世界結核デー:"薬剤耐性"が世界的な問題に

2017年03月24日掲載

3月24日は世界結核デーです。

国境なき医師団(MSF)が活動地で結核対策に取り組み始めてから30年以上が経ちました。現在では世界のNGOの中でも最大級の結核治療提供者となっています。

特に、治療薬が効かなくなった薬剤耐性結核の患者の治療に力を入れています。「薬剤耐性」には段階があります。最初の治療薬(第1次選択薬)が効かないケース、第2次選択薬も効かないケース、そしてほぼすべての治療薬が効かない超多剤耐性結核……。

治療には重い副作用がつきまとい、視覚や聴覚に障がいが残ることもあります。それでも、患者もMSFも決してあきらめず、目の前の目標を1つ1つクリアしていくことに力を注いでいます。世界結核デーをきっかけに、こうしたできごとがあること、そして、日本に住む私たちにとっても他人事ではないことを知ってください。

数字で見る結核/MSFの取り組み

世界保健機関(WHO)の統計によると、2015年には1040万人が結核にかかり、180万人が亡くなりました(HIVとの二重感染者40万人を含む)。

結核で亡くなる人の95%以上が低所得国と中所得国の人びとで、インド、インドネシア、中国、ナイジェリア、パキスタン、南アフリカの6ヵ国で全体の60%を占めると報告されています。

結核の患者数が多い国(2014年)

結核の新規患者数とMSFの治療件数(2015年)

  世界 日本 MSF(治療件数)
結核の新規患者数 1040万人(小児患者:推計100万人) 1万8280人 1万8100人
多剤耐性結核の患者数 48万人 48人 2000人
結核の死亡者数 180万人 (小児患者:推計17万人) 1995人  
  • 出典:WHO、厚生労働省、MSFの各統計
  • 日本の2015年の患者登録総数は4万4888人

世界人口の3割が結核?

結核に感染している人は、世界人口の3割に達するとみられています。人口を70億人としたとき、21億人が「結核患者」ということになるのでしょうか?実は、結核菌に感染していても必ず発病するわけではありません。結核感染のメカニズムと対処法をアニメーション動画でお伝えします。

世界結核デー:患者たちはなぜ手話を習うのか?――スワジランド

アフリカ南部の小国、スワジランド。この国では結核が深刻な社会問題となっています。通常の結核だけでなく、複数の治療薬が効かなくなる多剤耐性結核や、HIVとの二重感染が広がっています。

結核の闘病はつらく、長期間にわたります。それでも、患者は生きる希望を失わず、時には笑顔を見せて毎日を乗り切っています。そんな日常を写真で切り取りました。

アフリカ南部の小国、スワジランド。この国では結核が深刻な社会問題となっています。通常の結核だけでなく、複数の治療薬が効かなくなる多剤耐性結核や、HIVとの二重感染が広がっています。

国境なき医師団(MSF)は各地にスタッフを派遣し、保健省と連携して、診察・治療を無償で提供しています。また、都市部から遠く離れた地域へも足を運び、患者を見つけて診察を受けるように勧めるアウトリーチ活動も行っています。

結核の闘病はつらく、長期間にわたります。それでも、患者は生きる希望を失わず、時には笑顔を見せて毎日を乗り切っています。そんな日常を写真で切り取りました。

「闘わずしてこの世を去るつもりはありません」――患者となった医療者のブログ

ブログを書くのはこれが最後だと思います。

今月(2017年3月)は本当につらいものになるでしょう。目はまだよくなっていません。最悪なのは、もう視力の回復は望めないかもしれないと自分でもわかっていることです。呼吸器科医はまた治療計画を見直さなければならなくなるでしょう。そうなったとしても、服薬はとても大変です。

ストレスで体も心も壊れました。胃の調子は毎日悪くなっていくばかりです。コーヒーを吐き出してしまうこともよくあるんです。以前よりも、吐血と腹痛が増えました。よく眠れません。頭痛でほぼ一日中、寝たきりです。口にするものはほとんどなんでも、吐き出してしまいます。

でもほかにどうしようもありません。とにかく薬をのみ、家族や周りの人を結核菌から守らなければならないのです。

このブログに書いていることは、私が、患者として、また医療従事者として、考えたことです。不公平もいいところです。だって、命をむしばんでいく薬をのみ、目は危険にさらされ、胃を悪くし、心も人生もめちゃくちゃにされたんですから。私には選択の余地がない、という意味で不公平だと思うのです。

最悪の治療を続けるか、緩和ケアにとどめて残された時間を家族と友人に囲まれて目いっぱい楽しむか。多剤耐性結核の末期患者が究極の選択を迫られる姿を見るにつけ心が痛みます。

一方、医療従事者としての私は、呼吸器科医の大変さもわかります。容体を患者に説明することは並大抵の苦労ではないでしょう。結核で死ぬことと、耳が聞こえなくなったり、目が見えなくなったり、気が狂ったりするかもしれないけれど助かることと、どちらを選びますか、と聞かなければならないのですから。

医師は患者がひどい副作用と闘っている姿を目にしています。それでも、人にうつさないようにと、無理にでも薬をのむように指示しなければならないのです。つらいに違いありません。患者が苦しんだり、亡くなったりする姿は、医師にとってもとてもつらいことなのです。

多剤耐性結核は間違いなく最低の悪夢でしょう。他のどのような病気よりも残酷だという気さえします。HIVは感染しやすい病気ですが、せきやおしゃべりでうつったりはしません。がんは命を脅かす病気ですが、結核のように簡単に感染する病気ではありません。

結核の新ワクチンが必要です。新しい治療薬も必要です。そうでなければ、結核菌はもっともっと多くの命を奪っていくでしょう。

プロフィール
私は30代前半の女性で、医療従事者として総合病院に勤めています。結核に"出会った"のは7年前、私は当時、医学生でした。呼吸器科病棟の回診を終えてから2週間後、せきが出始めました。呼吸が苦しくなり、レントゲンを撮ったところ、結核だとわかりました。通常の結核治療に必要な分の薬をのみ、完治したと思いました――が、実際には、多剤耐性結核菌を作り出しただけだったのです。今は多剤耐性結核用の治療薬をのんで闘っています。闘わずしてこの世を去るつもりはありません。

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