イエメン:コレラ感染拡大――北西部アブスで援助拡大が急務に

2017年07月12日掲載

内戦続くイエメンコレラの感染拡大が続いている。国境なき医師団(MSF)は、中でも一大感染地となっている同国北西部ハッジャ県アブス郡での緊急の援助拡大が必要だと訴えている。コレラは病原菌で汚染された水によって感染を広げるため、給排水設備・衛生面の改善が非常に重要となっている。

紛争からの避難が不衛生な暮らし強いる

イエメンのMSFオペレーション・マネージャーを務めるガブリエル・サンチェスは、「アブスで劣悪な衛生状態と清潔な飲料水の不足を目のあたりにしています。これらはコレラ大流行の主な原因であることは明らかです。給排水と衛生はコレラ発生以前も問題でしたが、今では喫緊の課題となっています。今行動しなければ、今後数週間から数ヵ月間でさらに大規模な人道危機に発展するでしょう」と警鐘を鳴らす。

アブスで最初のコレラ症例が報告されたのは2017年3月下旬。以降、症例数は爆発的に増え、アブスのMSFのコレラ治療センター(CTC)では1日に462人の患者を受入れたこともある。イエメン国内のどの地域をも上回る数だ。

イエメンでは紛争を逃れ多くの人びとが住まいを追われているが、推定人口200万人のハッジャ県には、国内最多の37万6000人以上が避難している。その4分の1はアブス郡に避難し、その多くは空爆や他の武力攻撃から身を隠すために、生活インフラが未整備な遠隔地にあえて滞在している。

医療体制はヒト・モノ・カネ不足で崩壊

MSFはCTCにおいて、モップ、ほうき、石けんのほか、給水を浄化するための塩素錠が入った消毒キットを配布している。対応にあたるMSFのロジスティック・コーディネーターを務めるクリスティナ・イマスは、「患者の治療と同時にその自宅も消毒し、水源も塩素消毒する必要があります。浄水配布ポイントの設置と、市場やバス停といった、人びとが集まる場所は定期的にスプレー消毒を行っていく必要があります。しかし、こうした活動は体系的には行われていないのが現状です」と話す。

3月下旬のコレラ発生以降、MSFはアブス郡の緊急対応の規模を倍増し、これまでにコレラの疑い例と急性水様性下痢患者を含めた1万2200人以上の患者を治療した。この値はイエメン国内の9県でMSFが診た全症例の5分の1にあたり、イエメンで報告された全症例の5%近く(※)にあたる。コレラ症例の週次集計値は、過去2ヵ月の急上昇を経て、7月初旬に初めて減少に転じたが、感染者は現在も数百人単位で治療を受けに来院している。
※世界保健機関(WHO)調べ

コレラ流行以前も、MSFはアブスの病院で救急診療、小児入院、外科手術件数の大幅増に直面していた。また、はしか、百日咳、マラリアなど制御可能な病気流行も見られた。これらを総合すると、イエメンの保健医療体制は必要な資金や人材が大幅に不足して崩壊したことを明確に示している。

MSFは2015年7月にアブス病院の支援を開始した。同病院は2016年8月15日、空爆を受けてMSFスタッフ1人を含む19人が亡くなり、負傷者は24人に上った。間もなくMSFはイエメン北部の複数病院からスタッフを退避させたが、2016年11月、アブス病院の支援を再開。現在200人のイエメン人スタッフと12人の外国人派遣スタッフが現地で活動、救急処置室、小児科、産科病棟と栄養治療センターを運営しているほか、移動診療と心理・社会面のカウンセリングを行っている。

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