シリア・東グータ:砲爆撃の被害多発で医療サービスの対応は限界に

2017年11月28日掲載

シリアの首都ダマスカス近郊にある東グータ地域。包囲下にある同地域ではこの2週間、激しい砲爆撃により多数の死傷者が出ている。国境なき医師団(MSF)は、医療体制を維持するため、紛争当事者に対して、医療施設の保護を規定する国際人道法の順守、ならびに緊急医療物資の搬入の許可を求めている。

死傷者の25%は女性と子ども

MSFは東グータにスタッフを置いていないが、現地の病院・診療所を支援している。11月14日から26日にかけて、支援先病院5軒で合計576人の負傷者が治療を受け、69人の死亡が確認された。死傷者の25%は女性と15歳未満の子どもだ。MSFの支援先でない医療施設の状況は不明のため実際の死傷者数はさらに多いものと推定される。

MSFオペレーション・ディレクターのベルトラン・ペロシェは、「緊急医療がますます必要となる一方で、東グータの医療サービスは対応能力の限界を超えています。人びとが危険を冒して病院にたどり着いても、爆撃への懸念から病院そのものが十分機能していないこともありますし、多くの病院で医療物資が不足していますが補充は困難です」と話す。

東グータでは砲爆撃の被害や恐れから、稼働する医療施設が減少している。カフル・バトナの町の中核病院は2013年以来MSFがシリア国外から支援していたが、11月20日に2発のロケット弾に被弾、貯水槽と太陽光発電パネルが損壊した。入院病棟にも被害が及び、救急車1台が使用不可能になった。幸いスタッフと患者に重傷者はでなかったが、病院は最低限の修復のために2日間の休業を余儀なくされた。その他、MSFが支援する野外病院2軒、診療所1軒もスタッフと患者の安全を考慮し、11月15日から18日まで救急以外の業務を一時停止した。

民間人と医療施設の保護、医薬品供給の許可を要求

MSFは東グータ地域21ヵ所の医療施設を物資面で支援し、緊急時に備えて現地での備蓄も進めてきた。しかしその備蓄も急速に消費されつつあり、現在血液バッグ、ブドウ糖の点滴バッグ、検査用手袋、消毒薬、小児向けの経口抗生剤などの備蓄がほとんどないか、既に枯渇している。MSFが連絡をとっている医療施設の大半が追加の物資が必要だと報告している。

ほぼひっきりなしの砲爆撃に巻き込まれることへの不安が広がり、医療の必要な人も、医療従事者も自宅を出られない状況が続く。患者の多くは治療を受けられず、MSF支援先の医療施設でも人手不足が進む。

MSFは全ての武装勢力に対し、国際人道法に則り、民間人と病院や住宅地などへの加害を避けるため、しかるべき警告を行うよう要請。合わせて、東グータへの医薬品供給を担える機関・団体に対し、シリア政府が速やかにその供給を認めるよう求めている。

関連情報:「病院を撃つな!」キャンペーンサイト

MSFは11月のダマスカス市内の反政府武装勢力による砲撃について把握はしているものの、政府統治地域での活動は未認可のため、現場の状況やニーズを伝える情報は得られていない。

MSFはシリア北部で5つの病院と3つの移動診療チームを直営するほか、5つの提携医療施設を支援している。また、MSFスタッフ自らが立ち入れない地域の約70施設を遠隔支援している。MSFは、安全と公平について確約を得られていない「イスラム国(IS)」の支配地域と、活動認可が現在も得られていないシリア政府統治地域では活動できていない。政治的圧力からの独立性を守るため、シリアでの活動にはどの国の政府からの資金も投入されていない。

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