リビア:国境地帯からの報告「負傷者治療のため早急に入国許可が必要」(3月4日現在)

2011年03月09日掲載

2月中旬にリビアで暴力的な衝突が始まったことを受け、国境なき医師団(MSF)の1チームは東部のベンガジ市で援助活動を行っている。MSFは東部で現地の医療施設を支援するとともに、負傷者を治療するために現在衝突が起きている地域への到達を試みている。

MSFのもう1つのチームは、リビア西側と国境を接するチュニジアのラスジェディールに到達し、医療物資を携えてリビア側に入るために待機している。しかし、このチームに対するリビアへの入国許可は降りず、リビア国内にいる負傷者も出国が許されていない模様である。この地域ではまた、リビア以外の国民である数万人がリビアを脱出して祖国への帰国を待っている。MSFは、この国境地帯で心理ケアを提供する必要があると判断した。

MSFの緊急対応コーディネーター、アイヴァン・ゲイトンに、リビアとチュニジアの国境地帯の状況とMSFの活動について聞いた。

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Q. リビア国内の人道上の状況について何かわかっていることはありますか?

リビアからラスジェディールの国境を越えて避難してきた人びと。(2月28日撮影) リビアからラスジェディールの国境を越えて
避難してきた人びと。(2月28日撮影)

国境を越えてきた多くの人は、負傷者にはリビア出国の許可が降りなかったと話しています。リビア国内の医療スタッフの報告から、負傷者がおり、物資と医薬品が不足していることもわかっています。報告のある症状は主に外傷です。国境のリビア側では負傷者が明らかに出国を阻止されており、医療スタッフと物資がその反対側で止められていることを、非常に憂慮しています。

医療・人道援助団体として、MSFの最優先課題はリビア国内の暴力によって被害を受けた人びとのいる地域への立ち入り許可です。国境のチュニジア側とリビア東部にいるどちらのチームも、リビア国内の被害者のもとにたどりつくため、あらゆる方法を模索しつづけています。

Q.チュニジアとリビアの国境地帯での人道的危機が報じられていますが、現地の状況は?

リビアから避難し、国境地帯で帰国を待っていたエジプト出身者のグループ。 リビアから避難し、国境地帯で帰国を待っていた
エジプト出身者のグループ

リビアを脱出した人びとは非常に困難な状況のさなかにありますが、現段階では、チュニジアとリビアの国境地帯に人道上の危機があるとまではいえません。チュニジアの市民社会と関係当局が彼らのニーズに応える多大な努力を傾けているためです。

しかし、この膨大な人数を受け入れることによって一時滞在キャンプにかかる圧力はますます増大しており、かなり危うい状況です。今後さらに国境を越えてくる人の数が増えていくようなら、このキャンプの受け入れ容量が飽和点に達する恐れもあります。3月3日の時点で9万1000人の外国人労働者がリビアから国境を越えてきました。その大半はエジプトかチュニジアの出身ですが、ほかのアフリカ諸国やアジア諸国から来た人もいます。健康な成人男性が多く、彼らの間では医療スタッフも特に深刻な健康上の問題は目にしていません。

全般的には、リビアから国境を越えてくる人数に見合うようにチュニジアから祖国へ帰国する人の流れをつくるため、大きな努力が払われています。チュニジアは、隣国から来た大勢の人びとを驚くばかりの寛容さで迎えています。私たちは、食糧、水、毛布、薪といった民間からの寄付物資を運んでいるチュニジア人を何百人も見かけました。

Q. 現在MSFは国境地域では何をしているのですか?

国境のチュニジア側の仮設診療所で他の人道援助従事者と話すMSFのスタッフ。 国境のチュニジア側の仮設診療所で
他の人道援助従事者と話すMSFのスタッフ

まず第一に、そしてこれが最も重要な点ですが、国境地帯に私たちの医療スタッフと物資が存在しているということは、リビア入国の許可が降りれば時を移さず活動を開始する用意があるということです。医師や医療物資が入れない一方で、出てくることができずにいると言われている負傷者を、直ちに治療できるよう入国を求めています。

第二に、私たちはこの国境地帯で医療人道援助が必要になった場合に備えて、現地の状況をつぶさに見守っています。MSFの過去の経験からいって、いまは対応が充分だとしても、あらゆるシナリオに備えなくてよいという意味ではないのです。

第三に、私たちは現在ここで活動しているほかの市民社会団体、政府系、非政府系の援助関係者と話し合い、要請があれば彼らの活動を支援しています。

Q. MSFは国境でどのような活動を始めたのでしょうか?

エリトリア出身のケルド(仮名)。リビアでは避難する道中、アフリカ人は傭兵と疑われて身の危険を感じたと語る。 エリトリア出身のケルド(仮名)。リビアでは避難する道中、
アフリカ人は傭兵と疑われて身の危険を感じたと語る

私たちの医療チームは、チュニジアの医療機関や赤新月社と連携して診療を始めました。この連携によって現地の状況にうまく対応できています。これまでのところ、国境を越えてくる人びとの間に重大な疾患はみられません。多いのは風邪、頭痛、胃痛です。現在のところ対応は充分ですが、私たちは状況を見守りつづけます。

一方で、リビアを逃れて帰国の途にある外国人や、現地で活動する他の人道援助活動従事者と話した結果、心理ケアの活動を直ちに開始する必要があると判断しました。国境を越えてきた人の多くは、リビアにいる間にさまざまなレベルや形態の暴力を体験してきています。それに加えて、彼らは現在、祖国に帰るべく待機していますが、近い将来に何が起こるか全くわからない状況に直面しており、それ自体が重大なストレス要因になりえます。このため、私たちは心理ケアプログラムを立ち上げて、国境で診察した医師から紹介されてきた患者にカウンセリングを行う予定です。

このチームには追加の医療スタッフと機材が増強されており、リビア国内にいる負傷者に対する援助を行える、十分な装備と準備があります。

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