パラグアイ:「シャーガス病は治療も完治も可能な病気です」

2011年03月08日掲載

パラグアイ、アルゼンチン、ボリビアの3ヵ国にまたがるグランチャコ地域では、シャーガス病が風土病として、まん延している。中南米で最大の死者数を出しているこの寄生虫病は、世界全体では1000万~1500万件の感染症例があり、毎年約1万4000人がこの病気で命を落としている。国境なき医師団(MSF)はパラグアイ保健省と協力し、チャコ地方のボケロン県でシャーガス病と闘うための総合医療プログラムを2010年に開始した。MSFは診断と治療を同一の診療所で受けられることを実現したほか、農村地域や学校へ赴き、診療所に来られない人びとを支援している。

パラグアイの活動責任者を務めていたアンドレア・マルチオルは最近活動から戻り、MSFがこのプログラムを同国で開始した理由を語った。

記事を全文読む

MSFがパラグアイで特にシャーガス病に取り組むことにした理由は?

シャーガス病はパラグアイにまん延しているため、血清有病率*が高く、包括的な取り組みが必要でした。シャーガス病を媒介するサシガメという吸血昆虫の駆除では進展がありましたが、シャーガス病に感染した人びとがケアを受けられるようにする点では、まだまだなすべきことが残っています。

*血清有病率:血清中に測定される病原体のレベル。

チャコ地方に住む先住民のように、社会的に弱い立場にある人びとは医療を受けられない状態にありますが、こうした人道的な観点も、この地方を選んだ重要な理由の1つです。パラグアイは発展を遂げてきた国ですが、地域によって発展の度合いに偏りと格差があるのです。人口の大半が集中している東部では、社会サービスなどサービス全般が提供されています。その一方で、チャコ地方のような西部はこれまで顧みられることがありませんでした。社会サービスをはじめ、あらゆるサービスの利用が困難で、弱い立場におかれた人びとが見捨てられているのが現状です。

MSFのプログラムは、どのような人を念頭においていますか?

MSFは農村や学校に赴き、地域の住民を予防と治療の両面から支援。 MSFは農村や学校に赴き、
地域の住民を予防と治療の両面から支援。

シャーガス病の感染者は、大部分が貧しい農村部に住んでいます。住環境は非衛生的で、居住地域は治安が不安定であり、医療を受けることは非常に難しい状況です。パラグアイの人口の3%がチャコ地方に住んでおり、その半数を先住民が占めています。先住民は孤立を余儀なくされ、この国で最も弱い立場におかれた集団の1つです。しかしMSFの基本原則によって、このプログラムを通してボケロン県の全住民がケアを受けられるようになっています。

住民のニーズは、医療、教育、土地の所有権、住居、社会権など多岐にわたります。MSFは医療団体として、シャーガス病以外の健康問題も常に調査しているため、チャコ地方やパラグアイ国内で問題が起これば、いつでも援助活動を行う体制ができています。

パラグアイでのシャーガス病との闘いにおいて、MSFの付加価値はどのようなものでしょう?

シャーガス病は非常に複雑な病気であり、予防と治療の両面からさまざまな要因に包括的に取り組む必要があります。

予防面では、地域全体の参加を促す戦略の実施、具体的にはシャーガス病を媒介するサシガメという昆虫を住居から駆除するという、媒介虫駆除を基本にしたプログラムを支援しています。また、安全な輸血や妊婦に対するシャーガス病のスクリーニングも、予防面の対策として挙げられます。

的確な診断と治療も、MSFのシャーガス病プログラムの付加価値といえるでしょう。シャーガス病の治療は道徳的見地から不可欠であるだけでなく、実際に可能であるというのがMSFの見解です。MSFはラテンアメリカにおける12年近くに及ぶ経験を通して、感染者は治療によって回復する、治療は合併症の予防に役立つのだということを実証してきました。

また、MSFは啓発活動も行っています。それは、より的確な診断法や優れた治療法を採用し、治療後の回復確認検査を開発する可能性を示して、ケアの質を高め、この病気との闘いを支援することを目的としています。さらに、MSFは保健医療当局と協力して、シャーガス病がまん延する地域の住民が診断と治療を確実に受けられるようにすることにも取り組んでいます。

パラグアイでMSFが抱える課題は?

現地でMSFの活動責任者を務めていたアンドレア・マルチオル。 現地でMSFの活動責任者を務めていた
アンドレア・マルチオル。

繰り返しになりますが、シャーガス病に対する援助活動では、感染者のケアだけでなく、変革につながる活動も常に平行して行う必要があります。包括的なケアへの政府による人員や資金などの充当、病気のまん延する地域で診断と治療にあたるための医師への研修の実施、医療ケアと媒介虫駆除と連携、治療薬の普及、現行の治療法の改善に向けた研究、簡便かつ短時間で結果を出す最低限の訓練で行える診断法、そして信頼性ある治療経過の検査法の普及。これらがパラグアイ全国やチャコ地方における変革の内容です。

関連情報