プログラムが行われているのは南アフリカ共和国だけです。私たちの新たなコースは、履修単位が複数あり、修了資格も付与されます。最初の履修単位は基本ケアで、フランス語で行います。2週目は、さらに高度な創傷ケアの技術を学びます。いずれの履修単位にも、アコノリンガでの5日間の実習を組み込む予定です。

この研修施設の特徴は、周辺地域で唯一、最新の創傷ケアの指針が採用されている点です。ブルーリ潰瘍病棟の研修生は、学んだことをよりよく活かせる実践の場に身を置くことになります。

「最新のケア」について詳しく教えてください。

ビュアニャ:最新のケアには、視認による治癒の段階の見極めや、基礎疾患に応じた処置が含まれます。包帯も最新の機能を持っており、患者は生活しやすくなります。患部にあてがうのが簡単で、毎日交換する必要もないからです。非常に高価だという大きな難点は依然としてありますが、今後の価格低下に期待しています。現時点での価格は、資金に乏しい国では適正価格とは言えません。

コント:通常、人体には傷口を清潔にし、覆い、閉じるために必要な機能がすべて備わっています。慢性創傷には大抵、治癒を阻む要因がありますが、そこで不可欠なのが創傷に関する深い理解です。

カメルーンにおける次のステップをお考えですか。

ビュアニャ:既存の研修コースと、スイス創傷ケア協会およびジュネーブ大学病院人道委員会 をはじめ各方面から寄せられる資金を活用し、研修の提供を維持しつつ、長期的な財源の確保を探っていく予定です。そうすることで、現地チームの一部がアコノリンガ保健区域全域で創傷治療を続けられるようになるでしょう。それから、先ごろ設立されたカメルーン創傷ケア協会の会員がスポークスパーソンの役割を担い、同国の問題意識を高めてくれることを期待しています。

コント:私たちが目指すのは創傷ケアの知識を継続的に深めていくことです。研修コースは刺激的で参加者間のやり取りも多く、著名な教授陣が担当します。

ビュアニャ:創傷ケアへの関心は日々高まっており、専門分野として確立されつつあります。また、創傷は病気の副次的なものにとどまらないという認識も広がっています。疾患に起因する創傷治療は全体の20%に過ぎません。

私たちは医学史の新たな1ページをつづる過渡期にあるのだと思います。ノーベル賞を受賞するようなことはないでしょうが、世界の保健医療の発展に寄与しています。この傾向を特に促したのは、創傷ケア技術への関心の高まりと、世界保健機関(WHO)に技術が採用されたことだと考えています。

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