モーリタニア: 難民の栄養状態が改善、帰還できる日は?

2014年05月21日掲載

アフリカ西部のモーリタニアのムベラ難民キャンプには、隣国マリから到着した人びとが滞在しています。その数は約6万人で、地域人口の約4万2000人を上回っています。

MSFの同国での活動責任者であるフレデリック・マナンツォア・ライは、ムベラの危機が、世界各地の紛争・災害などの陰に隠れてしまうことを懸念しています。水の供給や栄養状態は改善しましたが、人びとは今なお、人道援助に全面的に頼って命をつないでいます。下痢や呼吸器感染は後を絶たず、産科医療も十分ではありません。マナンツォア・ライに話を聞きました。

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ムベラ・キャンプにおけるMSFの活動は主にどういったものがありますか。

MSFのもとで生まれた4つ子の赤ちゃん MSFのもとで生まれた4つ子の赤ちゃん

ここに滞在している人びとが1次医療を受けられているかどうか。これが私たちの最大の関心事です。MSFは、バシクヌー町内の医療施設と、ファサラとムベラ・タウンにある3ヵ所の診療所を運営しています。また、これらの医療施設で受けられるケアについて、より多くの人に知ってもらえるように広報活動を行っています。

ムベラ・キャンプでMSFが2013年に行った診療件数は10万1037件。これは2012年の倍を超えました。医療施設に大幅な改善がなされたことも寄与しています。来院者は増え続けています。MSFの活動と団体に対する信頼が高まっていると受け止めています。

このほか「ホーム・ビジターズ」と呼ばれる地域保健担当を置き、各家を巡回しています。バシクヌーには手術室も開設し、帝王切開や外傷の救命手術も始めました。現在、MSFは1ヵ月あたり約8500件の診療を行っています。雨季には1万2000件に達することもあるでしょう。

難民が抱えるニーズは主にどのようなものですか。

診療件数は、キャンプ内の医療ニーズが膨大で、終わりが見えないことを示唆しています。この一帯は、経済活動が低調で、極度に乾燥した地域です。バシクヌー地区の総人口約4万2000人に対し、難民は5万9101人で、住民人口を上回っています。

サヘル地帯(サハラ砂漠の南縁に沿った一帯)を襲った近年の不作と食糧・栄養危機が、事態を一層、複雑にしています。難民キャンプの人びとの生活は厳しく、人道援助に全面的に頼って命をつないでいます。

"水"が決定的に重要です。供給量は足りています。他の人道援助団体が水の補給を担当しています。一方、MSFの医療施設への来院する理由で、2番目に多い病気が下痢です。これは、たとえ水が足りていても衛生管理が難しいことを示唆しています。

MSFでは、衛生管理に関する知識を広めようと力を入れています。本格的な雨季を前に、病気の流行を未然に防ぐためです。栄養状態は改善してきていますが、それでもまだ、予断を許さない状況です。

1次医療は大きく改善しましたが、特別な注意を要する健康問題や病気があります。下痢を伴う病気や急性呼吸器感染は特にそうです。暑く乾燥した気候、吹き荒れる砂嵐といった環境要因によって悪化するためです。

将来的に最も大きな課題にはどのようなものがありますか。

「MSFの医療援助があってよかった」と話す両親と家族 「MSFの医療援助があってよかった」と話す両親と家族

重大な危機の段階は越えましたが、状況は不安定です。高次の援助を維持しなければ、危機に逆戻りすることは目に見えています。医療を受ける機会、水、衛生環境、食糧、住居についてのニーズは、南スーダンなど他のアフリカ諸国と変わりません。

そうは言っても、ムベラ・キャンプに滞在する人びとが、世界中で起きている大きな緊急事態の陰に隠れて忘れられてしまうのでは……心配しています。そのような事態はなんとしても防がなければなりません。

例えば、栄養状況は徐々に改善しているものの、キャンプ内で重度栄養失調の割合をさらに下げていくためには、活動を長期的に続けていくことが必要です。現在、重度栄養失調での入院は毎月約100件です。2013年は約300件でした。人びとが帰宅できる日が来るかどうか……。現時点では想像しづらく、平和への道のりは長く困難です。帰宅には、地域の安定が条件となります。

4つ子の誕生は、キャンプ内の人びとに対するどのようなメッセージになっていますか。

これらの新たな命は、難民となった人びとの希望の象徴です。同時に、この話は彼らがいかに危うい状況にあるかも浮き彫りにしています。もし医療を受けられなかったらと想像してみてください。お母さんがMSFの施設にたどりついていなかったら…?悪くすれば母親が命を落としていた可能性もあります。

2013年にはMSFは14万7681件の診療を行い、うち10万1037件はムベラ難民キャンプ内、4万6644件はキャンプ外(保健省の公共施設内)だった。2013年の急性栄養失調は、ムベラで3575件、ファサラで292件の計3575件。さらに、4万5000張の蚊帳を配給したことで、マラリア症例数を2012年の6028件から2013年には2285件に減らすことに寄与した。MSFはモーリタニアで1994年から活動している。

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