インド最高裁がノバルティス社の訴えを棄却――安価な医薬品の普及流通を保護し、特許付与の乱用防ぐ判決

2013年04月02日掲載

スイスの製薬会社ノバルティスの7年に及ぶ訴訟で、インド最高裁判所は同国の特許法を擁護するという歴史的な判決を下した。国境なき医師団(MSF)は、開発途上国に住む患者たちの薬の入手を保護する大きな勝利としてこの判決を支持する。

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公衆衛生のセーフガード守られる

MSFインターナショナル会長 のウンニ・カルナカラ医師は「最高裁の判断は、インド製の比較的安価な薬を頼りにしている途上国の何百万人という患者と医師、そしてMSFのような医療援助団体にとって、大きな救いとなります。必須医薬品への特許付与の可能性は低減し、ノバルティス社をはじめとする多国籍製薬企業にとっては、インド特許法への攻勢を控えるべきだという強い警告となるでしょう」と述べている。

ムンバイで行われたノバルティス社に対する抗議デモ
(2011年12月撮影)

インドは通商に関する国際ルールに従い、医薬品への特許付与を既に開始しているが、特許法にはセーフガードが設けられている。同法第3条(d)もその1つで、企業による特許制度の乱用を防ぎ、独占状態を引き延ばすための、既存薬の改変に対する特許取得を抑止するものだ。

ノバルティス社が最初にインド政府を相手取り訴訟を起こしたのは2006年。同国の2005年特許法を巡るもので、同社はインド法の規定よりも広範な特許保護を自社製品に対し望んだ。チェンナイ高等裁判所における初期の審理でノバルティス社は、インド特許法が世界貿易機関(WTO)の定めた法規に違反し、同国憲法にも背くものであると主張。2007年に敗訴したノバルティス社は、間髪をいれずに最高裁に上訴した。この上訴の狙いは、法解釈に揺さぶりをかけ、骨抜きにすることだった。そうしたノバルティス社の申し立ては、2013年4月1日、すべて棄却された。

インドにおいてMSFの必須医薬品キャンペーン責任者を務めるリーナ・メンガニーは「公衆衛生の保護条項である特許法第3条(d)へのノバルティス社の攻撃は失敗に終わりました。インドの特許当局は今回の判断を、法の厳密な適用が求められ、不適切な特許申請は却下すべきという、明確な号令として受け止めなければなりません」と話している。

製薬企業は、問題解決の担い手に

ノバルティス社による特許法第3条(d)への再三の法的攻勢は、インドにおいて既存薬も対象となる特許保護の増加を狙ったものであったが、医療革新のための資金調達というより大きな問題に対して、今回の判決が持つ影響に、同社は懸念を示している。

カルナカラ会長は「現在の医療革新の資金源は、独占状態に支えられた高い薬価です。そして、その犠牲となっているのが、高い薬価を払うことのできない途上国とその国民です。製薬業界は、ルールをねじ曲げて既存薬の特許保護期間延長を求めるといった制度の乱用ではなく、真の革新にこそ注力すべきでしょう。また、各国政府は、適正価格での流通につながるような薬品開発の枠組みを作り上げるべきであり、この点については今後、議論していかなければなりません。MSFはノバルティス社に、問題の原因となるのではなく、問題解決の担い手となることを求めます」と述べている。

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