ハイチ:コレラ患者を取りまく悲惨な状況

2013年03月14日掲載

ハイチのコレラ治療が資金・物資の不足で機能不全に陥っている。助かるはずの命が失われ、間もなく到来する雨季には流行拡大の恐れもあると、国境なき医師団(MSF)は警鐘を鳴らしている。

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死亡率は平常の4倍に

同国アルティボニット県、ニップ県、南東県、北県の公立医療施設でMSFが先ごろ行った調査では、資金不足のため、2012年中にコレラ治療の質が著しく低下したことがわかった。

「コレラ治療センター(CTC)には、何ヵ月も給与を支払われていないスタッフがいます。メンテナンスの不備と度重なる医療物資の枯渇で、インフラや設備も消耗しています。その結果、コレラの流行抑止に不可欠な衛生面での予防措置ももはや実践されていません。患者が置き去りにされ、治療を受けるためにお金を払わなければならないこともあり、看過できません」。そう話すのは、2012年12月下旬にアルティボニット県の調査に加わったMSF副医療コーディネーター、ママディ・トラオレ医師だ。

北県では2012年後半以降、コレラによる死亡例が増えている。調査活動の指揮を執ったホアン・アルナンは、「複数のCTCで死亡率が4%を超えています。平常と判断される水準の4倍の数値です。これは、治療が不足していることの表れです。コレラ治療は迅速に行いさえすれば、難しいものではありません。ただ、患者50人にわずか2人の看護師で対応しなければならないことさえあるのです。良質な治療など、とても保証できません」と訴えている。

雨季が来る前の対策を急げ

ハイチ大地震の震源地に近いレオガンにあるMSFの治療センター
(2013年1月撮影)

ハイチ保健省による2022年までのコレラ根絶計画に、22億米ドルを融資するための呼びかけを国連が開始したのが2012年12月。しかし、依然として同計画への融資は十分ではなく、現在も多くのコレラ患者が適切な治療を受けられずにいる。

「このところ、コレラは、今後10年間で解決すべき開発上の課題の一部と見なされているようです。ただ、現状ではやはり緊急医療援助が求められます。ところが、その緊急医療援助に必要な資源が先細りを続けているのです」ニューヨークのMSF活動統括責任者、ダンカン・マクリーンはそう話す。

CTCの悲惨な状況は、やがて来る雨季とともにピークを迎えるだろう。2011年と2012年は、雨季にあたる5~11月の間に、各地で急速に流行のピークに達した。MSFも限られた人的・物的資源で対応を行っている。

ハイチにおけるMSFの活動責任者、オリバー・シュルツは次のように訴えている。「給排水や衛生設備の改善とワクチン接種を通じた予防は確かに長期的な解決策になります。しかし今はまだ、患者を治療し、その命を救うために十分な資金と物資が求められているのです。現段階で最優先事項とされるべきは、CTCの拡充と、速やかに警戒・対応のできる体制の確立です。ハイチ政府と国外の資金援助国・機関は、雨季までに既存の治療施設で人員・設備が充足するようにしなければなりません。"雨季までに"とは、つまり"できる限り早急に"ということです」

コレラの流行が確認された2010年10月下旬以降、MSFは総額約6千万米ドル(約57億6000万円)を投入し、約20万人を治療。死亡率も1%未満に低下した。2010年1月12日の大地震被災地を除く地域では、2011年内にハイチ人スタッフの研修と物資・設備の寄贈を完了し、各CTCの管理運営を段階的に同国保健担当局へと引き継いだ。一方、首都ポルトープランスとレオガンではコレラ治療を継続し、2012年は2万3000人の患者を治療している。

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