世界結核デー:正しい知識で感染拡大を防ぐ

2012年03月23日掲載

3月24日は世界結核デーです。結核は、適切な治療で治せる病気です。

薬剤耐性結核の治療には約2年かかる。その間、激しい副作用に襲われることもある。苦しさに耐えかねて治療を中断すると、結核菌の薬剤耐性がさらに強まってしまう。“人為的”な病気の連鎖を断ち切るには、患者や周囲の理解と援助が欠かせない。国境なき医師団(MSF)は、治療や各種ケアに加え、結核への理解を深める啓発活動にも力をいれている。

薬剤耐性結核は通常の結核と同様に空気感染する。結核菌を肺へ吸い込むことが原因となる。握手、食事・飲み物のシェア、寝具や便座を通じた接触、歯ブラシの共有、キスなどでは感染しない。感染しても発病しないケースがあるため、根絶には感染の早期発見・早期治療が重要となる。

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薬剤耐性結核の治療の副作用で……

在宅ケアで薬剤耐性結核の治療の準備をするMSFとアルメニア保健省の看護 在宅ケアで薬剤耐性結核の治療の準備をするMSFと
アルメニア保健省の看護

マリアム・ダビチャンさん(仮名)もその1人だ。治療を始めてすぐに気分がひどくなった。薬を飲むと吐き気がして食欲がなくなり、見たり聞いたりもまともにできなくなる。耳鳴りがして、体はだるく、動悸が遅くなって息苦しい。「2週間後には地獄のような気分になって、このままおかしくなるか、死んでしまうかどっちかだと思いました」と話す。

MSFでは、こうした患者の治療をサポートしている。在宅ケアプログラムでは、看護師が患者の自宅を毎日訪問する。スーパーバイザーのハスミク・ミカラヤン看護師によると、看護師たちは結核への理解を深める活動も行っている。ミカラヤン看護師は「根気のいることです。しかし、長く苦しい治療が続く理由を知り、同時に効果への理解も深まれば、頑張って続けてくれるはず」と信じている。

在宅ケアの対象には子どもも

在宅ケアの対象には子どもも含まれる。大人とは違ったニーズを抱えているからだ。アルメン君(仮名)もその1人。2011年1月に生後11ヵ月で治療を始め、在宅ケアに移行した。

アルメン君の家系は、少なくとも2人の親族が結核で亡くなっている。アルメン君の両親とおじも治療中で、薬剤耐性結核の感染が親族全体に広がっている。

一家が住む村は結核診療所から遠く離れ、公共交通機関もない。両親は貧しく、診療所に子どもを毎日連れて来ることは難しい。しかも、母親は結核に関連した手術を受けるために入院しており、アルメン君の兄弟姉妹はおばが面倒をみている。

一家は当初、治療を不安がっていた。アルメン君がまだ11ヵ月だったからだ。結核についての知識も乏しく、おばは「テレビで見た程度」だったという。MSFから説明を受け、初めて「何をどうすればよいかがわかりました。少なくとも結核は治る、ということも」と話す。

小児用の治療薬が必須

しかし、在宅ケアは予想以上に大変だった。注射の際にアルメン君がもがくため、押さえつけなければならないからだ。さらに、大量の錠剤を砕いて飲ませなければならない。薬剤耐性結核の小児用治療薬は、アルメニアでは市場に出回っていない。必要量を正確に測らなければならないが、成人用しか手に入らないのだ。

MSFは、用量を子ども用に調整し、風味も飲みやすく工夫することで、成人用治療薬を小児用に応用している。そのため、錠剤の砕き方やカプセル剤のカプセルを取る方法、砕いた薬をジャムやヨーグルトと混ぜて飲ませる方法などを現地の医療スタッフに伝えている。

こうした現状に、ミカラヤン看護師は「小児用の混合治療薬か、投薬量を正確に測れるシロップ薬があれば、治療をはるかに進めやすくなります」と指摘する。

幸いなことに、アルメン君は順調に回復している。体重が増え、歩いたり言葉を話したりするようになった。おばは「完全に治るまで治療を続けさせるのは、私たちの務めです。そうしなければ、誰もこの病気から逃れられなくなるのだから」と話す。何世代にもわたる一家の結核の連鎖が断ち切られることを期待している。

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