RCEP:日韓政府にジェネリック医薬品やワクチンの普及を妨げる知財条項の取り下げを要求

2017年10月20日掲載

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定の交渉参加16ヵ国が、韓国の仁川で会合を行っている。国境なき医師団(MSF)は、日本と韓国両政府に対し、割安なジェネリック医薬品やワクチンの世界的な普及を阻む知的財産条項の提案取り下げを求めている。

日韓の患者にとっても不利益

RCEPで両国が提案する知的財産保護の拡大案は、世界貿易機関(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の要求を上回るもので、「TRIPSプラス」と呼ばれる。これは、薬やワクチンの特許の有効期間を引き延ばし、「途上国の薬局」と呼ばれるインドなど各国で薬の独占状態を認める薬事制度を生み出しかねない。また、ジェネリック医薬品メーカーの市場参入を遅れさせ、薬とワクチンの薬価引き下げ競争を阻害する恐れもある。

MSFは世界各地の活動現場で、HIV感染症、薬剤耐性結核(DR-TB)、C型肝炎の治療薬や、肺炎ワクチンなどに独占的な薬価設定がされ、薬を必要とする人びとに適切に薬が届かなくなる状況を目のあたりにしてきた。

MSFの必須医薬品キャンペーンで東アジア地域責任者を務めるブライアン・デイビスは、「公衆衛生と知的財産制度の均衡が崩れている」と指摘する。「不当な知財保護が、割安な薬とワクチンの開発・導入を阻むことになります。これはMSFのような人道援助団体に影響を及ぼすだけでなく、日韓をはじめとする国々の患者にとっても不利益なことであり、医療費負担の少ない医薬品を速やかに利用することができなくなります」

公衆衛生と企業収益の均衡が必要

現在、市場を独占する医薬品の薬価は高止まりし世界各国の保健予算を圧迫、患者やMSFなどの援助団体にとって手の届かないものにしている。しかし、ジェネリック薬メーカー間の競争によって、薬価は引き下げられ、患者の治療拡大に大きく寄与することがMSFの経験上から明確である。例えば、HIV/エイズの抗レトロ・ウイルス薬(ARV)治療の費用は、MSFが提供開始した2000年当時で患者1人あたり年間1万米ドル(約113万円)を超えていたが、現在はジェネリック薬によって99%以上安い100米ドル(約1万1300円)にまで引き下げることに成功した。

一方、その他の疾病をみると、現在のがんの新治療法の費用は1人あたり年間10万米ドル(約1130万円)を超え、一部の国でのC型肝炎薬は1錠1000米ドル(約11万3000円)を上回ることがある。原因は製薬企業の市場独占である。

知財保護の強化は、全世界の患者に役立つ薬のイノベーションと普及にはつながらない。デイビスは、「各国政府は公衆衛生と企業収益の適正なバランスを見直し、自由貿易協定を通じた医薬品の独占拡大に歯止めをかけるべきです」と訴えている。

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