世界初の結核会合:速やかな診療の普及拡大求め、3万人の署名を提出

2017年11月17日掲載

スワジランドでXDR-TB患者を訪れるスタッフ
薬の副作用で聴覚を失い会話は手話で行う

ロシアのモスクワで世界初となる“結核に関する閣僚級会合”が開催された。国境なき医師団(MSF)とストップ結核パートナーシップは、開幕に先立つ11月15日、結核の診断と治療の速やかな普及拡大を呼び掛ける嘆願書を、世界保健機関(WHO)事務局長と各国保健相に提出した。

嘆願書は、結核高まん延国の政府が、結核治療と検査を最新のWHO基準に則した形で実践するよう求めるもので、期限を来年3月24日の世界結核デーまでとしている。提出のセレモニーでは、2年に渡る多剤耐性結核(MDR-TB)治療を克服したアルメニア出身の元患者マリアム・アヴァネソヴァさんが、世界120ヵ国から寄せられた3万筆余りの署名とともにWHOのテドロス・アダノム事務局長に手渡した。

「全ての国で早期の検査と治療を」

結核は今も世界中で多くの人命を奪う感染症で、2016年の死亡例は170万件。WHOの最新の『世界結核報告書』によると、いずれの型の結核についても大半の国で診療の普及が滞っているという。2016年は410万人を超える感染者が未診断ないし未報告で、MDR-TB患者のうち治療を始めたのは5人中1人に過ぎず、さらにその半数余りが回復したにとどまる。

MSFとストップ結核パートナーシップが共同で、世界の結核被害の約4分の3を負担する29ヵ国の対策と実践を調査した報告書によると、結核感染者の40%は診断に至っていない。29ヵ国中、迅速分子検査技術の「Xpert MTB/RIF」を結核診断に広く導入済みなのはわずか9ヵ国(※)。薬剤耐性結核(DR-TB)の新薬および新治療法は、MDR-TB感染者で半数、さらに致命的な超多剤耐性結核(XDR-TB)感染者で28%しか治癒しない従来の標準治療よりも良好な結果を示している。調査対象国の79%が国の指針に新薬ベダキリンを、62%がデラマニドを導入した(※※)ものの、2016年の世界全体では、この2つの新薬の恩恵にあずかるべき人のうち実際に利用できた人は5%を下回る。

※ アルメニア、ベラルーシ、ブラジル、ジョージア、南アフリカ共和国、スワジランド、ジンバブエ
※※ WHOは 2018年前半にデラマニドの実用に関する新たなエビデンスを精査する予定。

MSFとストップ結核パートナーシップが発行した東欧と中央アジアにおける結核に関する最新の報告書では、調査対象8ヵ国(※※※)ではDR-TBの流行が広がり、結核全症例のうち半数がMDR-TBで、毎年のDR-TB感染者の増加率は20%超を示した。また対象国の75%が時間のかかる旧来の検査方法に替えて、迅速分子検査の導入策を採用済みだが、広く実用化している国は半数に過ぎない。2015年に調査対象地域で診断に至らなかったDR-TB感染者は4万6000人ほどとみられる。

※※※ アルメニア、ベラルーシ、ジョージア、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタン、ウクライナ

「MDR-TBから回復した後も、この病気のために戦うことを決めました。診断が遅れたり薬が効かなかったりして亡くなる人がいるのも、2年間毎日20錠の服薬の副作用がつらすぎて脱落する人がいるのも見過ごせないと思ったからです」アヴァネソヴァさんは壇上で述べた。

「全ての国の政府に向けて、必要な人が1人残らず早期に検査と治療を受けられるよう足並みをそろえてほしいと訴えかけたいです。現場での速やかな行動こそ、私が今回の会合に望む成果です」

MSFの結核感染者の治療経験は30年に及び、2016年はMDR-TB感染者2700人を含む2万人余りの結核患者を治療した。ストップ結核パートナーシップとその1600のパートナー組織は団結し、110ヵ国以上で結核との闘いに変化をもたらしている。

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