ロヒンギャ危機:ミャンマー・ラカイン州での人道援助の即時受け入れを要求

2017年09月19日掲載

国境なき医師団(MSF)は、ミャンマー・ラカイン州で軍事作戦が展開されるなか、医療・人道援助活動を即時に許可するようミャンマー政府当局に要求している。同州内に暮らすイスラム系少数民族ロヒンギャなどが直面する膨大な人道ニーズに対応するためには、外国人スタッフを含む国際人道援助団体が現地入りし、独立した立場で、制限なく活動できるようにすることが必要だ。

状況は"待ったなし"

ラカイン州では、8月25日に武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)が警察署と軍事基地を襲撃したことを機に、治安部隊による軍事作戦が展開されている。その結果、40万人以上のロヒンギャが隣国バングラデシュへ避難。極度に劣悪な条件下で、医療・飲料水・トイレ・食糧がほとんど手に入らないまま生活している。

ロヒンギャ危機:バングラデシュでの医療ニーズが深刻化、MSFは援助活動を拡充

一方、ラカイン州北部に残っている人びとは数十万人に上るとみられ、人道援助は皆無に等しいとされている。バングラデシュに逃れた難民によると、ラカイン州北部では民間人を標的にした深刻な暴力が起きているという。またロヒンギャや他の少数民族による大規模な国内避難がみられるとの報道もある。村や家屋は焼き払われ、MSFの診療所4ヵ所のうち少なくとも2ヵ所も焼き討ちにあっている。MSFは州内のマウンドーとブティドンで診療を行っていたが、外国人スタッフの移動が禁止となり、8月中旬以降は援助活動ができていない。MSFの緊急対応デスクマネージャー、カルリーヌ・クライジャーは、「ミャンマー側に残っている負傷者、病人の状況は待ったなしです。今こそ、救急医療と人道援助を提供していくべきです」と訴える。

ラカイン州中部では、約12万人の国内避難民がキャンプに留まっている。厳重な移動規制が敷かれ、人びとは人道援助に依存して生きている。MSFは複数の国内避難民キャンプと村で移動診療を実施していたが、外国人スタッフの移動許可が下りなくなったため、8月末以降は現地医療施設に行くことができていない。また、ミャンマー当局者が「NGOはARSAと結託している」と非難したため、現地雇用のスタッフが出勤をためらう状況が続いている。

"独立・中立の援助"が必要

ミャンマーでは、政府による国連や国際NGOに対する非難、活動許可申請の拒否、強硬派による脅迫やデモなどが、人道援助活動の妨げになっている。さらに、ミャンマー政府がラカイン州北部を軍事地域として宣言したことから、人道援助団体の移動や活動許可の面での制約はさらに増えた。

ミャンマー政府は、ラカイン州内の被災者を対象として人道援助を政府の管理下で独自に行っていく意向を表明しているが、これには援助が最も必要としている人に届かないのではないかという懸念が起きた。ミャンマーでMSFのオペレーション・マネージャーを務めるブノワ・ド・グリズは、「ミャンマー政府の援助提供は排他的であり、今後NGOの活動の制約はますます厳しくなると懸念しています。しかし、ニーズに基づいて、すべての人びとが納得できる援助を届けるためには、独立した中立の団体・機関が必要なのです」と強調する。

MSFがラカイン州で診療を自由に行えていた際には、月に1万1000件以上の1次診療とリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)診療を実施していたほか、救急搬送と入院患者のサポートなどを行っていた。こうした医療活動は現在全て差し止められている。また他の援助団体も、移動規制のために同州内で活動できていない。

<ミャンマーにおけるMSF>

MSFはミャンマーで25年間活動。現地保健省と連携し、HIV、結核、1次医療、予防接種、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、公立病院への救急搬送とマラリア治療などを担っている。MSFは現在もシャン州、カチン州、ヤンゴン管区ならびにナガ自治区とタニンダーリ管区での活動を継続している。

MSFはミャンマー・ラカイン州で、通常時には複数の村と避難民キャンプを回る移動診療を実施し、1次診療を行うほか保健省管轄病院への救急搬送も行っている。また、保健省管轄病院ではHIV治療も支援している。同州中部では、通常時、政府の結核対策事業と連携した治療を提供している。このほか、2017年8月中旬までは同州パウットー、シットゥエ、ポンナギュン、マウンドーとブティドンで診療を行っていた。

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