APEC首脳会議:TPP交渉参加国は医薬品の普及を妨げる政治的取引の拒絶を

2013年10月03日掲載

インドネシア、バリ島で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が重要議題となり、その中で米国が一部参加国に知財関連条項の特例扱いを提案すると予想されている。国境なき医師団(MSF)は、特例扱いの提案は医薬品の普及・流通を改善するものではないとし、各国政府が交渉において、医薬品入手の障壁となるような政治的な取引を控えるよう求めている。

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薬価の高止まりを助長する有害な条項案

TPP交渉で米国が提案している知的財産権関連条項案は、過去に米国が開発途上国や先進国を対象としたいずれの通商協定案の中にも先例を見ない有害なものだ。それは多国籍製薬企業に、業界で一般的な「エバーグリーニング」という手法を用いて、医薬品特許を延長し、専売状態を長期化させる複数の道筋を後押しするものだ。ジェネリック薬(後発医薬品)による価格競争も阻害されるため、薬価を長期にわたって高止まりさせることになる。

MSF必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクター、マニカ・バラセガラム医師は、「手ごろな価格のジェネリック薬があったおかげで、これまで何百万人という命が救われてきました。しかし、こうしたことがいずれ立ち行かなくなるでしょう。TPP交渉で保健衛生までもが取引の対象となっているからです。米国政府が交渉参加国に協定締結を迫っていますが、何百万人もの命を強硬な政治的駆け引きに巻き込んではなりません」と訴える。

特例扱いの提案は、根本的な解決策ではない

協定交渉は最終段階に入っており、各国政府は2013年内の協定締結を迫られている。数ヵ月にわたり、当初提案への不支持に直面してきた米国政府は、経済水準の低い交渉参加国を一定期間、限定的に一部規定の対象外とする、知的財産関連条項の特例的取り扱いを提案する可能性もある。しかし、特例扱いとなる国にも、国際貿易法の要求するところよりはるかに厳格な知的財産関連条項そのものは適用される。その国際貿易法が既に、途上国の購買力に適した医薬品の供給を圧迫しているのだ。さらに、特例の認められないTPP協定締結国では大勢の貧しい人びとが、必要な薬の法外な価格に直面することになるだろう。

米国のMSF必須医薬品キャンペーン責任者、ジュディ・リウスは、「米国のこの新たな提案に惑わされてはいけません。経済力の乏しい交渉参加国の薬の流通にTPP協定が及ぼす悪影響の軽減を目指すものではありますが、MSFと数百万の人びとが依存する安価なジェネリック薬の市場投入を妨げる有害な協定だという点は変わりないのです」と指摘する。

また、製薬業界は、米国政府に生物製剤を対象とした12年間有効のいわゆる「データ独占権」のTPP協定盛り込みを求めるロビー活動を展開している。実現すれば、対象となる薬剤の安価なジェネリック版の登場はさらに遅れるだろう。

リウスによると、「米国がTPP協定において、革新と薬剤の普及・流通の保護を真剣に捉えているのであれば、知的財産保護の厳格化など提案しないはずです。知的財産関連規定の厳格化は専売状態を生み出し、先進的な企業や研究者による医薬品の新規開発や改良が抑制され、革新も阻まれます。その一方で、一部の製薬企業は、人びとの保健需要を真に満たす新薬の開発よりも、既存薬の専売状態維持を事業の中心に据えるようになるでしょう」としている。

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