【母の日】母は強し!アフガニスタンの産科病院で働くママ助産師さんのストーリー

2017年05月12日掲載

5月14日は母の日です。
国境なき医師団(MSF)の活動地では、命がけの出産を余儀なくされるお母さんたちが少なくありません。特に、アフガニスタンはお産による死亡率がアジアで最も高いことで知られています。MSFは、質の高い母子保健をアフガニスタンにある4軒の病院で提供することで、母親と新生児の死亡数を減らすよう取り組んでいます。

お母さんたちの命を救いたい。仕事と育児に奮闘中!

生後2ヵ月の息子を抱くアキラさん 生後2ヵ月の息子を抱くアキラさん

「夢だった助産師として働けて、今本当に幸せです」そう話してくれた女性は、10日前に第3子の産休から復帰したばかり。

アキラさん、29歳。アフガニスタン、バーミヤン州出身の助産師です。首都カブール、ダシュ・バルチ地区でMSFが運営する産科医療施設の助産師チームリーダーとして働いています。

無医地域で育った彼女は、伝統的産婆(※)だった母親の影響で、出産によって亡くなる女性を幼少の頃から数多く目にしてきたといいます。その経験から助産師を志し、同じアフガン人女性にとってお産をより安全なものにしようと取り組んでいます。

教育の崩壊により医療者不足も深刻。MSFはスタッフの育成にも力を入れている 教育の崩壊により医療者不足も深刻。
MSFはスタッフの育成にも力を入れている

仕事熱心な彼女は3人目の妊娠が分かった際、仕事と育児を両立できるか不安に感じていたそう。でも、勤務するダシュ・バルチ病院で自身も出産したことで患者さんのニーズが分かり、復帰後はお母さんたちのために頑張ろうと決意を新たにしました。

  • 医師・助産師などの保健医療専門職とは異なり、独自の経験や師弟制度によって出産介助技術を身につけ、地域での周産期ケアを行う介助者

アフガニスタンの母子を取り巻く厳しい現実

この国では、毎年約4300人もの女性が妊娠中や出産時の合併症で命を落としています。「多くの人が経済的な問題を抱え、産婦人科医にかかる診療費や交通費を賄えません。そのため高額な民間の病院には行かず、自宅分娩を選ぶのです。合併症のリスクも知られていません」とアキラさんは語ります。

カブールへの派遣経験を持つ中村悦子助産師(下記)は、地理的・文化的制約も適切なケアを阻む要因になっていると説明します。「近くに病院がない、交通手段がない、道も悪い。ジェンダー規範により女性の意思だけでは外出できない。どんな症状の時に病院に行くべきかという知識の欠如や、過去に病院でひどい扱いを受けた経験なども、受診・治療・搬送の遅れを招き、まず赤ちゃんの命を、そしてお母さんの命をも奪います」

MSFが全世界で提供する出産介助のうち4件に1件はアフガニスタンで実施しており、2016年には6万6000人以上の新たな命が誕生しました。「もっとお母さんたちの力になりたい」と語るアキラさん。仕事と育児の両立はハードですが、「なんとかなる。女は強しですから」と母の顔に戻ってほほ笑みました。


ママ同士の温かい思いやり(中村悦子/助産師)

写真中央がアキラさん、右が筆者 写真中央がアキラさん、右が筆者

2015年10月よりダシュ・バルチ病院のプログラムに参加。1日に平均50~60人の分娩があり、複数のお産を同時進行で見ていました(1時間に8人生まれたことも!)。分娩台は5台しかなく助産師も足りず、陣痛室・分娩室はいつもカオス状態。日本ではほとんど見たことのない重症例も毎日のように目にしました。

そんな忙しい中でも、新生児がママお手製の洋服や名前が刺繍されたおくるみを着せられて退院していくのは微笑ましくなる光景でした。一方で、なかには経済的事情で産着が用意できず、いつまでも服がない赤ちゃんも。それを見かねた心優しい助産師が「うちの子のお古だけど…」と自宅から持ち寄った服を分娩室にストックしていました。子を思う母の気持ちが分かるからこその愛だなと、心が温まる思いでした。

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