米当局、新しいHIV治療薬「ドルテグラビル」を認可――開発途上国への導入時期に疑問残る

2013年08月14日掲載

米国食品医薬品局(FDA)が2013年8月13日、HIV治療の新薬である「ドルテグラビル」を認可した。これを受け、国境なき医師団(MSF)は、この有望な新薬が途上国で入手可能となる時期については疑問が残ると指摘している。

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中央アフリカ共和国ボサンゴアの病院でHIV/エイズの検査を
受ける患者(2013年6月撮影)

これまでの研究では、強力なインテグレーゼ阻害薬ドルテグラビルがHIVウイルス複製の阻害に極めて有効であり、副作用も少なく、耐性獲得も阻むことが報告されている。同種の医薬品や、広く利用されている既存治療薬と比較しても多くの利点が認められ、今後ドルテグラビルが富裕国で第一選択薬に含まれる可能性は大きい。しかし、この治療薬が開発途上国の人びとにも入手可能となるかは定かではない。製造者であるヴィーブヘルスケア社(ViiV Healthcare: ファイザー、グラクソ・スミスクライン、シオノギ製薬による合弁会社)が、低価格での提供に対して積極的な姿勢を示していないからだ。

MSF必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクターであるマニカ・バラセガラム医師は、「これまでの研究でドルテグラビルは、開発途上国での利用において顕著な優位性を示しています。しかし、治療を提供する側としては、最大の懸念はその価格設定です。いかに有望な新薬であっても、必要としている人びとに手頃な価格で提供しなければ、人命を救出することはできません」と話す。

ヴィーブヘルスケア社は、開発途上国におけるドルテグラビルの導入について憂慮すべき見解を示している。同社は「段階的価格設定」の実施を示唆、それによると、この治療薬を必要としている人びとには入手困難となり、ジェネリック版の利用と販売は67ヵ国に制限され、HIVと共に生きる人びとが何百万人も生活する低・中所得国は除外される見込みだ。

MSF必須医薬品キャンペーンの政策分析ディレクターであるロヒト・マルパニは、「ヴィーブヘルスケア社の事業戦略の結果、ライセンス契約から除外されている国にとってドルテグラビルが入手困難な価格になることを強く懸念しています。過去の経験では、除外国は法外な価格を支払い続けることになるのです」と指摘する。

ヴィーブヘルスケア社には、治療薬を必要としている人びとがドルテグラビルを手頃な価格で入手できるよう、当該薬の登録や低・中所得国でのジェネリック版の流通促進などの方法で積極的な対策を講じることが求められている。ドルテグラビルをより安価に提供するための解決策の1つとして、医薬品特許プールのライセンス契約があげられる。そのためには、すべての低・中所得国を包括し、製造国や原薬の供給元に関する制約を撤廃することが必要だ。

「ドルテグラビルが高額になる国では、より安価な商品の生産・輸入が可能になるように、公衆衛生のセーフガード措置や国際貿易協定の柔軟性などを最大限活用することで特許の障壁を乗り越える必要が出てきます」とマルパニは語る。

開発途上国に暮らす1000万人余りの人びとに抗レトロウイルス薬治療を提供するためには、手頃な価格のHIV治療薬が必須だ。かつて年間一人当たり1万米ドル以上であったHIV治療薬の価格を過去10年間で99%下落させ、現在の約120米ドルという低価格を実現させたのは、インドなどにおけるジェネリック版HIV治療薬生産者の競争によるものだ。しかし、特許によってジェネリック医薬品の生産は阻まれ、新薬の価格は入手不可能なほど高額なままだ。救済療法は最貧国であっても1人あたり最低2000米ドルかかり、既存の第一選択薬の約15倍だ。中所得国では、さらに高額となっている。

現在MSFは、21カ国で28万5000人の患者に抗レトロウイルス薬治療を提供している。

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