カンボジア:結核を探して村から村へ

2014年04月24日掲載

カンボジアは結核有病率が世界第2位の結核大国だ。人口10万人に対し800人が活動性結核の感染者で、毎年約6万人が新規感染するといわれている。しかし現状の保健医療体制では年間2万5000~3万人しか感染者を特定できず、多くの人びとが感染に気づかぬまま、結核を広めている可能性がある。

国境なき医師団(MSF)は、現状の体制を補完するべく、村から村へと自ら出向いて患者を探す「積極的症例探索プログラム」を試験的に導入した。

難しい感染者の特定

結核の進行はときに非常に緩やかで、症状が出ないまま何年も過ぎることがある。仮に活性化して発症しても、それに気づいて病院を受診するまでには、さらに時間を費やす場合もある。患者は知らず知らずに家族や周囲の人に結核菌をうつす可能性があるため、感染者の早期特定と、より積極的な症例の発見活動が重要となっている。

そこで、MSFは感染のリスクが高い年齢層に的を絞り、55歳以上のすべての人を対象とした検査プログラムを構築した。カンボジアでは高齢者の結核有病率が、全人口における有病率の3倍も高いからだ。

MSFが村にやってきた

検査のために病院に集まった55歳以上の人びと 検査のために病院に集まった55歳以上の人びと

プログラムの手順は単純だが、一風変わった実践方法が必要だ。カンボジアで3番目に大きな都市コンポンチャムに近いトゥボン・クモンの町でこのプログラムの責任者を務めるキム・フェデリチは「スタッフ2人で村々を訪ね、55歳以上の人びとにプログラムの主旨、費用は無償であることなどについて説明し、病院に来て検査を受けることを勧めるのです」と方法について説明する。

検査希望者はMSFが用意した送迎用のミニバンで病院へ向かう。そこで胸部X線検査と医師の問診を受ける。医師は結核が疑われる人には喀痰(かくたん)検査を受けさせる。手順は非常に簡単で、4~5時間で100人は検査可能だ。

キエン・ロミエト村のテア・トルスさん(76歳)はMSFの看護師による経過観察を受けている。トルスさんは積極的症例探索プログラムで特定された結核患者だ。

「MSFがやって来て村長と面会し、村長から住民にMSFの検査を受けるようにとの通知があったのです。病院に着いた私に応じた医師から、検査後に結核への感染を知らされたのです。私の気付かなかった結核感染をMSFが見抜いたのです」

町に暮らす人びとは忙しい

市場で結核についての啓もうと検査の必要性を説くMSFのスタッフ 市場で結核についての啓もうと
検査の必要性を説くMSFのスタッフ

地方の集落では効果があったこのプログラムにも、苦手な場所があった。

フェデリチはいう。「のんびりした田舎の集落とは違って、都市部に暮らす人びとは忙しく、検査のため仕事を休んでもらう説得をしなければなりません。これがなかなか難しいのです」

この問題に対処するため、MSFスタッフはトゥボン・クモン市場の雑踏の中、商店を1軒ごと回り、55歳以上の店主や店員を探す。そして結核についての周知、積極的症例探索プログラムの説明、検査に関する情報提供を粘り強く行っている。

明るいきざし

こうした困難はありながらも、このプログラムの潜在能力は数字が示している。カンボジアにおけるMSF活動責任者、ジャン=リュック・ランベールはこう評価する。「発症してから病院に行くという従来のやり方では、結核感染者1人を見つけるために100~150人を検査する必要がありますが、この活動性症例発見プログラムでは、40人ほどを検査すれば、感染者が発見できるのです」

MSFでは、試験導入された積極的症例探索プログラムの実績と費用対効果を評価するためのデータ分析を近く行う予定だ。

フェデリチは今後の展望を語る。「この方法が有効か否かの評価はこれからですが、個人的には、都市圏外でのプログラム継続を望んでいます。今回対象外だった集落にも拡大し、一定年齢以上の人のための定常プログラムになってほしいのです。未検査の人びとを対象に継続できれば、大幅な結核抑止が期待できるでしょう」

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